
かみのるり
棗センパイに迫られる日々(なつめセンパイにせまられるひび)
第04巻評価:★★★(6点)
総合評価:★★☆(5点)
バスケ部の棗先輩と、お互いのことをもっとよく知ろうと「筋肉フレンド」になった日比華帆。先輩のカラダを張った猛攻にドキドキさせられっぱなしだけど、棗の幼馴染・一慶が日比に興味を持ったみたい!? そして夏の大会がいよいよ開幕して……!? 理想の筋肉に、攻められ迫られまくりのムキムキラブコメ第4巻!
簡潔完結感想文
- 弱小チームがトレーニングによって遂に1回戦突破。公式戦初勝利と初敗退の味。
- 心よりカラダが先に動く が恋の定義。それが適用される棗、華帆、そして一慶。
- 華帆はカウントしていないが一慶も過去2回 彼女のヒーローになっている事実。
カラダが勝手に動く、という恋の定義が二重三重に効いている 4巻。
少女漫画の醍醐味は恋心が成長していくところを観察することだろう。夏イベント満載の『4巻』は大きく物語が動いてはいないが、華帆(かほ)と そして一慶(いっけい)の恋心が大きく育ち始めている。
構造として面白いな、と思ったのは棗と一慶の能力の伸びしろ。バスケットボールの能力では一慶が最高値をキープする王者として君臨する一方、棗はバスケの能力は発展途上。華帆というスパルタマネージャーによるメニューをこなし、3年生が引退して新チームで これまで以上の勝利をあげることを目標とする。
これが恋愛に関しては逆になる。棗の華帆に対する想いは1話にして最高値に到達しそうな勢いだったが、一慶の恋心は まだまだ発展途上。棗がバスケに対する意識で一段ギアを入れたように、一慶は ようやく華帆に対する執着を自覚し始めたようだ。
そして華帆は、棗とは両片想いの幸福感を漂わせ、一方で一慶の気持ちに無自覚だから自然に一慶を傷つけるような言動をしてしまっている。もちろん一慶の想いは三角関係という少女漫画読者の大好物成立のために必要なのだけど、一方で彼の切ない片想いを演出している。最初は本当に筋肉発言を不快に思って華帆に対してイライラを抱いていた一慶が、今は自分の方を向いてくれない彼女の意識に対してイライラしている。
華帆が棗の気持ちに気づいても まだ一慶の恋に伸びしろがあり新展開があるから読者は興味を引かれる。ベタな配置ではあるが、一慶という当て馬は本書の連載継続の救世主と言える。


冒頭の一文にもしたけれど、本書では「カラダが勝手に動く」ことが恋の定義になっている。これは棗が どれだけ華帆のことを想っているか、そして その想いが華帆のピンチを助ける行動に繋がっているという話で出てきた言葉。
この言葉を聞いて華帆が自分の恋心に気づくのだが、作者は この言葉を一慶にも照射している点が素晴らしい。「色々考える前にカラダが動く」。これは実は華帆を これまで2回 助けている一慶にも当て嵌まり、一慶もまたヒーローの資格を有していることを意味している。
少々謎だった『2巻』の一慶の高校の偵察時の華帆を彼が助けた行動も、カラダが勝手に動いていたことと処理できる。ただ偵察時の一慶は その前に華帆に出会っていることすら覚えていないので、自分は才能とか容姿で自分を見られることを嫌っているのに、華帆に対しては見た目100%で選んだ、という矛盾が生じてしまう気がするが…。これは棗に関しても似たようなところがあるけれど。『1巻』1話で彼は華帆をマネージャーに選んだのは彼女の容姿に惹かれているような口ぶりがあったような気がする。そこに思わぬ筋肉知識が加わりマネージャーの適性が見えてきて、棗は自分には見る目があると満足していた。
華帆に対しては、筋肉バカだけど筋肉があれば誰でもいい のではない という慎重な描き方なのに、男性たちは可愛い子だから助けた、とも読める内容になっている気がする。
あらっ? 褒めるつもりで文章を書き始めたのに、本書はルッキズムが発動しているという内容になってしまった。どうしてこうなった。
3年生との最後の大会となるインターハイ予選が始まる。華帆の加入から3か月、肉体改造に励んできたが試合直前にメンタル面の弱さが露呈しそうになる部員たちを華帆がマネージャーとして上手にコントロールする。
『2巻』での練習試合での敗戦から個々人のスキルも上がっている。相手チームと一進一退の攻防が続き、辛くも1回戦を突破する。それは華帆が味わう初の勝利の喜び。だが試合のないはずの一慶と会場で遭遇すると彼は棗の心配を口にする。華帆が何のことか分からないでいると一慶からマネージャー失格だと非難される。
続く2回戦は序盤から点差が開く苦しい展開となる。華帆がデータを提示して相手校の対策を示し、棗が精神的支柱になることで逆転することが出来たが、その大事な局面で棗が負傷していることが発覚してしまう。彼は1試合目で足首を ひねっており、無理してプレーしていたのだ。一慶は試合を観戦して気づいたようだが、筋肉の声が聞こえる華帆という特殊能力は発揮されなかった。この場面、その理由が欲しかったところ。華帆が初の公式試合の緊張感に呑まれていたとか、棗以外の部員に能力を使用していたとか。作品側の都合で筋肉バカが一般人に戻っているのが気になる。
棗は途中交代となり医務室で治療することになる。一緒に行こうとする華帆だったが、棗から試合を見るように命じられる。華帆はマネージャーとして試合会場に戻る苦渋の決断を下す。主力選手不在で再び逆転されたことで部員たちに諦念が漂うが、2回戦直前の棗のように華帆は部員たちの士気を取り戻させることに成功する。
しかし選手層の厚さの違いが徐々に出て逆転できないままラスト5分を迎える。そこに棗がカムバックし、出場の意思を見せる。顧問は試合後の影響を考えるが、棗は この試合のために身体を犠牲する覚悟を持っていた。華帆のために一つでも多く勝利をあげたい棗は奮闘し、逆転も視野に入るが、そこで試合が終わってしまう。
棗の怪我は全治3週間と診断される。棗は今回の敗北を誰よりも悔やんでいた。不甲斐なさで手を きつく握る棗を華帆が抱きしめる。これは『2巻』の練習試合の敗北時とは逆である。そして棗は華帆の胸の中で悔し涙を流す。華帆は この時の無意識に動いた自分の身体のことを理解できずにいた。
敗戦から1週間、3年生が引退した新チームが始動し始める。それは勝つバスケをするチームでもある。これまでの和気あいあい の雰囲気を残しつつ、チームは生まれ変わろうとしている。棗は安静にする必要があり練習には参加できないが上半身を中心に鍛えることで もう二度と悔しい思いをするような、華帆を悲しませるような試合をしないことを目指す。
久々に棗から筋肉(カラダ)の関係を求められ筋肉密会が催される。今回は華帆の希望で市民プールで棗の下半身トレーニングが行われる。この日、華帆がプールに入ろうとしないことを棗は不服に思い、騙し討ちで彼女をプールに引きずり込む。だが華帆は金づちなことが判明し、棗は彼女を身体ごと抱える。色々とアレな体勢になっていて、華帆は これまでのような手や顔だけでなく下半身でも棗の筋肉を感じる。そして棗から華帆のためならカラダが勝手に動くという話を聞き、大会の日、自分が棗を抱きしめた無意識の行動が好意に由来する可能性に思い当たる。
自分も棗に負けないぐらい相手のことを想っていると知り、華帆は自分から棗を花火大会に誘う。プールは筋肉を堪能できるが花火大会は そうではなく、華帆は否定しているけれどデートである(またも筋肉密会という建前だが)。
花火大会当日、友人の手を借りてダサい私服から浴衣に着替え、華帆は会場に向かう。だが行きの電車から予想以上の混雑で難儀しているところに一慶と遭遇。彼は華帆の着崩れた浴衣姿を見て溜息をつく。本来なら棗の浴衣から覗く胸筋を堪能するはずが、華帆の胸が露出しかねない状況となり、一慶は嫌々を装いながら周囲の好奇の視線から華帆を守ってくれる。これはカラダが勝手に動くヒーロー行動である。


その場面に一慶が女性に乱暴していると勘違いした一慶の姉が登場する。この日、一慶は姉の荷物持ちとして同伴していたらしく、彼が逆らえない人物が登場したことで華帆は一慶姉弟の家に連れ去られていく。
しかし着付けの途中で姉が呼び出されて いなくなる、という不自然な展開になり、一慶と2人きりで着付けを行うことになる。姉も自分で華帆を連れてきたのなら残りの数分ぐらい責任を持て、と言いたいが それでは話が転がらないのだろう。着付けで密着することで一慶の筋肉を味わう華帆。そうして元通りになったことで華帆は棗が何と言ってくれるか胸を高鳴らせるが、一慶は華帆が これから棗に会うことを嬉しく思わない。
再び着崩れることを恐れてか棗に引き渡すまで、一慶が華帆を守ってくれる。なぜ一慶は ここまでやるのか、そんな義理はないと思うのだが、それだけ華帆を放っておけないということなのだろう。
悪態をつくのも本音を見られたくないからかもしれないし、名前で呼ばないのも そこから何かが溢れ出す予感がするからなのだろう。そのぐらい他の人と違って自分の核を見てくれる華帆のことが一慶は気に入っている。だから身体が まず反応して赤面する。
しかし華帆は棗が視界に入ると一慶の存在など無かったかのように彼に一直線に向かおうとする。それが気に入らないから無意識にカラダが動き、一慶は華帆の手を掴み自分の傍に置こうとする。
