《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

実は2人のバスケの力量の差を見極めているから、対決を自然消滅させたいヒロイン。

春待つ僕ら(3) (デザートコミックス)
あなしん
春待つ僕ら(はるまつぼくら)
第03巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★(6点)
 

永久(とわ)との距離も近づいて、嬉しい美月(みつき)。だけど、再会した親友・あやちゃん(♂)がアタックしてきたり、美月に新たなライバルも登場して…インターハイ予選も近づきみんなが熱くなる…!? イケメン4人とのハチャメチャ青春DAYS☆ 恋模様は大混戦!

簡潔完結感想文

  • 対抗意識から「好きなコとのハグ」を どちらも完遂して試合開始を待つDEAR BOYS
  • 素敵なヒーローに恋心を抱く女性の存在にヒロインは どこまで無自覚でいられるか。
  • 美月が亜哉の好意を自覚して三角関係が成立しているが、本当は五角関係なのである。

グで男性を充電完了させる蓄電池ヒロイン、の 3巻。

丁寧と展開が襲いは紙一重で、この『3巻』で早くも私は展開が遅いと感じた。それでも読むに堪えるのは丁寧な絵があるから。本書は絵が物語の隙間を埋めてくれている感じがする。画面の解像度が高いし、密度が濃い。それは作風と呼べるものである。

今回はハグで始まりハグで終わっているところが面白く、それによって三角関係をヒロインが自覚する。試合前に大事な儀式を終えた彼らは どんな活躍を見せるのか楽しみだ。やはり『3巻』は三角関係と大きな関わりがある。けれど実は恋の矢印は三角どころではなく、五角または六角まで拡大していく。大事な事は何も起きてはいないが物語は順調に拡張していっている。この拡張期を経て、どういう風に全ての恋に決着をつけるのかが今から楽しみ。メインの3人は まだまだ動きそうもないから、誰かが動いて物語に少しでも波風を立てて欲しい。


た『3巻』で面白いと感じたのは、ヒロイン・美月(みつき)を巡って直接対決が始まりそうな永久(とわ)と亜哉(あや)の2人を美月が強制終了させるところ。これは美月が戦いを望まないというヒロイン性を見せる場面であるが、では この勝負が続いていたら どうなったか、その結果は永久の惨敗だっただろう。5本先取の 1 on 1 で永久は一本も取れなかったかもしれない。それだけ神山 亜哉(かみやま あや)という選手はスター選手で、まさに神の頂にいる者。このゴッドマウンテン(©南波あつこ さん)に対して、永久の実力は まだ足りない。だから この勝負は自然消滅させるのが正解で、美月が本能的に永久からボールを奪ったのは正解と言えるだろう。

美月は勝利の女神というより不敗の女神。敗色濃厚な勝負を回避して彼の希望を繋ぐ。

少しネタバレになるが、本書はバスケットボールに情熱を注ぐ男性たちを描いているが、バスケそのものを恋愛の重要な要素にはしていない。美月への愛情が強い方がバスケに勝つわけではないし、バスケ技術が高い方が美月に相応しい訳ではない。スポーツと恋愛を ちゃんと切り離しているところにバスケ経験者である作者の考えが滲んでいるのかなと思う。それと真逆のことをするのが 池山田剛 さんである。これは別に批判ではなく(20世紀の)少年漫画的な展開を少女漫画で やり遂げることが作品への情熱と勢いになっていると思う。

美月が周囲に気を遣いすぎる自分を変えるために小学生時代に出会った あやちゃん を心の指針としたように、永久は亜哉という越えられない壁があるから成長する意欲を持ち続ける。そういう意味では やはり亜哉は神の山。信仰されるような霊峰なのである。2人がそれぞれに努力をし続ける物語だからこそ物語に青春の匂いが漂い、清涼感を失わない。やっぱり亜哉は凄い人なのである。白泉社作品なら絶対に こちらのトップ オブ トップが正ヒーローになったはずである。

美月の一つの行動が ちゃんと後々の展開に繋がるという連鎖も面白かった。美月が してきた正しい行いが彼女の道を切り拓く。そういう情けは人の為ならず、のような徳を積むことの意味があるように思える。展開は遅いかもしれないが、一つ一つ丁寧に積み上げ、掬い上げる感じが私は好きだ。全てが丁寧な漫画だと思う。


合が近づく永久のために自分が何が出来るかを模索していた美月は、男女バスケ部が使う横断幕が破損していることを知り、自作した品が代替品にならないかと質問する。人の輪に入るのが苦手な美月が自分の意見を告げられるのは、それだけ永久の力になりたいという気持ちが強いからだろう。

部外者の介入に躊躇するバスケ部だったが、以前の練習試合で美月が真剣に応援したことや、違う意味で真剣なレイナの態度がバスケ部からの信用になり美月は横断幕を作ることになる。今回、横断幕の管理を怠っていたのは同級生で女子バスケ部員のマキ。この交流で美月はマキの恩人になるのだが、マキはライバルにも なり得る存在であることが匂わされる。


久は試合前にリストバンドに女性からメッセージを記入してもらうと高確率で大事な試合に勝てるというジンクスを美月に願う。その意味や記入後の手を繋ぐことの意味を問い質したい美月だったが、そこに亜哉が登場する。3人での交流は初対面以来となる。

ここから美月を巡る男同士のバスケ対決が始まりそうになったのだが争いを望まない美月はボールを奪い、対決を中断させ、男たちが納得する妥協点として、デートをしたい亜哉と、彼とのデートを阻止したい永久との3人で遊ぶことを提案。天然な永久が それを了解したため、直接対決は終了。戦いの流れは公式戦へと引き継がれる。


月は自分が出来る永久の応援として横断幕作りに勤しむ。一人で仕事を溜め込もうとする美月にレイナが苦言を呈する場面もあったが、レイナの協力でマキと一緒に横断幕を完成させる。美月がマキに頼めないのは、小学校時代の嫌な思い出が よぎるから。ここでも自分が変われていないことに気づき落ち込むが、マキもまた自分の欠点を抱えながら改善に努めていることが分かる。横断幕を完成させることでマキと距離が近づくが、それは いつか美月がマキを傷つけるフラグでもある。ここで再度 友情が破綻したら、美月は立ち直れないかもしれない。

マキは永久にリストバンドに言葉を書いてもらおうとするが失敗。でも それを「頼むとか好きって言ってるようなもん」だから、マキは安堵もしていた。…ということは永久は美月に告白していたということか。


合前日の土曜日、練習が早く終わるのでバスケ部員たちがカフェに来店。美月はバイトではなかったのだが、彼らに会うために顔を出す。けれど彼らは試合モードで美月を からかうこともせず放置。なので美月は黙って店を退去する。
けれど駅まで来た時に やはり直接 頑張れと言いたいと思い直して店に戻る。しかし彼らは店を出た後で美月は落ち込む。けれど向かいのバスケコートに永久がいた。彼は亜哉と出会った以来の このバスケコートで、幻となった亜哉との対決のことを考えてたらしい。

こうして美月は永久と3回目の一緒の帰宅をする(しかし土曜日なのに満員電車が連続するという話は どうしたものか)。


ターハイ予選、5回戦までは試合会場が遠いため、美月は応援に行かない。毎回、応援に行くと重たい女になるし、周辺のファンからも敵視されるからだろうか。ちなみにバスケのシーンでは参考にした資料写真があることを提示するのは、同じ講談社ちはやふる先生の「一件」が影響しているのだろうか とか考えてしまう。

ベスト16まで勝ち進んだところで、永久以外のバスケ部員にも美月と亜哉の関係が明かされる。そして亜哉も含めて遊ぶ謎の計画が持ち上がっていることも話す。亜哉の好意を信じない美月に対し、スキンシップを目撃した恭介は亜哉の本気を理解する。

この時、久々に2年生の お姉様方(モブ)が美月とバスケ部の交流を邪魔するようなシーンが挿入されるが、レイナによって退散させることが出来た。聖域は守られ続けるということか。


の頃、美月は永久に近づく異性(マキのこと)がいること、永久は美月と亜哉のスキンシップがあったことを意識する。だから永久は亜哉と同等のスキンシップを美月にする。だが実際に目撃した訳ではない永久は、自分の誤解で亜哉よりも凄いスキンシップをしていることを知らない。だから美月は困惑する。けれど これは美月が永久の応援のために夢見ていたことの一つなのだった。

亜哉は自分が あやちゃん ではなく亜哉だという美月の理解を待つ。それが優しさ。

美月が初めて応援に行った試合会場には亜哉の高校もいた。そこで美月は亜哉に遭遇。そして美月は そこで自分が亜哉にとって支えになるような大切な存在出ることを初めて認識する。いよいよ美月も三角関係を意識し始める。