《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

当て馬・高嶺といる時に シャワーを浴びる展開が3回目で 既視感に困ってます。

兄に愛されすぎて困ってます(8) (フラワーコミックス)
夜神 里奈(やがみ りな)
兄に愛されすぎて困ってます(あににあいされすぎてこまってます)
第08巻評価:★★(4点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

ねえせーちゃん。僕にとってきみだけが運命の人です。どうして僕の脈拍が早いかわかりますか? それはきみに恋をしてるからです。はるか君がきみを泣かせるなら、僕がきみを奪います―――。
はるかと遠恋中のせとかに、最強の幼なじみ恋敵・芹川高嶺が再アプローチ!? 血の繋がらない兄×妹 はるかとせとかの恋のゆくえは・・・!? 刺激的に愛されまくり▽兄系イケメンLOVE!!

簡潔完結感想文

  • おそらく5秒程度の浮気に見える行動を相手が偶然 目撃する展開が2連続!
  • 偶然 同じ場所で浮気。そして無警戒ヒロインのシャワーシーンは計3回目!
  • 10時間以上の爆睡と朝チュンにより立ち消えになったはずの婚約の2回目!

者の才能の枯渇が露呈している 8巻。

まず最初にツッコませて頂くと、せとか どんだけ寝てんだよ!

『8巻』では衝撃的な「朝チュン」シーンがあるけれど、その時間経過が謎過ぎて むしろ そっちに気を取られてしまった。

シャワーシーンは勿論、何回目かの男性の前で眠っちゃう展開は せとか の恋愛テクニック。

この朝チュンの前日、せとか は高嶺(たかね)と待ち合わせをして横浜デートを楽しんだ。この日の待ち合わせは遅い場合を採用して午後3時としよう(下手すりゃ午前10時だろう)。その直後に はるか の浮気現場を目撃し、カフェへ逃亡。そこで高嶺と話して時刻は午後4時。タクシーに乗り高嶺の家に到着したのが午後5時。彼の部屋を片づけてシャワーを浴びて午後6時。そしてシャワーを出たら なぜか せとか は寝ている。そこから作中が最も朝の早い夏至付近だと考えても「朝チュン」するのは朝5時台だろう。11時間 寝てるね。午前10時集合なら16時間睡眠かな…?

あと この日は全員 半袖~五分袖で行動してるけど、はるか の転校から それほど時間が経っていなくて まだ5月頃ではないだろうか。

こういう1日のスケジュールとか時間経過とかを考えられない作家さんは想像力がないとしか思えない。こういう細かな想像力が作品に厚みを与える。そして それは作品への愛であり作家に必要な資質だと思う。少女漫画は溺愛を描いていれば成立する訳ではない。


週誌「Sho-Comi」での連載は大変だろうけど、序盤に比べると どんどん作品の質が落ちている。内容も再放送だし、話の運び方も どんどん下手になっている。やっぱり初期の構想で連載を終わらせた方が良かったのではないか。

おそらく実写映像化がなければ本書は もっと早く終わっていただろう。どういう意思決定がなされているのか私には分からないが、実写化にあたってヒーロー・はるか の最強ライバルになったのは高嶺だった(実写作品を見ていないので飽くまでクレジットや知名度による想像だけれど)。そして高嶺は漫画本編でも せとか の実兄という立場から当て馬へとスタンスが変更された。これによって高嶺は作品内でも重要性を増し、これまでの当て馬と違い彼にだけ2回目のアタック権が与えられることになった。この高嶺の2回目のアタックは丸々 割愛してもいいと思う。それぐらい意味のないターンだ。

問題は作者にとっても この高嶺の2回目のアタックが想定外だということ。序盤は千秋(ちあき)が登場し、彼が敗退したことで千夏(ちなつ)が暗躍するという連鎖性があったが、高嶺の2回目の登場は連載の延長のため という理由ぐらいしかない。

そして執着心の強い男・はるか がヒーローの本書において、当て馬が活躍できるのは彼の不在時のみ。はるか は転校という名の左遷となり、物語から追放された状態ではあるが、毎日 連絡を取り合い2人の交際は順調だった。そこにヒビを入れるために、作者は偶然を何度も利用する。『8巻』の中で せとか または はるか が異性といる場面を互いに作り、しかも それが浮気のように見える その一瞬を逃さずに目撃させている。

そこから学習能力のない せとか の高嶺との接近は続き、上述の よく分からない深い深い睡眠が始まる。前作『制服でヴァニラ・キス』でも一瞬で服が脱げる謎現象が起きていたが、今回も せとか が一瞬で寝るのは珍事だ。↑の画像では本棚の位置から考えて、せとか は高嶺の横を通り過ぎて、彼の気づかない内に眠るという瞬間移動と時間経過をしている。高嶺が しばらく意識を失っていたのか?と考える方が自然である。
おそらく作者は連載を続けながら話を作れるタイプじゃないのだろう。だから どれだけ作品が売れても連載の延長を試みてはダメなタイプなのではないか。せっかく180万部以上売れても、その時には既に作品の面白さピークアウトして、ツッコみどころが多いのでは作者も読者も不幸である。


神(ひめがみ)に、禁断の恋愛を脅迫される はるか だったが、幼稚な せとか と違い、彼は自力で困難を解決する力を持っていた。せとか に害が及ばなければ噂は怖くない。それどころか噂が広まることで女除けになると考えていた。

そして姫神は はるか に興味があるのではなく、同じような禁断の恋愛関係である担任教師の興味を自分に惹きたかった。だが担任教師は姫神を守るために別れる。少女漫画の男性って この間違ったヒロイックな思考が多すぎる。

はるか は恋をする姫神を心理に理解を示し、協力して担任教師の前でラブシーンを演じようとする。だが、その場面の目撃者は担任教師と来校してきた せとか の2人だった…。

この時、せとか は千夏が謎のルートで入手した はるか の高校の制服を着て、この学校に忍び込んだのだ(本書は軽犯罪が多い)。ちなみに地元と はるか の学校の距離は電車で2時間半らしい。はるか が どんな反応をするかという期待を胸に あと数メートルの距離まで近づくが、そこで見たのは はるか のラブシーン。はるか たちの担任教師にもバレて はるか が気づく前に学校を後にする。

その後に はるか から かかってきた電話で真相を探ろうとすると彼は嘘をついた。これは『2巻』で はるか が千夏と一緒にいる時に嘘をつかれた時と似たような状況だ(その時は千夏が女装男子だと知らなかったからだけど)。

偶然の目撃より、せとか が はるか の妹だと一瞬で判別できるロリコン担任教師がヤバい!

うやって とんでもない偶然と嘘で2人の間に出来た隙間が当て馬の入る余地となる。
どん底に現れるのが高嶺。彼は せとか の2つ年上、はるか よりも1つ年上だったらしく、今年度から大学の医学部生になっているらしい。それにしても兄系イケメンたちが自分の通う学校の美人生徒に興味ない描写によって間接的に せとか の価値を上げようという狙いが透けすぎている。別の人で同じことを繰り返さなくても。

高嶺が突然 現れたのは ここが彼の通学路だから、という説明が一応ある。せとか の目が赤いこと、違う学校の制服を着ていることを目ざとく発見した高嶺は、それを口実に彼女を自宅まで送る。せとか は婚約破棄みたいな形になった高嶺に負い目があり、会うのは気まずい。千秋(ちあき)の連絡に返信しなかったり、せとか には一応 当て馬たちと距離を取ろうとする意志が見える。

帰路で高嶺は改めて自分にとって せとか が「運命の人」であることを強調する。そして強固な絆で結ばれている兄妹の雲行きが怪しいと幸下高嶺は最後のチャンスと懇願して横浜デートを申し込む。同じ人に二度アタックするのは本書で初で、高嶺にだけ与えられた特権だ。


一方、はるか も姫神から協力の お礼として横浜に出掛けることを提案されていた(わー、偶然ダナァ)。それぞれ異性と横浜で会うことを相手に秘密にしたまま一日が始まる。

高嶺と合流した直後に せとか は、はるか と姫神を目撃してしまう。真実を知るのが怖い せとか は はるか から逃げる。またも精神的に落ち込んでいる はるか に高嶺が不器用な優しさを見せることで、せとか は心が軽くなったと感じる。この時の高嶺は最後までジェントルなのだが、2人の顔が接近した時に はるか が その場面を目撃してしまう。高嶺は せとか の涙を拭っただけだった。
はるか の学校の時もそうだったが、その わずか3秒ぐらいの決定的瞬間を目撃する、という ご都合主義が虚しい。

せとか の心や涙と呼応するかのようにゲリラ豪雨に見舞われ、電車がストップ。そこで高嶺は一人暮らしをする自分の家に はるか を招く。無警戒な せとか は高嶺の家に入り、家事初心者で乱雑な部屋を見て、片付けを始める。彼女の家庭的な一面を見て、高嶺は結婚を意識するのだろう。
妙齢の男女が一緒の部屋に入った時点で状況的には黒だろう。せとか は、されたら泣きわめくようなことを平気でするダブスタ女だから全く好きになれない。この後の話の展開のためとはいえ せとか の圧倒的な不人気は作品にとって致命傷だろう。


付けが終わってから謎のシャワータイムが始まる。雨で気温が下がり、身体が冷えたのなら最初に、と思うが、高嶺の前でのシャワータイムは3回目なので今回は帰宅後すぐ というパターンから逃れたかったのだろうか。

せとか のシャワー中に、高嶺は、はるか と同じ学校に通う弟から彼の噂を集めていた。目撃情報から はるか を黒だと判断した高嶺は せとか の奪取を心に決める。人は信じたいものを信じるのだろう。

この後、せとか はシャワー後に謎の爆睡を始める。高嶺が目の前にいて なぜ急に眠ったのか、眠るまでの経緯が全く描かれていない。せめて高嶺がシャワー中に寝たとか、そういう説明描写は入れられなかったのだろうか。場所もワープしてるし寝てるしで話が繋がっていない。


うして せとか が無防備に寝ていることで高嶺はセクハラを開始。本当に本書の男たちは下衆(ゲス)だ。兄系イケメンではなくクズ系イケメンではないか。

翌朝、朝チュンで目を覚ました せとか は全裸になっており、それで彼女は自分が高嶺と性行為に至ったと思い込んでしまう。泥酔とか昏倒とかなら いざ知らず、ただの睡眠で全部 終わってたら変だろうに。幼稚すぎて絶句する。そして高嶺は せとか の誤解に乗っかって彼女は快楽溺れたという設定にする。高嶺は性格が悪すぎるし、せとか は頭が悪すぎる。寝ている間に自分が相手を求めると考えるか、普通。


変わらず姫神は担任教師の個人情報ファイルを見ている設定で、せとか の浮気相手である高嶺が在校生の兄だということに気づく。

そして高嶺の弟を呼び出して、高嶺と せとか が正式に婚約したことを聞き出す。そして高嶺は せとか との結婚に乗り気な両親まで巻き込んで、この日に結納をすると言い出す。
それを知った はるか は、おそらく せとか のことで悩み過ぎて体調不良であるにもかかわらず、結納が行われる会場に向かう。心理的にも状況的にも自分が裏切られたかもしれなくても、はるか は自分の恋心を貫き通そうとする。