《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

ずっと好きだった人の家庭にパラサイト。これが小学生の私に出来る精一杯の押し掛け女房

ベイビィ・LOVE 1 (集英社文庫(コミック版))
椎名 あゆみ(しいな あゆみ)
ベイビィ★LOVE(ベイビィ★ラブ)
第01巻評価:★★★☆(7点)
 総合評価:★★★(6点)
 

身長162cmの美少女・有須川せあらは高校生に見えちゃう小学6年生。4年前に一目惚れして以来、ずっと想い続けてきた3つ年上の中学生・瀬戸柊平のハートをゲットするべく、瀬戸家で居候をすることに…!? 超キュートなパワフル・ラブコメディ。【同時収録】ベイビィ・LOVE<スペシャル編>【特別企画】「ベビ・ラブ×せあ・らぶ」ふろくコレクション

簡潔完結感想文

  • 4年間で隣に並び立てる自分になったから、これ以上の時間を浪費していられない。
  • レベルMAXヒロインだけど弱点も用意されていて読者が思わず応援したくなる。
  • 前半は すれ違いのコントと悲劇。小学生組の疑似三角関係は笑えたが中学生組は…。

4年間の猛烈に修行を重ねたスポ根 主人公、の 文庫版1巻。

序盤は誰が読んでも面白い。ヒロインの せあら は小学6年生。彼女は父親の仕事先のアメリカ同行を拒否し、父の部下の一家であり、3歳年上の憧れの男性の住む家に居候を決行する。常識外れの行動が面白いし、精一杯 恋に生きる姿勢が良い。それでいて好きな人に対して奥ゆかしい部分もあって4年前の出会いを内緒にしたまま初対面を装う。そして出会いからの4年間、せあら は努力をし続けており、初登場から彼女は自分を磨き上げたレベルMAXの状態という設定になっている。白馬の王子の登場や転生を待つのではなく、運命を自分の手で切り拓いていく姿は頼もしい。そんな せあら の姿は少女漫画ヒロインというよりも少年漫画ヒーローのようである。

出会いから4年間、人生の1/3を捧げた人との再会の日。最初の関門は同居すること

小学6年生というリアル読者と同年代の人を配置し、急成長や居候などギリギリのラインをついた設定も絶妙だ。せあら が4年間 想い続けたという健気さと、外見年齢は3歳年上の彼に近づいても精神年齢は まだまだ追いついていないというアンバランスさも魅力になっている。新しい家、新しい学校で せあら が人間関係を築いていく様子は世界の広がりを感じられて良い。

猪突猛進型の せあら が すぐには行動に踏み切れない理由も用意してあったり、複数の人間による すれ違いコントが発生しているのが面白かった。登場人物が多いけれど、ちゃんと配置されている意味があって、そして それぞれの思考で動いていることが見て取れる。これだけの人数を一気に動かして、笑える部分を用意しているところに作者の実力を感じた。1995年の作品だけど、30年後の2025年に読んでも面白くて共感できる作品になっているのは驚異的なことだと思う(しかも「りぼん」作品で)。

メタ的に考えると、せあら は親の反対を乗り越えて好きな人の家庭に居候できた時点で恋愛成就が確定している。少女漫画では同居した時点で恋することが決まっている。自分が同居できるタイミングを虎視眈々と窺い、それを一発で成功させたことが せあら の勝因だろう。少女漫画の中で数ある同居作品で、偶然ではなく、自分で運命を引き寄せた同居というのは珍しいパターンかもしれない。


念なのは中盤以降。ヒロイン・せあら の少年漫画ヒーローっぽいからか、それとも掲載誌が「りぼん」だからか、はたまた少年ジャンプの集英社作品だからか、中盤以降は新キャラが登場し、彼らが一定時間 暴れていくだけ。この辺は いつまでも無意味にバトルが続くジャンプ作品そのもの。読者が飽きるまで作品を継続させていく。特に本書の場合、ヒロインの せあら が小学6年生(後半から中学1年生)ということもあり、絶対にキス以上の進展が望めないため、ライバルを召喚し続けることでしか連載を継続できなかったのだろう。

この失速感、出涸らし感は同じく90年代後半の「りぼん」作品である高須賀由枝さん『グッドモーニング・コール』を思い出した。2025年現在『グッド~』が大学生編を延々と続けているらしいので、本書も続編を出して、当時では(キャラの年齢的に)絶対に見られなかった展開を見てみたい気もする(調べてみると作者の2014年の作品『三日月と流れ星』の1巻~7巻の おまけ漫画として本書の10年後が掲載されているらしい)。


親のアメリカ滞在が延長したことで現地で家族3人暮らすことになった小学校6年生の有須川 せあら(ありすがわ せあら)。だが せあら には日本を離れたくない理由があって空港ロビーから逃亡する。彼女が向かった先は瀬戸(せと)家。せあら は この家の長男・瀬戸 柊平(せと しゅうへい)に4年前に一目惚れしていた。年齢は ともかく自分の容姿が彼に釣り合うぐらいになった せあら は一刻も早く柊平と恋をすることを待望していた。この4年で せあら は自分の成長を意志の力で促進させたかのように背が伸び、他者から小学生とは思われない容貌になった。

その恋心を隠したまま せあら は上手に瀬戸家に入り込む。せあら の父親と瀬戸家の父親は大学の先輩後輩という仲。せあら は自分が上司の娘として扱われることまで計算して、時に演技を交え懇願する。しかし母親が瀬戸家に乗り込み、有無を言わさず娘を空港に連れ戻そうとする。そこに助け舟を出すのが、せあら の中に強い意志の力を感じた柊平。この恋を前進させたのは彼自身と言えよう。ただ それは柊平が せあら のことを小学生だと思わなかったからでもあった。柊平は せあら を下手をすれば自分より年上の人間だと思っていたのだ。

しかし柊平の言葉で流れは変わり、人の好い父親、打算的な母親、そして親の意思に従う柊平は賛成の流れになる。ただ一人 反対するのは せあら と同じ年の この家の長女・小春(こはる)。リビングなどは驚くほど広いように感じられる この家だが部屋は余っておらず、せあら は小春の部屋に居候する形となる。それが小春は嫌なのだ。けれど柊平は半年の我慢だという。半年後に柊平は高校進学と同時に寮生活をする予定だという。

実力行使で瀬戸家に乗り込み、ワガママを通した せあら だったが、柊平との時間にはタイムリミットがあった。その誤算に頭を抱える せあら だが そこで歩みを止めたりしない。


春という反対勢力は物語に常識を与える。せあら の行動は人に迷惑をかけている という正論を持ち込むが、あっという間に その つまらない常識を蹴散らすのが せあら という彼女の徹底した意思を示すエピソードに変わる。せあら は自分に悪意を向ける小春に対しては違う顔を覗かせる。せあら は この家に入り込むために この一家のプロフィールを徹底的に調べ上げ、小春の好きな人の情報も入手済み。そうして反対意見を黙殺する環境を整えていた。恋のためだから平和だが、一族への復讐のために入り込む人間だったらサスペンスになっていただろう。
実際 せあら の心はサスペンス風味なぐらいに狂気を帯びている。せあら の願いは16歳で柊平と結婚すること(1995年の作品なので女性の結婚可能年齢は16歳)。

瀬戸家の母親も息子に対して せあら に手を出さないよう釘を刺す。血の繋がらない男女が一つ屋根の下で暮らして何が起きるかは母親には明白。上司の娘を疵物にしたら夫の出世にも関わる。ただし少女漫画においては同居=恋愛の成就なので、瀬戸家を説得できた時点で せあら の大勝利なのである。

一般的に突飛な せあら の行動だが、彼女は この4年間努力を続けてきた。せあら が磨いてきた美貌に最初に惹かれたのは柊平の友人・雷(らい)。ラジオ体操で見かけた せあら に恋に落ちるが、その他に接点のない雷は しばらく「ラジオ体操の君」を捜し回ることになる。リアルJSの せあら はともかく、雷がラジオ体操に参加しているのが笑える。


居なので お風呂場で遭遇するアクシデントがあったりする(被害者は せあら)。ただ そういうアクシデントも利用するのが せあら で、それが柊平の弱みになると知れば、それに乗じて彼と一緒に遊園地に行くことを約束させる。そして早くも告白を宣言。恋心は既に4年分 醸成されている上に時間制限もあるため せあら の行動は早い。このスピード感は他に類を見ないものかもしれない。

同居や一緒に居る時間が長いと互いに素顔が見えてくる。もちろん惹かれる部分もあるが、逆に柊平との3歳差が絶望的に大きいことも痛感する。そして この遊園地回で出会うのが柊平の同級生の堰上 コウ(せがみ コウ)と仁科 綾乃(にしな あやの)のカップル。このカップルが後々に せあら の心を破壊し、作品の価値も壊していくことになる。

柊平が綾乃を好きだったこと、そして柊平が女性の胸の大きさを重視していることを知り、せあら は告白することなく終わる。柊平にとって せあら は妹扱いでしかないのだろうが、それにしても中学3年生で自分の好みを堂々と言うのは柊平が器が大きいのかデリカシーが無いのか、羞恥心がないのか…。

同居するために外堀を埋めることに夢中で盲点だった柊平の恋愛事情。最大の障害

学期。せあら は転校したので新しい学校での生活が始まる。
これまで無敵を誇っている せあら だが学校生活は彼女の鬼門。新学期が始まる前の数日は柊平に元気がないことを見抜かれていた。瀬戸家の母親は母親同士のネットワークで、せあら が学校では対人恐怖症気味なところがあって前の学校では友達がいないことを伝えられていた。

新しい学校では小春と同じクラス。確かに せあら は家の中と様子が違い、人に囲まれて固まってしまう。そして人に嫌われることを恐れないかのように、悪意に対して毅然と立ち向かう。
せあら の行動の理由は前の学校では「疫病神の せあらちゃん」と呼ばれていたからだった。自分に関わった人が次々と不幸になったことで せあら は人との接触を、誰かが不幸になることを恐れていたのだ。

その情報は小春を通して柊平にも伝わるが、彼は噂や祟りなど恐れなかった。誰かに言って欲しかった自分は悪くないという言葉を言ってくれる柊平は格好いい。2人の年齢差があるからこそ せあら は柊平に助けられる。もし あのままアメリカに行ったら せあら は人間関係を築けずに孤独な人生を歩んでいたかもしれない。恋のために柊平の近くにいることは結果的に せあら の人生を救ったような気がする。

こうしてトラウマが解消した せあら は小春への強い態度も彼女から嫌われるためだったと白状する。同じ年の2人の友情は ここから始まる。
ここから しばらくは柊平との進展はなく、小学校生活や小春の恋物語が続く。小学校生活はリアル読者にとって身近で、小春の恋の相手のような男子は柊平とは また違う等身大の魅力があるだろう。
ちなみに小春の恋の相手は勝手に せあら が自分を好きだと思い込み、そして それが柊平にも伝わり勘違いが連鎖していく。雷の いつまでも見つからない恋の相手といいコメディ要素が強いことも人気の秘訣だろう。


平の好きな人が綾乃ではないか と気掛かりな せあら は制服を着て中学校に潜入する。容姿だけで せあら を疑う人はおらず、聞き込みは着々と成功する。しかし初めて中学校内での柊平の姿を見たことで、彼の視線の先に綾乃がいることに気づいてしまう。初回は無敵だった せあら が どんどん弱っていく。既に彼女を好きになっている読者は応援したくなる状況だ。ちなみに この潜入調査の際に せあら は雷と遭遇し、彼は「ラジオ体操の君」が同じ中学の生徒だと勘違いしてしまう。

自分が人生の1/3を捧げた柊平が別の女性を好きだという絶望に涙する せあら だったが、それは一瞬のこと。綾乃はライバルではなく越えるべき目標と設定して せあら は努力を継続する。精神力は強い せあら だけど、精神年齢は幼く、自分の使っていたフォークに柊平が口をつけると そのフォークが宝物になったりする。この調子だと同居で色々なものを盗んでいそうなだけど大丈夫だろうか…。

運動会回では せあら の美貌がアイドル的人気になり その手の男性からカメラで狙われるのを柊平が助ける。また柊平は せあら の想い人を勘違いしたままで、せあら の同級生の男子(小春の彼氏)に言動を注意したりと せあら のために動いている。保護者的立場と言っているが、何かと世話を焼いてしまうのは もしかしたら…という進展が見える。


日に柊平と出掛けようと画策する せあら だったが、中学生組と小学生組の団体でスケート場に出掛けることになる。そこで再度 綾乃と接点が出来て、彼女と柊平の仲について話を聞く。すると意外なことに1年前に綾乃から柊平に告白し、柊平が交際できないと断っていたことが判明する。その失恋直後に今の彼氏のコウに告白され、苦しい時期を支えてくれたことで交際に至ったという。だが柊平に恋をする せあら には柊平が本当は綾乃が好きだったことが分かる。そして何も知らないはずのコウは、今の自分たちの交際が柊平の手配によるものだと考えていた…。

このスケート回で初めて雷が せあら の正体を知る。残る勘違いは柊平の中の せあら の好きな人か。雷は せあら が小学生でも積極的に動く。それが柊平には予想外で またまた保護者的な心配が顔を出す。同級生が動き出したことで柊平の心が穏やかではいられない。
ここから せあら は柊平と綾乃が、柊平は せあら の悲恋(勘違い)と雷の同行が気になる。1つずつではなく同時進行で色々動いていて情報量が多い。ここが作者の能力ではないだろうか。


平は雷の積極的な態度を心配するが、雷は1日 せあら と一緒に居て、彼女が誰を好きなのかを理解する。しかし それで へこたれないのが雷。せあら に望みを打ち砕くような発言をして、柊平を諦めさせようとする。このガッツがある感じ、せあら と雷は似ている。ただ雷は せあら の4年間の片想いと努力を知らないから まだまだ逆転が可能だと思っているようだ。この時点で柊平だけが鈍感ヒーローである。

柊平と雷の性格の違いはバスケのプレーに よく表れている、とコウは分析する。「自分が どうすれば まわりにとって一番いいか頭で先に考えて」「感情じゃ動かない」、それが柊平という人間らしい。コウには柊平の恋愛が その姿勢を基本にしていると思うのだろう。だが雷の暴走を止めるために柊平は らしくないプレーをする。それだけ せあら が大切だとプレーには表れている。コウも それを見てとったようで、せあら こそ柊平を射止める存在だと考えたようだ。

同じチームながら これは間接的な せあら を賭けた雷との戦いだから柊平は必死になる

そして雷も せあら が4年片想いをしていると知って自分に入り込む余地がないと考える。柊平も ちゃんと せあら のために動いており、両想い寸前に見えるのが雷には悔しい。

ベイビィ★LOVEスペシャル編〉」…
当時 小2で身長116cmの せあら と小5で174cmあった柊平の出会った頃の話。自宅でのバーベキューで柊平に一目惚れした せあら は彼を観察し続けて情報を集める。一方で50cm以上ある身長差を、男女の理想的な身長差20cm(母親の意見)に縮めるために努力を始める。
せあら が本当に柊平との恋が叶わなかったら どうなってしまうのかが怖い。執念や執着といえるほどの想いが叶ったことで読者も喜びを感じるのだろうけど。