
かみのるり
棗センパイに迫られる日々(なつめセンパイにせまられるひび)
第06巻評価:★★(4点)
総合評価:★★☆(5点)
筋肉に目がない日比華帆は、バスケ部の棗先輩と「筋肉フレンド」を続行中。でもだんだん、先輩のカラダよりも先輩自身に惹かれるようになっていく・・・! 棗が好きだと自覚した日比は、文化祭で告白することを決意! 一方、棗の幼馴染である一慶も、日比への気持ちをおさえられなくて・・・!? 日比・棗・一慶、三人の想いが溢れ出すーー!! 理想の筋肉に、攻められ迫られまくりのムキムキラブコメ第6巻!
簡潔完結感想文
- 彼らが告白するまでを描く巻なので、逆に言えば巻末まで告白しない薄味な展開。
- 筋トレが部員を強くし、その筋肉で部費を稼ぐ。部費の増額はチームを強くする、はず。
- 待望の告白なのに最悪な告白。男同士の戦いに割って入ってくる恋愛脳ヒロイン。
告白 with 性暴力 or 言葉の暴力、の 6巻。
『5巻』に引き続いて、華帆(かほ)と一慶(いっけい)の横並びの恋愛的成長が描かれる。『5巻』は2人が自分の胸に気持ちが ようやく恋心だと気づくまでを描いていたが、今回は それを相手に伝えるまでを描く。
最初から恋愛マスターの如く君臨する棗(なつめ)に、恋愛初心者の華帆と一慶が追いつこうとする という恋愛面での成長と苦悩が見られる。この県(おそらく愛知)の高校バスケットボール界では頂点付近にいる一慶が、恋愛では挑戦者という構図が面白い。


ただ棗からの自分への気持ちを知っている華帆が何を躊躇しているのかが分からず、告白場面の盛り上がりよりも、巻末まで話を引き延ばす希釈を強く感じてしまった。しかも後述の通り、華帆が告白から逃げ回った結果、大事な場面にケチが付いたように思う。自分のタイミングに固執する華帆に対して、今の一慶とは違い嫌悪感たっぷりの「うぜぇ」を浴びせたい。
そして奥手な華帆と一慶を横並びにするのと同様に、棗と一慶を横並びにするためか、本書の男性たちはヒロインに気持ちを伝える際にキスをする。相手が自分を好きかどうかわからない(一慶の場合は絶対に好きじゃない)相手への突然のキスは ただの性暴力で、そんなところを横並びにしなくても、と思ってしまった。
残念ながら最も嫌悪感が強いのが華帆の告白。ネタバレになるけれど、彼女は棗と一慶の2度目の直接対決となったバスケの公式戦中に告白をする。これが とても嫌だった。これまで告白の機会は何度でもあって、確実に成就することを理解しながら してこなかった彼女が選んだ告白のタイミングが最悪。
棗(と華帆)のバスケ部が劣勢の中、華帆は試合会場で棗への想いを轟かせる。それが棗を奮起させ、見事 棗は ここまで作中で2回敗戦している一慶に初めて勝つ。そして棗は自分を誇れる完璧な自分となって想いを伝え合い両想いという流れだ。
…が、この告白という棗にとって最高の応援は、一慶にとって最悪の呪いであろう。それを試合中にしたことが私は どうしても許せない。華帆は会場に到着して早々 告白したから棗の劣勢を知らないだろうけど、結果的に この告白が試合を動かした。
この時点で華帆が一慶の想いを知らなければ、無自覚に手酷い仕打ちをした という免罪符が生まれるが、華帆は もう一慶の気持ちを知っている。だから棗への告白が一慶への拒絶になることも理解していなくてはならない。それを承知でいるから華帆は そもそもマナー違反である試合中の私的な言動である告白は相手選手への精神的動揺を誘うために使われた、と捉えることも出来てしまう。
作品に描かれていないことを勝手に補完し、それを批判材料にすることはアンチみたいな行動かもしれないが、華帆の告白の後、一慶の動きは悪くならなかっただろうか。一慶だけが突出しているらしき相手校は一慶が精彩を欠くことによってプレーが崩れ、敗戦に繋がったと思えてならない。
そして それは一慶に勝ちたいと切望し、弛まぬ努力を続けてきた棗への冒涜にも思える。男性たちの純粋な戦いの場を華帆の愚行が汚した。一慶を落ち込ませ動揺させることで勝った試合に価値はあるのだろうか。それで棗は満足なのだろうか。『1巻』から ずっと片想いをして、華帆が一慶を好きでも想いを貫いてきた棗に偽りの勝利を与えてどうなるというのか。
作者としてはドラマチックな告白を演出したつもりだったのかもしれないけれど、結果的に男性たちが救われない結末になってしまった。華帆だけが おめでたい恋愛脳の持ち主となり、もう彼女が幸せになっても素直に喜べない。
そもそも私は恋愛とスポーツを絡めるのが あまり好きじゃない。恋愛が努力の原動力になるのは分かるが、スポーツを扱った作品だと恋愛成就に勝利が必須要件に見えかねない。勝利 = その男性には価値があるというトロフィー的な意味合いで、最後までヒーローの価値付けをしているように見えてしまう。
特に本書は上述の通り、華帆の言動によって試合が覆ったようにも取れるから印象が悪い。最強の存在として位置づけられた一慶が完全に咬ませ犬でしかないのが可哀想。作者は一慶を気に入っているのか いないのか、いまいち分からない扱い方である。
華帆は遂に棗への気持ちが恋だと気づいたが、それを彼には伝えていない。思わせぶりな態度を取っておきながら、自分の気持ちを伝えないなんて小悪魔的である。もはや言わないことを最優先にしていて展開的に不自然さが目に付く。
状況を知った友人から 来たるべき学園祭に告白することを提案される。
その際の告白方法に悩む華帆は、校門前で華帆を待っていたということを秘匿して たまたま通りかかったんだからねッ!と嘯く一慶に相談を持ち掛ける。一慶なら告白経験多数(される側)だと彼を練習台にするのだが、一慶は華帆が棗に告白するつもりだと知って胸を痛める。自分には決して言ってもらえない言葉を発する華帆を後ろから抱きしめ、一慶は想いの丈を伝える。だが それも告白の練習の一環だと処理し、一慶は想いを胸に秘める。だが華帆の連絡先を強引に入手して一慶は半歩前進する。
恋心を自覚した途端、華帆は自分が女子力のかけらもないことに気づく。ダサい服を着ていても好きをキープしてくれた棗なのだから絶対に大丈夫なのだが、彼に並び立つ女性でいるために自分磨きを開始する。これもまた告白の第一歩で努力の一環となる。
しかし合宿の時と同じく棗には それが一慶のためだと勘違いされてしまう。以前は華帆の赤面が一慶に由来すると思っていたが、今回は色付いた華帆が一慶のための努力だと棗は傷つく。
学園祭ではバスケ部は筋肉喫茶を開催する。その前日、華帆は衣装を着てほしいと棗に懇願され、着替えるためにスマホを置いて離れた時、一慶からのメッセージを棗が目撃してしまう。棗が嫉妬と独占欲を見せ、一慶ではなく自分を選んで欲しいと願うので華帆は思わず ここで棗への気持ちを表明してしまう。華帆は自分の無意識の行動と、繰り返した学園祭当日のシミュレーションが破綻してしまったことに動揺し、混乱から気絶してしまう(都合の良い先延ばし)。
バスケ部の筋肉喫茶は大盛況(筋肉という建前のメンズストリップショーなんて学校側から怒られるだろうけど)。猫の手も借りたい状況に一慶を見かけた華帆は彼にも助っ人を頼む。
この喫茶店の売り上げは部費に回されるらしいから、一慶は間接的に敵に塩を送ったことになるのか。部費の増額により来年度は よりよい環境で活動できるのだろうか。


一慶は(作品の見せ場の意味でも)一通り仕事をこなした後、両想いを先延ばしにしようと一慶は華帆を連行する。そこで一慶は華帆に告白の本番をしようとするのだが、そこに棗の声が届く。その声や姿から華帆を遮断するかのように、一慶は筋肉喫茶のスーツを華帆の頭に掛け、キスをして自分だけを見つめさせようとする。遅れて到着した棗は暴力行為には出ず、精神的ダメージを一慶に与える。この世界で好きな人の1位と2位と立て続けにキスできて良かったね★ この一慶のキスが許されるのは(許されないけど)棗と先にキスを終えているからだろう。
てっきり棗は華帆にも「上書き」をするのかと思ったが彼は華帆を大事にする余り簡単にキスできない心境になっていた。改めて華帆に自分の気持ちを伝える棗だったが、華帆からの返事は保留する。そして一慶に勝った時、また自分から告白すると華帆に勝利を誓い、そして応援を願う。
すぐに一慶の高校との試合が やってくる(ウィンターカップの予選とかなのだろうか)。
しかし試合前日、華帆は学園祭からの疲労が蓄積したため発熱してしまう。彼女の異変に気づくのは棗だけ。練習しながら華帆に脇目をふっていたということか。大切な試合を観戦できないことが嫌な華帆だったが、棗に手を握られ、明日の試合へのパワーを彼に注入することで踏ん切りを付ける。
一方、一慶も試合を前にヒートアップしており、普段はしないチームメイトとの練習に励んでいた。
そして試合当日。試合開始まで華帆はベッドで休んでいるが、棗の雄姿を その眼に刻まなければと会場へ飛んでいく。第4Q(クオーター)で10点差を付けられた試合展開の中、華帆は観客席から棗に向け大声を出し、大人しく出来ないぐらい棗のことが大好きだと叫ぶ。この告白で棗は一層 奮起、そして もしかしたら一慶は消沈。これが試合結果に繋がる。
でも上述の通り、華帆の告白は男性間の正々堂々を濁したように見えてしまって残念。
