
なかじ 有紀(なかじ ゆき)
ZIG★ZAG(ジグ★ザグ)
第05巻評価:★★☆(5点)
総合評価:★★(4点)
少しずつ意識し始める佐帆と太陽☆ 苑生と芽や、諏訪ボンも一緒にB・Bカンパニーの活動は次第に校内に認められていく。やがて春休み、フラワーフェスティバル全国大会・高校生の部にエントリーすることになり!?
簡潔完結感想文
- 佐帆モテエピソード2連発。立ちはだかった仮想ライバルは転校させて平和を保つ…。
- 同好会設立から半年で全国大会出場。お泊り回で太陽と佐帆の時間が何度か見られる。
- 素人の快進撃からの初めての挫折。作品内容が文化祭回と同じなことが残念すぎる。
ほっぺチューから始まり ほっぺチューで終わる 5巻。
冒頭で いとこ の仁(じん)から ほっぺチューをされた佐帆(さほ)は、巻末で自分が ほっぺチューをする側に回っている。自分が思わず その行動を取ったことで そうしたくなる仁の動機に気づくのだろうか。しかし される側でも する側でも怪獣の うなり声を出す、慎みのない佐帆を好きになれない。
本書では花束を贈られた者は贈り主のことが好きになる という絶対のルールがあるように思う。太陽(たかあき)と佐帆の2人は それぞれに花を贈り合っているので両片想いが確定しており、その恋愛の第一段階を終えたから、佐帆は巻末で第二段階として自分の行動で相手に愛情を示したように思えた。このルールからすると今度は太陽が佐帆に思わぬ行動をして、キャーキャー叫ぶ番になるのだろうか。そして仁が いくら佐帆に愛情表現をしても彼女に伝わらないのは、第一段階の花を渡す儀式を終えていないからだろう。花を渡さない限り、太陽と同じく、いとこ の女性に好意を寄せる男性はサイレント失恋するというルールが適用されてしまう。


そもそも動物のような行動による愛情表現をする前に、言葉で想いを伝えればいいのに、と思うが、なかなかキャラが動き出さないのが なかじ作品だから仕方がない。『4巻』の感想文でも書いたけど、同好会B・Bカンパニーに動きがある限り、恋愛を動かす必要性はないのだろう。それならば せめて太陽たちが告白できない理由でも用意して欲しいものだが、理由なく告白しないのが なかじ作品である。その構成の雑さが とてもベテラン作家とは思えず、私が苦手とするところである。
『5巻』では新しい展開が見られ、ここまで素人ながら快進撃を続けていた太陽が、今回、世界の広さを知って「上がって落ちてジグザグ進むのは悪くない」という境地になる。ようやく壁に ぶつかったか。でも太陽の落ち込みは最小限で、以降は上がる一方となる(なったはず)。そして この経験の後も、挫折によって技術的な鍛錬を積むとかとか、長年の経験によるセンスの研磨とかなく、ただただ才能で何でも出来てしまうから本書は底が浅いと思う。
1年目の挫折を2年目で どう乗り越えるかが描かれたりするのが少年誌などの構成力のある作品の魅せ方となるが、本書は それがない。今回 登場した全国の強豪校との再戦も あと1年は可能だったのに再戦は描かず、同じ舞台での成長は描かない。もっともっと面白くなる要素を含んでいるのに、作者が それを上手に精錬したり配置したりせず、メリハリのない物語にしてしまっている。作者が ここまででも20年間以上の漫画家生活で進んできた漫画道が あるはずなのに、行き当たりばったりで話を描いているようにしか見えない。ベテランならではの技量を感じることが人気作家の作品を読む楽しみなのに、3作品読んでも作者の作品からは確かな成長を感じられない。
全国大会に挑む際のアイデアも基本的に『3巻』の文化祭回と同じに見えたのが非常に残念。これも来年への飛躍のため、という計算の上ならいいのだが、どうもアイデアが枯渇しているのは太陽ではなく作者の方ではないかと疑ってしまう。挫折させるためとはいえ大きな舞台を用意したのなら、それに相応しいアイデアを太陽に与えて欲しかった。ここから太陽が更に飛躍する様子を作者が描き切れるのかが非常に心配である。
モテモテの寮長の神原 仁(かんばら じん)が いとこ の佐帆を好きであることは、読者の分身である佐帆の価値を高めるためにあるのだろうか。太陽は仁が佐帆を好きなこと、そして苑生も彼女が好きなのではないかと睨み、平静でいられない。なら自分が先に行動すればいいのに、しないのが自発的な動きが少ない なかじ作品である。
その佐帆はバレンタインデーに太陽に お礼をするためにバイトを始めていた。そのバイト姿を見かけた仁が動くが、佐帆が太陽に気があると知り、彼もまたサイレント失恋状態に突入していく。しかし佐帆の言葉遣いが荒っぽくて好きになれない。その後、仁は佐帆への気持ちを封印したまま彼女の恋を応援する立場にスライドしていっているように見える。作者は告白ぐらいさせてあげればいいのに。そこまで作品の環境を守りたいのか。
太陽も佐帆のバイト姿を見るが物陰に隠れることで佐帆にバレず、それが佐帆のバレンタインのサプライズ成功に繋がる。太陽は佐帆のバイトが自分のためだと知って満面の笑顔になり、そして その笑顔に佐帆も報われる。なぜ告白しないのか意味の分からない状態が続く。
バレンタイン回の後日談も佐帆の言動が幼稚すぎて、別の意味で赤面してしまう。
続いても佐帆のモテ回で、男子ラクロス部員が佐帆のための花をB・Bカンパニーに依頼する。仁ではなく、このラクロス部員が太陽の仮想ライバルとなる。太陽が複雑な感情を抱いて作った花束は出来がいまいちだが、純粋な佐帆への気持ちを乗せた花束は彼女に喜ばれる。この花にはラクロス部員の気持ちではなく太陽の気持ちが乗っている。
そしてラクロス部員は佐帆が誰を好きなのか知っているが、お決まりの展開で彼は転校することが決まっており、最後に佐帆に告白するために花を用意していた。本書で初めて誰かが誰かに告白されるけど、それが遺恨にならない という作者らしい優しい展開である(半分、嫌味)。
卒業式が近づきB・Bカンパニーは各団体が卒業生に贈る花束の大量発注を受ける。同好会のメンバーは5人いるが技術があるのは2人だけなので彼らの負担が大きい。こうしてB・Bカンパニーは学内で感謝される存在となる。
春休み中に顧問から和歌山で開催されるフラワーフェスティバル全国大会への出場を打診された太陽は、出場を決める。太陽の経験は浅いが、全国の強豪校との出会いに太陽はワクワクすっぞ状態に突入。興奮状態の太陽は そのことを佐帆に一番に伝えたくて初めて彼女に電話をする。喜びや興奮を共有したいのは『4巻』の受験生歓迎の時の大きな仕事の依頼と同様だ。佐帆もまた二重にかかった虹の存在を太陽に知らせたいのは好意からだろう。
それにしても大会に5人で参加するのはいいが、他の3人は明らかに戦力外で、仲良し同好会以上の意味がない。2人だけだと作業量が他校に確実に劣るのではないか。どうも お泊り回をする理由にB・Bカンパニーが使われているだけの気がする。
太陽たちが出場する部門の参加校は15組。他の学校は農業高校、農業科・園芸科のある学校か専門学校が ほとんど。普通の私立高校からの出場はレアケースらしい。
作品のテーマは未来。5人は話し合い未来へ旅立つイメージの花嫁をテーマにする。花の運搬はバイト先の日向(ひなた)が協力してくれる。やっぱり諏訪(すわ)家はスポンサーである。そして出発日まで案を練り、花を選定し、試作を繰り返す。
大会前日に現地入りし、お泊り回がスタート。太陽たちの宿にはライバル校も宿泊しており、太陽は女性に間違われて、その逆恨みで因縁を つけられる。その夜、太陽は興奮状態で なかなか寝付けず池を眺めており、そこにトイレに立った佐帆と遭遇する(部屋にトイレはない。そして池に面した外廊下から出入りするのでは誰でも部屋に入れるのでは?とか、宿の造りが謎過ぎる)。太陽は佐帆との会話で自分の好きなものを、仲間と追及できる幸せを噛みしめる。
そして大会当日。現地入りした太陽は、前日のガーデニング部門の発表作を目にして圧倒される。そして前日、宿で遭遇したライバル校と衝突し、いよいよ負けられない戦いとなる。
太陽と苑生は花の作業、佐帆と芽(めい)はウェディングケーキ作りをしているが、諏訪の役割は不明(発表舞台では新郎役をしているが)。そして佐帆と芽は今回もモデルとして花嫁姿になるが、基本的にの文化祭のステージと似通ってしまっている。私に感性がないからかもしれないが、太陽の作るものの良さが分からない。
ゲスト審査員には苑生の父もいる。太陽たちの作品は好評を得るが、直後に同じ花嫁をモチーフにした作品の圧倒的な技術を前に太陽は自分の作りたかった理想形を見る。結果は因縁の出来た高校の優勝。B・Bカンパニーは特別賞に止まる。苑生の父は息子に「青いな」とだけ言葉を残す。それでも ちゃんと彼らの作品を評価しているのは審美眼に適ったのか、それとも親バカか。優勝したライバル校とも共に戦ったことで認め合い、再戦を約束する。1年先輩のライバル校とは もう1回戦えるのだから同じ舞台に立てばいいのに、作品は それをしなかったのが残念。同じ舞台だからこそリベンジと成長が描けたのではないか。


素人の太陽は ここで初めて挫折を経験し、ジグザグ進む人生を味わう。
