《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

撤退したのは小学生編の当て馬とライバルで、中学生編では別のがいる という虚無

ベイビィ・LOVE 4 (集英社文庫(コミック版))
椎名 あゆみ(しいな あゆみ)
ベイビィ★LOVE(ベイビィ★ラブ)
第04巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★★(6点)
 

小学校卒業を控え、せあらは柊平へ最後の告白を決意。これでダメならニューヨークへ行くと宣言! 一方、せあらへの気持ちを自覚した柊平は想いを伝えようとするが、恋敵の昴に邪魔されるハメに…。そんな昴に柊平は「せあらは渡せない」とバスケ勝負を挑み!? 【同時収録】ベイビィ・LOVE 番外編―マイ・スウィート・デビル―【特別企画】「ベビ・ラブ×せあ・ラブ」せあらの勝負コーデ・セレクション

簡潔完結感想文

  • 両想い直前でのヒーローの裏切りは その後に影を落とす。柊平がトラウマの根源。
  • 当初の大願を成就させてもライバルがいる限り物語は続く、バトル少年漫画方式。
  • ヒロインの弱みを握った、女性不信の男性が 大切な人の存在に気づく作中新連載。

回の両想い寸前と何が違うのか 分からない 文庫版4巻。

小学6年生・せあら の心を千々に乱れさせた浮気人・柊平(しゅうへい)は、別の女に関心を寄せていたのに何食わぬ顔で本妻のもとに戻ってくる。私にはそう読めるし、作中でも せあら は柊平の裏切りに遭遇したことで彼を信じ切れないトラウマに苦しんでいる。このトラウマがあるから2人の恋愛は絶対的な安心がなく、新たな当て馬やライバルの付け入る隙が生まれるのだろう。だが両想いになっても苦しむ姿は やはり見たくない。

そもそも私には柊平の中で何が変化したのかが分からない。クリスマスの別れは目の前で綾乃(あやの)が泣いているのを助けたかった。そこに恋愛感情はなく、彼女から再度 好意を寄せられても柊平は すげなく断る。ただ目の前にいる困っている人から助けていくのが柊平の流儀らしいが、彼は周囲の人に気遣いをしているようで、周辺の人間関係を破壊し尽くすだけ。中学時代の親友・雷(らい)とは勝手な別の道に進むし、綾乃も元気になったら放置、恋のライバルだったコウも あのクリスマス以来 会話をしないまま。

せあら が新しい学校で自分の過去を克服して人間関係を築いている一方で、柊平は友達を全員リセットした形で高校に進学する。友情も恋愛も上手に維持できない人格破綻者なんじゃないか…と心配になる。実際、私の中の柊平の株は回復しないまま、私も彼を信じ切れない。
作者も それが分かっているからか、明らかに連載延長でしかない(または蛇足)せあら の中学生編では柊平は一途な人間として描き、彼の周囲が せあら との恋愛に騒動を持ち込むという形式にしている。この中学生編で少しでも柊平が間違った言動をしたら もう彼の名誉は絶対に回復されないだろう。

せあら が13歳になったら柊平の中でキス解禁らしいので、そのゴールまで物語は続くのか

気連載は終わりたいところで終わらせてくれないのは どのジャンルも一緒なのだろう。せあら の中学進学以降は、何かが起きる訳じゃないので読まなくても大丈夫。作者や作品には申し訳ないが、最終回だけ読んでいればいいだろう。こうやって作品の価値を自ら減じさせるのが出版社の方である。

その中で唯一 面白かったのは、新キャラで新 当て馬の鳴海(なるみ)のキャラとポジション。せあら との出会い方の悪さあるが、この鳴海は常に せあら に意地悪をいうSキャラ。ヒロインが弱みを握られる彼との出会いから始まり、鋭い彼に心の内を読まれて困らされるのは、ドSまたは俺様ヒーロー作品の始まりのようだった。この2人の関係性を2010年代に描いたら そこそこの人気を得ただろうと思う。こういうキャラクタが好きな人には鳴海は刺さると思われる。

お決まりの女性不信、家庭環境、そして いつの間にかにヒロインを好きになってしまうという展開が単行本1巻分に読めるのは お得である。『ベイビィ★LOVE』の連載と思わず、新しい関係の構築として読む分には十分 楽しめる内容になっている。本編として考えると、横道でしかなく はよ終われ としか思わないけど…。


平の中学の卒業式。雷(らい)が後輩女性からモテて、綾乃(あやの)は心配された受験も無事に終わり もうきっと…会うこともないと思う、と言い残し作品外に放出される。雷という当て馬、綾乃というライバルを処理して両想いへの視界はクリアになったということか。コウも再登場して綾乃と元気で と言い合えるぐらいの仲で お別れをする。この中では雷だけが再登場の可能性があるのかな。

告白の前に柊平が終えなければならないのは、現ライバルである昴(すばる)との決着。3歳年下の妹に発破をかけられ、そして せあら が再度アメリカに飛ぶという情報を聞き、ようやく柊平は動く。昴と時間無制限のバスケットボール対決をする。本気を出した柊平は無敵。3歳差は やはり大きい。しかし昴は時間無制限という言葉尻を捕らえ、ネバーギブアップで柊平に挑み続けることを予告する。


平の動きを知らない せあら は弱気になる。新年から3か月 動きがない現状に疲れてしまったらしい。どちらにせよ せあら は小学校の卒業式に合わせて帰国する母親と日本で暮らしていた家に帰るという。その家は4月からは せあら のイトコが使うことになる。新キャラ予告であろう。

そして せあら の小学校の卒業式の日、柊平は せあら を追いかけて彼女の実家で せあら を必死に抱きしめる。この家は4年前に せあら と周平が初めて出会い、そして恋に落ちた場所。ここで柊平は せあら に愛を捧げることを誓う。

こうして2人は両想いになる(完)

…で良かったと思うけれど、人気連載なので作品は続く。柊平は本当の両想い後にクリスマスからの自分の心の動きを正直に せあら に話す。私としては柊平に幻滅した部分なのだけど、恋をする せあら は彼が自分のことを想ってくれるだけで満足のようだ。それに恋のバトルに勝利したという達成感もあるらしい。競争率の低い相手に恋をしても面白くないのだろう。


年度、せあら は中学に、柊平は高校に進む。
新年度と言えば、新キャラの登場のベストタイミング。柊平の方では彼に因縁のあるらしい鳴海 由希(なるみ ゆき)が登場する。まず前髪を切れと言いたくなるキャラ出る。そして女性ライバルとして川崎 李真(かわさき りま)も登場。李真は身長178cmでスタイル抜群。ただ高すぎる身長は彼女の恋路を阻害しているらしく自分と釣り合う柊平に目を付けたらしい。綾乃もスタイルが良く、今の せあら では逆立ちしても勝てない女性だったが、今回は よりスケールアップさせたようだ。ただし自分よりも前に柊平が好きだった元カノ状態の綾乃に比べれば敵ではない。騒がしいが実は何も起こっていない。

柊平に豪華な誕生日プレゼントをしたい せあら は街中で声を掛けられた人に ホイホイとついていってしまい危機一髪。そのピンチを救ったのが鳴海で彼と面識が出来るが、せあら は鳴海に脳ミソが空っぽなコギャルと勘違いされてしまう。この鳴海の存在が せあら の心を(主に嫌がらせ方面で)揺さぶっていく。


海はバスケが上手い。どうやら雷に代わる高校での柊平の名コンビになるようだ。こうして鳴海は柊平とコンビになるから せあら という軽薄な人間の接近を許せなくなる動機になる。ただでさえ鳴海は「カップルクラッシャー」として名高いようで、せあら は追い込まれる。そして自分の軽率な行動で知り合った鳴海とのことを柊平に話せないから それが秘密となり2人の不仲に繋がってしまう。ちなみに鳴海の父親はHなビデオの監督という掲載誌「りぼん」に あるまじき設定。この辺は鳴海が愛や女性を信じない背景になっているようだ。

心が荒んでいるヒーローにヒロインが聖女となって接する。別作品として読みたい設定

せあら は綾乃のことを探る時と同じように柊平の高校に潜入して名前も知らないナイスバディの女性(李真)のことを知ろうとする。そこで鳴海に遭遇して またも彼に弱みを握られてしまう。これが別の少女漫画なら、危ないビデオ出演危機が2人の出会いとなりドS男子に服従してしまう内容に なったことだろう。

高校潜入が柊平にバレそうになった際に鳴海に助けてもらった せあら だが、その時に彼がキスの真似をしたことがトラウマになり、男性への恐怖心が芽生えてしまう。そこで柊平と接近しただけで彼も拒絶してしまう。柊平は自分が早まった行動をしたと謝罪してくれるが、せあら は悪い方向に話が進むことを悔やむ。


たも鳴海の主導で、中学生編での主要キャラが全員集合する一泊旅行が始まる。バイクが欲しい柊平はバイトで労働に励む。
この旅行で鳴海は せあら への誤解を解くが、一方で せあら の痛いところを突き、彼女を不安にさせる。第三者が精神的に揺さぶることで話に波風を立てようとしている。けれど全部が清算されたはずの中学生編で綾乃の名前が出ることで、せあら の中で柊平を信じ切れない部分が生まれてしまっている。柊平の裏切りにより幸せを信じ切れないという愛の否定があって、それが作品を濁してしまっている。

せあら との接点が増えると鳴海は彼女への好意を高めていったようだ。鬱陶しかった前髪を切ったことは当て馬の覚醒という意味なのだろうか。そんな自分の気持ちに鳴海は無自覚。彼の変化を認めるのは中学時代ずっと一緒だった李真だけ。