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少女漫画と小説の感想ブログです

棗センパイの胸筋と、アポロン一慶の大臀筋(尻)に挟まれる日々☆

棗センパイに迫られる日々(3) (デザートコミックス)
かみのるり
棗センパイに迫られる日々(なつめセンパイにせまられるひび)
第03巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

バスケ部のマネージャーとして、理想の筋肉チームを作ろうと頑張る日比華帆。棗先輩とどんどん距離が近づいていくけど、朝練中に本気告白(!?)をされてしまう。先輩に向き合おうと決めた日比は、ある提案をして……!? 理想の筋肉に、攻められ迫られまくりのムキムキラブコメ第3巻!

簡潔完結感想文

  • 筋肉(カラダ)目当てのヒロインと、彼女の興味を引くために専属契約するセンパイ。
  • 顔面で男の尻(の筋肉)を堪能するヒロイン。その浮気を正直に話せるのは信頼感ゆえ。
  • 1話で すぐに迫ってきた棗センパイよりも2巻かけて好きになる一慶の方が説得力あり。

志を持って迫る筋肉 VS. ラッキースケベで味わう筋肉、の 3巻。

長編の お約束として三角関係が始まる『3巻』になっていて ここから ますますヒロイン・華帆(かほ)の筋肉に迫られる日々は確定している。気になったのは棗(なつめ)と一慶(いっけい)の華帆への愛情の育たせ方の違い。棗が華帆を気に入るのに かかった時間は1話の中の僅かな間なのに対し、当て馬として頭角を現した一慶は登場から2巻かけて華帆との関係を構築している。その時間の流れが、一目惚れ状態の棗に対して一慶は徐々に惹かれて恋が育っていくという説得力になってしまっている。

これは ここまで3巻、棗と一緒にいて彼への感情が恋なのか筋肉(カラダ)目当てなのか分からない華帆とも悪い意味で比較される。当初2巻分の短期連載だったはずの作品が長期連載になっていく過程で、華帆の中に生まれ育っていたはずの棗への恋心は訳の分からない概念に置き換わって扱われてしまう。華帆が棗への答えを出さない内に一慶の恋心を先に育たせてしまおうということなのだろうけど、これによって華帆が作中で一番の恋愛音痴になり、描き方によっては棗センパイをキープしているだけの二股女に見えてしまいかねない。ここは作者が注意深く筆を進めなければ ならないところだろう。

そもそも両片想い状態になってからの遅い参戦で一慶エンドが見えない、という試合結果が明白な試合が始まったところで、という読者の不興は否めない。連載の見通しが無かったから仕方ないが、せめて一慶が1話から登場するような人で、最初から三角関係を謳った作品なら また違ったのかもしれない。その場合は書名を変更しないとダメだろうけど。

図解でも分からない華帆と棗の筋肉(カラダ)の関係は華帆と作品のモラトリアム?

冒頭に書いたように、ここまでで棗は筋肉フェチの華帆の全部を好きになって、彼女に喜んでもらうことが自分の喜びと筋肉を提供し続け、自分からグイグイと筋肉で迫る。一方、一慶は最初の出会いの偶然の胸筋タッチから始まり、華帆は彼の筋肉をラッキースケベで堪能してきた。ここまできたら華帆はラッキースケベで あらゆる部位の一慶の筋肉を堪能するというネタとして消化して欲しいものだ。そのスキンシップの繰り返しと時間の経過と共に一慶の気持ちがトゥンクしてくるという、痴女を好きになる男子高校生みたいな展開も面白かったかもしれない。


回の華帆の態度の保留によって、訳の分からない概念やキーワードを持ち出して読者を置いてけぼりにしている感じが否めない。全体的に筋肉 言い過ぎてゲシュタルト崩壊が始まっているから、もう筋肉って言わないで、と思ってしまう。作者は真面目な人だからなのか ちょっと「筋肉ノルマ」が多すぎる。かといって筋肉というキーワードを除外して作品を読むと、これといった内容がない という欠点が見えてしまう。

以前も書いた一発屋芸人の例えではないが、もう筋肉は漫画を売るためのキャラ作りだと割り切って、ここからは普通の三角関係 + 青春バスケ少女漫画になって欲しいぐらいだ。ここからは無駄にスキンシップしなくていいし、脱がなくていい。このままだと売れるために、わざとらしく はしゃいでいるタレントと同様の痛々しさを感じてしまう。

そして ここからは三角関係を含めた真剣な恋愛、部活モノとしての側面など、筋肉ギャグとは相性の悪い展開が続いていく。扱う内容が内容だけに、ラブコメとして成功した『恋わずらいのエリー』のようには いかなかったように思う。


に「もう俺のこと好きでしょ?」と言われて否定も出来ないが肯定も出来ない華帆は悩む。筋肉に流されてきた華帆は、友人から恋も筋肉も育てるものと言われ納得しかける。

そんな悩みの中で受けたテストが赤点で、他の赤点部員と共に勉強会が開かれる。赤点を回避した部員たちも協力し、一丸となって部活動を出来る環境を整えようとする。これが今のチームの結束力である。

ただの勉強回では筋肉不足になるので、勉強会中に華帆が謎に足を痛める展開を作り、その彼女を負ぶって棗と帰宅する。その途中で華帆は棗の表情に目を奪われる自分の現状を考慮し、付き合うことは出来ないが棗のことを もっと知り、この気持ちを大きく育てるため「筋肉フレンド」から始めることを お願いする。これを棗は「筋肉(カラダ)の関係」と呼ぶ。


の関係を華帆は本当に お友達状態から棗との関係を見直すはずが、棗は華帆と お試し交際中だと意見に齟齬が生まれていた。それでも棗は この関係を前向きに捉え、この関係を口実に華帆と会う機会が増やす。

筋肉(カラダ)の関係になったからこそ、華帆は自分が暴走しそうで怖い。そして筋肉を愛でることはセクハラだという華帆の ちょっとしたトラウマが設定される。しかし棗は華帆の どんな願いにも引いたりしない。彼女の望みを その筋肉(カラダ)で叶え、ありのままの華帆を受け止める。これでトラウマは解消される。その人の本質や特性を見て認めてくれることが、本書における好きの入り口である。


れは一慶と華帆の関係でも同じ。駅構内で一慶を盗撮する、彼の評判と見た目だけを好きな女性たちに華帆は注意をし、筋肉マナーを説く。無許可で部活動に励む生徒たちを いやらしい目で見ていた お前が言うか、という忠告である。その行為がセクハラに当たるとトラウマになったのではなかったのか?? なんか不自然な展開だし華帆が自分勝手な人に思えてきた。
こうして華帆は一慶の目に留まるようになる。

続く棗の風邪回。両親が共働きで兄弟も遅くまで帰ってこない家庭と聞いて華帆は見舞いに行く。棗の兄弟構成は最後まで謎のままだったような気がする。筋肉を育てる余り体脂肪率が低下し、それが身体の抵抗力を奪ったと華帆は責任を感じ、棗を看病する。着替えを手伝って筋肉ノルマ達成というところか。

寝かしつけて すぐに変える予定だったが棗に服を掴まれ、彼が次に目覚めるまで一緒にいる。棗の部屋で見つけたのは彼の過去。それは一慶とのバスケの歴史でもあり、中学時代の一慶と一緒にプレーした最後の試合で棗は一慶にパスをしなかったため その試合に負けたと思っていた。それは思春期を迎えた2人のバスケに対する姿勢の違いが如実になったことで起き、互いを信じられない状態のまま一慶が転校し疎遠が継続してしまった。原因は一慶が勝利を渇望するのに対し、棗がチームプレーを重視するという2人の考え方の違いである。

棗が過去を話してくれたことで華帆の中に嘘のない関係を築きたいという気持ちが芽生える。だから華帆は言えずにいた「筋肉浮気」とでもいうべき一慶との顛末を正直に話す。これは華帆の中に棗への信頼感が生まれているから発生するイベント。棗なら どんなことも受け入れてくれる、そう思うから華帆は全てを話せた。そこから本当にカラダの関係が始まりそうになるが、高熱の棗が ギリギリ冷静さを保って自制する。


の大会の1週間前、身体を休めるためにも大学の練習試合を見学するバスケ部一同。会場と帰り道、2人は2度 一慶に遭遇する。彼は子供の頃に一緒にバスケをしていたというウザい先輩に絡まれており、その輩を一刀両断する一慶との一触即発の状況を見て棗が割って入る。

そこから棗・一慶チーム VS. 輩チーム の試合が始まる。こうして中学以来、道を分かった2人が久々にバスケをする。約3年ぶりの共闘だが2人の阿吽の呼吸は変わらない。こうして最強ペアは再度 手を取り合う関係になり、そこに華帆は信頼感が確かにあることを認める。そして今度は夏の大会で敵同士で戦う2人を見てみたいと熱望する。

筋肉は努力の証。華帆の掲げる正義によって自己肯定感を刺激される筋肉男子たち

勝負に負けても尚、往生際悪く、一慶を悪く言う輩に対して華帆が一慶の弛まぬ努力を代弁する。筋肉で話を落としているが、その自分を認めてくれる様子に一慶の心は動かされ、初めて華帆の名前を聞く。