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試合結果を予言する神しゃま亜哉と 恋のことなら丸わかりや恭介の同級生対決が見たい!

春待つ僕ら(4) (デザートコミックス)
あなしん
春待つ僕ら(はるまつぼくら)
第04巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★(6点)
 

インターハイ予選が始まり、永久(とわ)たちも気合十分。会場には美月(みつき)の幼なじみ・あやちゃん(♂)もいて、恋も試合も負けられない!! 一方、真剣な永久たちの姿を見た美月は自分にできることを考え始めて…? イケメン4人とのハチャメチャ青春DAYS☆ 恋もバスケも真剣勝負の第4巻!

簡潔完結感想文

  • 亜哉のバスケのプレーを始めて見て、観覧席の1回目と2回目は緊張が違う。
  • 勝ち進んだから遊べない亜哉と、敗退して遊べる永久。今はまだ格が違う。
  • 遊園地回は次々と違うイケメンキャラと交流していて乙女ゲームかと見間違う。

力が高校2年生までの学校は、1年目は敗退するフラグ、の 4巻。

再読すると亜哉(あや)が本当に いい味を出していることに気づいて好きになってしまう。
亜哉は出会いの順番とバスケの実力という2つの要素で永久(とわ)よりも有利な点があるが、それが恋愛においては不利になっているという点が とても面白い。

1つ目の出会いの順番は確かに亜哉の方が早く、ずっと亜哉はヒロイン・美月(みつき)の心の支えだった。しかし美月の心の中にいたのは同性の「あやちゃん」であって亜哉ではない。突然 異性となって現れた亜哉に美月は戸惑い、彼からの好意も信じられないし、素直に受け取れない。だから亜哉は今の美月に自分のことを知ってもらおうと時間をかけるし、彼女の意識に上がるために努力を惜しまない。今回、ようやく美月が亜哉のバスケのプレーを見たことで亜哉のビハインドは少しカバーされる。

亜哉がバスケをする姿を初めて見て、美月の中で あやちゃん と亜哉の2人が像を結ぶ。

この美月の亜哉への印象の変化を、試合会場の2回の亜哉の接近で表しているのが とても巧い。その2回は美月が亜哉のプレーを見る前と後となり、これまでは昔馴染みの あやちゃん として接する部分が多かった美月が、プレーに魅了され、高校バスケ界のスターである亜哉として彼を認識し始めている様子が手に取るように分かる。亜哉の本気のバスケのプレーは ここまで封印されており、大会という本番で不意に美月の目に飛び込んできた亜哉の姿は忘れられないものとなるだろう。

2つ目のバスケの実力は、亜哉は所属する学校が勝ち進んだからこそ美月(たち)と遊ぶ約束が順延になっている。こうして亜哉は美月との接触機会を奪われていく。これは負けたからこそ夏休みに休みがある(1日だけだけど)永久たちと違う。そもそも学校が違うことも不利になっており、美月の応援が自分に注がれないことが分かっているから、試合会場の観客席で亜哉は2回も美月と接触したのだ。亜哉にとって美月に会える機会は とても貴重で、会うことが日常である永久とは そこが違う。だから亜哉は美月に自分のプレーを目に焼き付けて欲しいし、彼女に抱く気持ちの本気度を分かって欲しい。いつも飄々としている亜哉だけど、そういう不利を分かっているから短期集中で美月に本気で接する。亜哉の切実な気持ちを考えると どのシーンも胸が苦しくなってくるようだった。


かし亜哉のデメリットは翻れば永久の不利でもある。
今回の大会の敗退で、学校単位ではあるものの、永久は亜哉との実力差を思い知らされた。永久も大会後に美月との関係の進展を考えていただろうが、それよりも亜哉に負けないぐらいの実力を手に入れることが先決となる。

そして同じ学校の永久は美月と同じ空間にいられる機会が多いが、亜哉より先に美月に出会うことは絶対に叶わない。そこがまた永久の焦燥になっており、その亜哉に勝つために自分を追い込み過ぎるぐらい追い込んでいく。今の状態で美月に想いを告げても、きっと亜哉への劣等感に呑み込まれてしまう。だから胸を張れるぐらい強くなることを永久は決めた。


回の感想文のタイトルは神のような2人の男性が気になったから。
亜哉は試合会場で永久の性格に由来するプレーの弱点を見抜いており、そして各学校の実力を冷静に判断できている。一流プレイヤーだからこその分析力なのだが、その姿は神様のようだった。名前は神山 亜哉(かみやま あや)ではなく神様なのではと思っての今回のタイトルである(ちょっと分かりにくいかな…?)

そして亜哉と同学年の高校2年生の若宮 恭介(わかみや きょうすけ)は、美月や永久の本人たちすら言語化できない気持ちを ちゃんと分かっている。だから丸わかり や 恭介なのである(もじりの説明ほど虚しいものは無い…)

今回で専門学生のナナセを除く、高校生キャラの顔合わせは一通り終わっただろうか。ここからは その関係性の深化が見たい。特に神様ポジションの亜哉と恭介の会話が見たい。何なら亜哉の恋心を恭介が全部理解し、恋愛マスターの恭介が男たちの恋における審判を下すのもいい。もちろん決めるのは美月自身じゃないとダメだけど。

永久と遊んだのなら、近い内に亜哉と遊ぶ機会もあるだろう。そこで どんなことが起きるのか、そして それが起きる前に永久は今回の遊びで美月に強い印象を残せるのか、次巻の展開も楽しみだ。


月は試合会場で迷った後で永久たちに差し入れを渡していたので亜哉の活躍が見られない。ここで美月が亜哉のプレーを見たら永久の勝利を信じられなくなってしまうからなのか、それとも亜哉に魅了されて永久から乗り換える可能性があるからなのか…。

亜哉は最初の試合が終わった後に観客席にいる美月に会いに来る(この時点では美月は亜哉のプレーを見ていない)。ここでは初戦では、亜哉を途中交代させても危なげなく勝った亜哉の高校と、幼なじみ4人の主力を投入し続けないと勝つことが危うい永久たちの高校の差が暗に示されているのも良い。


の後 美月は予期せぬタイミングで亜哉のプレーを見ることになり、その才能と輝きを目の当たりにすることになる。ここまで ずっと上手く避けていた亜哉のバスケのプレーを見てしまったことは物語に どう影響するのだろうか。そして永久たちの大事な試合の途中で亜哉が再び美月に接触していて、彼のプレーを見た後は美月は以前とは違う緊張感を抱いている。この美月の心理状態の違いを2回の接近で上手く表している。

亜哉が再び美月に会いに来たのは、美月は自分の応援はしてくれないと分かっているからだろう。そして今回の試合の結果も お見通しで、この日以降 試合会場で美月に会うことは しばらくないことが分かっている。ただ この日、美月は偶然とはいえ亜哉のプレーを見て、それが忘れられない。そのことを知った亜哉は美月に成長した、バスケを続けてきた自分を見せられて満足感を覚えたのではないか。彼の努力は この日のためにあった。亜哉ぁぁぁ…(号泣)


際、亜哉の予言通り、リードしていた残り5分で竜二(りゅうじ)が負傷退場すると そのままチームは十全に機能しなくなり敗退してしまう。
竜二が心配で駆けつけた美月は永久に遭遇する。そこで彼に何か言葉を伝えたいが胸が いっぱいになり泣いてしまう。人目を避けるために美月を抱き寄せ、その胸で泣かせる永久。いかにもヒロインらしい自己満足な涙で あまり好きな行動ではないが、永久は ここで美月が泣いてくれたことで自分の涙を止められたのではないか。彼女に涙を流させない自分になること、それが永久の次の目標かもしれない。
そして そんな2人の様子を亜哉は横目で確認する。大きな戦いの終わりは、新しい戦いの始まりとなる。


会が終わったら永久との関係を進展させようと意気込んでいた美月だったが、竜二の怪我もありバスケ部員たちとは以前のような交流がなくなり、永久とも何を話し掛ければいいか分からなくなる。
バイト先で相談したナナセは普通にしてあげるのが一番といい、美月も気持ちを切り替える。そこにバスケ部員たちが久々に顔を出すのだが、やはり以前とは違う様子。永久は誰かがストップをかけるまで練習に打ち込み過ぎているし、竜二はナナセに会うことを禁じることで自分を成長させようとする。彼らは昔から敗戦を力に変えて誰かが成長し、それに負けじと全員がレベルアップすることで次の勝利に繋げていたらしい。その時、美月の頭に浮かぶのは彼らとは逆に独力で強くなったタイプの亜哉だった。少しずつ美月の頭の中で大きくなった亜哉が占めるようになっていないか。

この時、男性たちのストイックさに肩を並べる難しさを美月が痛感して落ち込むのだが、そこからの緩急の付け方が面白い。竜二らしい復活の仕方だ。そして大会が終わった後に遊ぶという約束は活きているようで、美月は この人たちと一緒にいることを許された気持ちになる。


休み、亜哉はインターハイ出場のため遊びに参加できない。そこでレイナとナナセを含めた7人で遊ぶことになる。そういえば ずっと疑問なのがレイナの社交力の高さ。自分の世界を邁進している彼女こそ友達が出来ずらい性格に思えるが、クラスメイトに馴染み、男女ともに初対面の人とも あっという間に仲良くなっている。そこが ずっと不思議。

遊びは海かプールかに絞られるが、各自が他者の水着の妄想をしたところで却下となる。そこで永久が美月の希望を少々強引に聞き出すことで行き先が決定する。永久が大事な事を思い出すのは話し合いの途中で電話を掛けてきた亜哉の存在があったからか。この遊びの選定と同じく、永久は自分の気持ちを美月に押し付けない。それは美月が自発的に誰かを選ぶのが重要で、自分が強引に迫るのは違うと考えているからで、それが ずっと煮え切らない言動に見えてしまう。優しいと言えば優しいし、強引さが足りないとも言える。これは亜哉が看破した永久の性格的な弱点にも通じる。バスケや精神的に永久が強くなると この辺が少し変わってくると面白いのだけど。

レイナ的発想ならば、恭介は ずっと永久に恋しているから彼のことが丸わかりや って感じか。

月が選んだのは遊園地。雑誌で見た恋愛成就のジンクススポットが頭にあったからだった。永久も美月もジンクスに頼る人みたいだ。けれどリストバンドのジンクスも叶わなかったのと同様、美月が狙うジンクスは ことごとく永久と成立しない。邪念のない瑠衣(るい)や恭介(きょうすけ)とばかり叶うのは、乙女ゲームのようで笑ってしまう。瑠衣や恭介の好感度が上がる音が聞こえる。

けれど恋愛マスター・恭介のお陰で7人グループは3班に分かれ、美月は1時間ばかり永久と2人きりで行動することになる。グループ交際から2人きりになりデート気分を楽しむ美月。そして美月は狙っていた、少女漫画で一番大切な乗り物に永久を誘う。そこで まさかの次巻へ続く。これは1巻毎の収録話数が5話から4話に減ったことが影響したか。本来なら遊園地回は『4巻』に収まる予定だったのに、編成上の都合で思わぬところで巻を跨ぐことになった ということか。