《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

4巻連続で東京からの訪問者。毎度 彼らに微妙に嫌なことを言われるから 東京 怖い。

空色レモンと迷い猫 4 (マーガレットコミックスDIGITAL)
里中 実華(さとなか みか)
空色レモンと迷い猫(そらいろレモンとまよいねこ)
第04巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★★(6点)
 

必死に… 息を切らしてあなたを見つけた 芸能界を干され、尾道に来た高校生俳優・大和。彼への恋心に気付いた渚は東京へ帰るという大和のもとへ走り…。そして大和は芸能界復帰に向けて映画オーディションへ挑むことに!! 芸能人×JKの身分違いの恋の行方は!? 【同時収録】<描きおろし>~バレンタイン~

簡潔完結感想文

  • 実質的な告白を互いにしながらも確証が得られないのは作品側の都合が大きい。
  • 正月三箇日からオーディション?? そして写真の中で眼鏡が消える謎現象(初版)
  • 職務放棄したマネージャーの牽制と分かりやすい女性ライバル出現で苦しい展開。

京から来る人は性格が歪んでいる(偏見たっぷり)の 4巻。

ここまで好感触しかなかった作品ですが、後半戦から ちょっと失速した印象を受ける。
その理由の1つが今回のタイトルや一文目に書いたように、東京からのゲストキャラに尾道(おのみち)育ちの純粋ヒロインが嫌味を言われる という展開が続き過ぎている点だろう。

ヒロインの渚(なぎさ)が尾道から離れることが出来ないのなら、イケメン芸能人・大和(やまと)や彼の関係者などが東京からゲストが来るしかないのは分かるが、同じような展開の連続に陥っている。そして この頃から、渚は無害だけど、東京からの使者は害意を持ち込むという地方と東京の分かりやすい構図を持ち込んでいるように見えるのもマイナスポイント。『3巻』で活躍した涼(りょう)も東京に行ったら すっかり嫌な部分を身に付けていた。作者に そういう意図は無いだろうけど、作者はヒロインを悪く描けないという欠点があるように見え、それが善悪を一層 鮮明にしている気がする。

るる の登場で地元にいながら異邦人のような感覚を襲われる渚。大和の復活は格差の自覚。

京からの来訪者と尾道で渚が出会うという基本構造の重複に加え、大和も含め、東京から来た人に少しずつ嫌なことを言われるという内容の重複も気になる。

特に今回は大和の理解者だったはずのマネージャーが、復活した大和を過保護に扱う余り、大和が気に入っている渚に恋愛禁止を間接的に忠告することに疑問を感じた。
マネージャーがそれを大和に言わないのは彼が意見を聞かなそうだから と想像した結果である。だから いたいけな一般人である渚の方から攻める。マネージャーとして正しい判断かもしれないが、自分が預かっているタレントをコントロール出来ない、しようとしない時点で職務放棄して楽をしようとしている。大和の良き理解者といった感じだったのに、一気に感じが悪くなったのが残念。大和が これを知ったら激怒するだろうに。まぁ こういう一方的な宣告をヒロインがされることがドラマになるんだけど。

『4巻』後半からは あからさまな女性ライバル・るる が登場し、渚が不安になる展開となる。でも大和の想いは渚に伝わっているも同然で、それなのに不安になるのは心が弱すぎるというか、読解力が無さすぎるような気がしてならない。間違いなく るる は最強ライバルで不安になる気持ちも分からなくはないが、ちょっと両片想いの度合いが強くなり過ぎていて、読者としては何の心配もないように思えてしまった。

そしてマネージャーの忠告からすると、大和は るる と恋に落ちることも出来ないのだ。それなのに自分だけ忠告に当てはめて悲劇のヒロインのように渚が思い悩んでいるから その頭でっかちな考え方に疑問が生じる。

また渚が東京からのゲストキャラに関わり続けていくために、学校の描写が激減している。当初は尖っていた大和が尾道での初めての学校行事を通して青春を味わったり、普通の生活に触れていたが、それは序盤で終わってしまった。渚の女友達は記号でしかないし、大和が仲良くなったクラスメイトも大和との交流が描かれなくなってしまった。『2巻』で渚が東京に行って そこで涼のことに けりをつけて、また学校生活に戻るのかと思ったら、そうはならないまま。一回、攻め込んだ後は ずっと防戦一方のロボットアニメのようで、話に変化が乏しい。
そして渚にとって大事だった涼が そうであったように、ゲストキャラは役目を終えたら二度と現れないから危機感に乏しい。

大和の世界が広がっていくはずだったのに、拡大した後に縮小していく世界観が残念すぎる。


和が東京に戻ると聞いた渚は彼を追う。しかし大和から新年の挨拶に2、3日 戻るだけと聞かされ渚は自分の早合点を恥じる。その話の流れで涼(りょう)の話題となり渚は顛末を語る。大和は涼が大和が怒ったことまで話したことに腹を立てるが、渚が自分のために息を切らして必死になったことが嬉しい。

大和が背中を向けて東京に行こうとする際、渚はデジカメを取り出して大和の姿が撮りたいと お願いする。大和が、渚の「好きなもの」を撮るためにプレゼントした このデジカメの最初の一枚に自分が選ばれたことに ますます大和は舞い上がる。そして渚と並んで自撮りをして東京に向かう。


京に向かった大和は一から出直すつもりの心構えを持っていた。そんな彼の変化を つぶさに感じ取ったマネージャーは、大和が暴力事件を起こした監督の作品のオーディションを受けるぞ と宣言する。大和が東京に行ったのは元日だろう。その翌日にオーディションってことは1月2日。映画業界には正月休みもないのか…?

オーディション会場に現れた大和に周囲は騒然とする。異様な空間で大和を落ち着かせるのは渚の存在。監督の前に出ていくと側近たちが大和の厚かましさに色めき立つが監督自身は大和に演技をさせる。その演技はセオリーから外れており、演技後の大和に監督は その演技プランを問う。そこで大和が これまでと違って台本を読み込んで、自分で考えて演技をしていることを監督は見抜く。大和にだけ監督自身からいち早く結果が伝えられ不合格。けれど大和は監督の別の作品に声がかかる。


分が また出直せることを大和は渚に いち早く伝えたい。渚は その報告に喜ぶが、大和が忙しくなることは会えない日々が続くことと同義だから寂しさも感じる。けれど撮影場所は尾道で、大和が遠くに行ってしまう訳ではない。

大和にとって久しぶりの仕事で、自分に任せられた仕事へのプレッシャーを感じており、渚に励ましのハグを求める。渋る渚にクリスマスに渡された「なんでも お願い聞きます券」を使用し、何とかバックハグを頂戴する。このバックハグをして渚は自分が大和を不快に思っていないどころか好きだという認識を深める。

だが その気持ちに気づいた直後、大和のマネージャーに呼び出され、再出発をする大和が「何かに つまずくわけには いかない」と告げられる。これは渚への牽制である。彼女が大和にとって大事な人であることを見抜いているマネージャーは、渚の方に自制を促すことによってスキャンダルを回避しようとする。

ちなみに この時、落ち込んだ渚が眺める2ショットには大和から眼鏡が消えている。これは初版だけだろうか。後に修正されていて欲しいミスである。

画像加工ソフトを使えば邪魔な眼鏡も一瞬で消すことが可能です。購入は公式ショップで☆

ランクインの前から大和は学校を休みがちで何度も東京に向かう。渚は そんな大和を元気づけることしか出来ず、彼との2人だけの行動も自重する。

だが多忙が極まって大和は高熱を出し、風邪回が始まる。翌日は東京に行く必要があるため、この日の内に治したい大和のため渚も看病を頑張る。そして眠ってしまった大和に「好きだよ」と言えずに宙ぶらりんとなった言葉を伝える。渚の看病もあって大和は仕事に穴をあけることはなかった。

そして春休み直前から映画の撮影が始まる。そこに現れるのが子役時代から活躍する女性芸能人・逢坂(おうさか)るる。一つ年下の るる は同じく子役あがりの大和とは幼なじみのような関係。渚の幼なじみである涼の次は、その反対の存在が登場した訳だ。


道での撮影は確かに大和と離れずに済むが、それは大和が芸能人で芸能界という特殊な世界にいることを思い知ることでもあった。そして今回は彼の近くには常に るる がいて、渚は特別な2人の様子に疎外感を感じる。これなら別の場所で撮影してくれた方が心が穏やかだっただろう。

大和は演技力が向上し、監督の期待に応える。その大和が撮影中に見学に来ていた渚に連絡していることを るる は見抜く。そしてマネージャーに続いて今度は るる からの牽制が入る。
2人の仲が9歳で共演した時から始まり ずっと親密であること、そして大和が起こした暴力事件は るる を守るために起きたことが明かされる。渚は るる が責任を押し付けられた形の大和を守らなかったのかと疑問に思うが、るる の行動を大和が阻止したらしい。その際に自分のカムバックを信じろと大和は言ったという。

その後も るる は大和が渚と接触しそうになると邪魔をする。少女漫画においては こういうことをする女性ライバルに未来はないのだけど。しかも るる が渚に来いと指定した撮影日、るる は撮影中にキスをする。フリでいいのに、わざわざ したのは、渚を牽制するため。
ここで渚は落ち込んで撮影現場から遠ざかっているが、考えてみれば渚だって演劇中に大和からキスされているのだ(『1巻』ラスト)。ようやく あちらが自分に追いついたぐらいの心構えで いればいいのに、と思ってしまう。大和の好意が あからさまだから不安になる気持ちに共感できない部分があった。