《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

読解力のない世界史教師は女性の本心を読めなくて、ただ甘えさせてくれる若い女に走る。


相原 実貴(あいはら みき)
青天大睛(せいてんたいせい)
第03巻評価:(2点)
 総合評価:★☆(3点)
 

片寄(かたよせ)先生の妻・燿子(ようこ)のヨコヤリで傷つきまくりの亜子(あこ)に、先生が「特別な女だ」と言ってくれた! だけど、そんなハッピー気分もふっとぶ事件がまたもや発生。合宿以来不登校だったタイジと、夜の街で遭遇したのだ。2か月ぶりのタイジは、見た目も中身も別人みたいに変わってて…。一方 片寄先生は、亜子とタイジの急接近にフクザツな表情。しかも燿子の陰謀でおかしな噂を流された亜子は、友達からも誤解され…。亜子の恋はやっぱりダメになっちゃうの? スクール・ラブ・ウォーズ、最終巻!

簡潔完結感想文

  • ライバルが現れても、本人に一線を引かれても あきらめないことがヒロインの条件。
  • 1話で亜子たちが、18話でタイジが変身。どちらの女性に暴力を振るう男が お好き?
  • 1年後に諸問題を解決してハッピーエンド。父親を失った子供の悲しみは敢えて無視。

トナ男子だけど軽率な自分の行動の責任を取らないタイプの人間、の 最終3巻(文庫版)。

もしかしたら本書は「家」の重圧に壊れる3人の男性の物語なのかもしれない。その3人とは過去における片寄(かたよせ)、現在のタイジ、そして未来においてメンタルが不安定になることが確定的な潤(じゅん)である。

この最終巻で、なぜ片寄はタイジの境遇と心理状態に理解を示すのかが分かった点は『3巻』で数少ない面白いと思った部分だ。タイジの二重人格や彼の粗暴な行動は全て片寄が通ってきた道なのである。だから片寄はタイジに暴力を振るわれても怒らないし、逆に それを騒ぎにしないように努める。それは同じく「家」への反抗期にある自分だから分かることで、殴られることよりも殴ってしまうタイジの心の方が痛みを訴えていることを片寄は知っている。

そんな心が壊れている3人に聖母のように接するのがヒロイン・亜子(あこ)である。亜子の純粋な好意に触れて片寄にとって亜子は特別になるし、タイジにとっては亜子の存在が自分の性格を修正する動機になっている。そして潤に対しても亜子は彼の苦痛(服の染みや膝の怪我)を除去する存在として描かれている。彼らにとって亜子は聖母なのである。

片寄とタイジは魂の双子と言える存在で、だからこそ同じ女性に惹かれて彼女を奪い合う。でも彼らは「家」から逃れることを人生の第一目的にしているような節がある。そして自分の願望が叶わないなら/願望を邪魔されるなら 女性を殴ることも厭わないという器量の小ささが共通点である。盲目的な亜子はともかく読者は最終巻で2人の男性の どちらもDV男だと判明して嬉しい訳がない。

せめて、せめて片寄には二度と人の親になって欲しくない。そう願わずにはいられない最終巻。

もそも どう切り取っても、第三者から冷ややかに見ると、ヒロイン・亜子は完全に不倫をして相手の家庭を壊し、家族から夫や父親を奪略した女でしかない。本人たちは純愛を貫いたつもりなのだろうが、こういう恋愛が楽しいのは最初だけだろう。この恋をドラマチックだと思えるのは2人だけ。
最終回は本編から1年後の様子を描いているが、これが10年後も同じように相手に心酔できているかは怪しい。亜子は若すぎて10歳年上の片寄が魅力的に映っていただけだし、片寄は下手をすれば亜子よりも幼稚で身勝手な人間なので、相手に少し違和感を覚えたら、もう亜子への愛情なんて全て捨てられるような人間としか思えない。そのぐらい片寄の身勝手さが全編に亘って繰り返されている。

本書が一方的な物の見方しかしないのが分かるのが1年後の報告である。片寄は妻との離婚が成立したことを発表し、亜子は一応はマネージャーを続けているらしいバスケ部の様子を片寄に伝える。離婚成立と亜子の18歳という区切りで本書は2人の関係性を一歩進めるのだが、亜子と片寄は自分の行動の裏に泣いている人たちの存在を無視する。


れが片寄の家族たちである。特に息子として接していた潤(じゅん)の存在をなかったことにすることで、物語を濁らせないように努めているのが卑怯で、また本書が表層的な愛しか描いていない証明になっている。片寄は籍を入れていた燿子(ようこ)の一家への恩義から潤を息子として認知しようとしていた。だが彼は人生の中で2回 潤の存在を否定する。

1回目は潤を妊娠中の燿子との結婚式。お腹の子が自分の子ではないという事実があるとはいえ、彼は本意ではない結婚から逃げ出し燿子を結婚式会場に1人にするという仕打ちを浴びせる。こうして潤は父親がいないまま4年以上の日々を過ごす。そして片寄が燿子の家に呼び戻されてから片寄は潤の父親役を演じ始める。本人も「父親ってのも悪くないかって思っ」て2年間 潤との時間を作るようになった。だが その片寄は燿子とは違い自分を甘やかしてくれる存在=高校2年生の亜子に出会って、自分の望まない人生をリセットしようとする。

片寄は、潤に対する中途半端な態度に対して詫びも反省もなく、潤の人生をまた狂わせる。父親がいないことで名門小学校内でイジメを受けている潤は、完全に父親を失って どうなってしまうのだろうか。イジメから脱出できる環境で支えてくれる人もいないまま親の都合で振り回された子供。それは過去の片寄であり、現在のタイジである。つまりは潤もまた2人のように どこか壊れた大人になることが本書の絶対的な運命のように示される。周囲の大人の期待に応えようとして無理をして、そこから性格や人格が壊れていくのだろう。10年後の亜子たちが幸せに暮らしているかは疑わしいいが、反対に16歳となった潤は荒れた生活をしているのは確定的だろう。

そもそも片寄は燿子の本心に気づかない時点で人を見る目がない。亜子もそうだが相手がどう思っているのかを考えないで軽率な行動に出るから間違えるのだ。中途半端な自分が傷つけた「家族」たちに対して何の責任も負わず片寄は浮気相手の若い女と幸せを満喫している。そういう終わり方に幸福感は全くない。


想文を書いていて思ったが、結局 片寄にとって亜子は契機に過ぎないのではないか。中学時代の両親の事故死以降、息の詰まるような環境で育った片寄は自分の思い通りになることなんて何もなかった。「家」から離れても、簡単に家の力で呼び戻されてしまう片寄。生き方も「結婚」も縛られていた自分の前に現れた、無知ゆえに純粋な存在に見える亜子。だから片寄は亜子を特別だと感じてしまった。そして彼女を理由に これまで出来なかった家や職業との断絶を画策する。

そう考えると本書は片寄の長い長い反抗期の話にも見える。中1で遺児となった自分を引き取ってくれた恩義で、一番 多感な反抗期に我慢を強いられてきた片寄。しかも自分の優秀さが認められず、夢も奪われたことで彼のストレスは、間接的に「家」と言う集合体に向く。そして義父や義兄には向けられない感情は、主に義妹であり妻となった燿子にぶつけられる。こういう部分も片寄が女性という弱い立場にしか反抗できない最弱の存在だということを示している。燿子を捨て、彼女に恥をかかせることで片寄は「家」に間接的に反抗する。

そして家を離れた一時的な解放感の後、2年前に連れ戻されてからは周囲に不機嫌を撒き散らす。教師や顧問として学校内に責任を持ちながら不機嫌かつ無気力で周囲に気を遣わせる。そういう幼稚な投げやりさの中で自分を認めてくれたのが亜子だった。亜子の世界が狭いから片寄が完璧に見えるだけなのだが、亜子に心酔され崇拝されることで片寄の自尊心は満たされていく。

そして亜子が、片寄にどんな背景があっても人生を随行してくれる一途さを認め、自分1人では出来なかった「完全なる反抗」を再度 試みる。片寄が必要だったのは亜子ではなく、行動する理由と、孤独を支えてくれる存在だったのではないか。1人で何かを決断し、それを実行できる胆力と責任を背負うのが大人と言うならば、片寄はずっと子供のままだと思う。1人では失敗した家から離れる親への反抗を今度は10代の少女と一緒に手を取り合って試そうとする滑稽な存在だ。その裏で、上述の通り、自分が引き受けるはずの潤という息子の存在を黙殺している。少女漫画ヒーロー史上 最低の部類ではないか。

きっと片寄は今後の人生において身勝手に人を傷つけた報いを受けるのだろうな、そうあって欲しいな、と思いながら本を閉じる。


宿でしか会わないと思っていた片寄の「奥さん」・燿子が亜子の学校に乗り込んでくる。交換研修で2か月間 この学校で授業を担当するらしい。

そんな息苦しい状況の中、亜子は「タイジ」という人物が渋谷の街で暴れているという情報を知り、同じく彼を気にかける片寄と一緒にタイジの家を訪問することとなる。でも2人の再接近を快く思わない燿子が釘を刺しに登場して、嫌味で亜子をフルボッコにする。しかしヒロインのピンチに現れるのが片寄で、亜子のことを「特別な女だ」と言ってくれる。

しかし彼らが自宅を訪問する前にタイジの母親が来校し、彼の現状を担任である片寄に話す。ちなみにタイジの名前は漢字では「泰地」と書くらしい。その会話を廊下側から盗み聞きしていた亜子は母親の一方的な言い分に違和感を覚える。なのでタイジに会える可能性に賭けて、亜子は渋谷に繰り出そうとする。亜子を心配する片寄が同行を申し出るが亜子はそれを拒否。亜子としてはタイジが悪いことをしているのなら、片寄(学校側)に知られたくないという配慮なのだろう。でも これまでの言動から見ると片寄はタイジのことを理解して行動してくれていると思うのだが、亜子には「読解力」がないから単純にしか物事を考えられないようだ。
こうして亜子が自分を拒絶したのがショックなのか、片寄はバスケ部員の沖野(おきの)も同席しているのに、嫉妬を丸出しにした幼稚な発言で亜子を傷つける。女性の気持ちに配慮できなくて自分の勝手に行動するのが片寄と言う人間である。


局、1人で行動する亜子が夜の街でトラブルに巻き込まれそうになるが、それを助けるのは変身したタイジ。合宿以来2か月ぶりに会う彼は すっかり身長が伸び、大人っぽくなっていた(もうジャニーズ系とは言わせない)。1話で亜子が茶髪ギャルから黒髪へ、片寄がメガネ教師からイケメンに変貌したように、タイジも最終形態に進化したようだ。

2か月間での劇的メタモルフォーゼで容姿・身長が片寄に並んだタイジ。トラウマも互角。

だが自分をフッた亜子に恨みがあるからか、彼は亜子にも平気で手を上げるような男になっていた。
亜子と再会してからタイジは学校に登校するようになるが、部活への迷惑や先輩への態度でトラブルになる。そこに現れるのがヒロイン・亜子(お前も部活に迷惑かけ続けているけどな)。亜子の聖女っぷりにタイジは一瞬 顔を赤らめるが、今回も彼女を突き飛ばす。

タイジを救えなかった上に、亜子は燿子の負け惜しみの嫌がらせによる囁きを信じてしまいショックを受ける。燿子が目の前にいる限り、片寄が彼女と別れられない運命がちらつくばかり。その現実から逃避のために入った部室にはタイジがいた。彼は亜子への思慕と絶望が入り混じっているようで、強引に彼女を手に入れようとする。そんな部室内の情事に聞き耳を立てていたのは燿子。そして彼女は問題が大きくなるように職員室で部室のことを話し、教師たちを引き連れ戻ってくる。

部室で亜子とタイジを発見するのは片寄だった。タイジの服装が乱れていたことから破廉恥事件として扱われ、2人は指導室に連行される。今のタイジは亜子を壊してたくてたまらない暴力衝動に支配されているから、まるで燿子のように片寄にとって亜子は特別なんかじゃないと彼女を絶望の淵から突き落とす。


れど指導室ではタイジは かつての天使の片鱗を見せる。亜子を庇うような言動を見せたり、亜子に対して「亜子さん」と呼び方を戻したりしている。タイジは指導室からの脱出を試みる。そして亜子も片寄と燿子が一緒にいる場面を見たくない、という気持ちだけで彼に付いていく。本当に自分勝手で頭が悪すぎて唖然とするヒロインである。

この脱出情報に不安になるのが片寄。彼もまた愛が持続するという自信がないのだ。一方で燿子は この騒ぎに乗じて亜子を炎上させようとする。亜子をアバズレ扱いして、自分の夫である片寄も誘惑していると事実と嘘を混入させた良質な燃料を投下する。

亜子がタイジと向かったのはタイジの実家。そこで亜子はタイジの家の事情を知る。どうやらタイジの家は名家(大病院の院長)だが、彼の母親は後妻で、タイジには異母兄が存在する。異母兄は、後妻を「女」使って家に入り込んだ者として扱い、その女の息子であるタイジにも冷淡。タイジが荒れる土壌は この家の空気にあるのだろう。途中で亜子のPHSに片寄から連絡が入り、フォローすると言ってくれているのに、片寄に向き合いたくないから彼を拒絶する。それが片寄にタイジとの接近や恋心を疑われると考えないで、亜子は目先の平穏のためだけで行動する。


裕のない片寄は燿子の悪質な行動に腹を立て、片寄を媚びるように責める燿子に対して暴力を振るう。燿子は殴られても仕方ないほどの行動をしたけれど、やっぱり男が女を殴るのは少女漫画ヒーローとしては相応しくない。悪役が退治された場面なのだろうが爽快感がまるでない。

やっぱり亜子は面倒くさい女で、タイジに家に迎えに来た片寄が少しも感情を乱していないと知ると涙する。以前もそうだったが、この場面、片寄の周囲には亜子の母親や教師たちがいる。そこで片寄が亜子を「特別扱い」したら そこにまた問題が発生する。彼は大人としての振る舞いを優先しているだけなのに、亜子は表層上の問題しか見ていない。本当に頭が悪すぎて憎しみさえ湧いてくる。

この一連の騒動で亜子は3日間の謹慎処分となる。この日の夜、亜子は片寄から電話をもらう(なぜか家の固定電話に)。そこで片寄は亜子に再度 一線を引く。これは亜子にとって絶望そのもの。片寄の気持ちがいまいち分からないが、亜子のタイジとの一連の言動を見ていれば片寄も絶望したくなるのだろう。互いに相手を傷つけて、そして自分だけが傷ついていると思っている迷惑なカップルである。


望の中にいる亜子を、この辛い現実から連れ出そうとしてくれるのがタイジ。彼は自分が家に出ることを宣言し、そして辛いのなら亜子も同行しないかと提案する。これで心が安らげる場所に行ける。その提案は亜子にとって悪くないものだった。

だが亜子は片寄を選ぶ。それを証明するため謹慎中にもかかわらず片寄の家を訪問し、そして彼だけに愛を誓う。こうして最大の窮地に自分で立ち上がって、強いヒロインとなった亜子。

その強さは片寄に影響を与え、彼は燿子や、自分を育ててくれた燿子の実家ではなく、亜子を選ぶ。亜子の家に向かい、そこで初めて「すき」という言葉を伝える。2人とも覚醒したので、後は事後処理みたいなものか。

そこに駆け落ちの約束のためにタイジが現れ、三角関係の最終決戦となる。今回は片寄も覚醒状態なので、タイジの心をえぐるような言葉で彼の精神を分析する。これでタイジは無力化されて あっという間に決着がつく。三角関係を引き延ばした割には呆気なかった。一応はオトナ男子である片寄が本気を出せば こんなものなのか。ちなみにタイジの心を救うのは亜子の弟・克巳(かつみ)。何だかんだでタイジは堂本(どうもと)姉弟(きょーだい)のDNAに弱いのではないか。


子は片寄に連れられ、彼の車に乗っていた。どうやら『1巻』でも そうだったが、車内だけが片寄が片寄でいられるスポットらしい。だから片寄は自分の半生を亜子に語り出す。中学1年生の時の両親の事故死によって片寄の処遇を巡って親族が争っている際に、遠縁でも父の親友だった燿子の父親に引き取られた。そこで燿子とは兄妹のように育った。
そこから片寄は家のため、新しい父親のため努力をしたが、その結果、この家の長兄よりも優秀になってしまい義父から疎まれてしまう結果になった。実は弁護士志望だったが、引き取られた家の面子のために教職を選ばされた(片寄も「仕返し」をしたらしいが)。

その後、燿子が当時の恋人との子を妊娠し、彼女の家は片寄を担ぎ出して、円満な出産を演出しようとした。だが式の当日、片寄は現れなかった。それから燿子の家と無縁の生活を送っていたが2年前に見つかって戻ったという。この時点で随分と甘ったれた覚悟と行動だと思うが、亜子は それにも片寄の理由があると彼を擁護する。

そして片寄は亜子を自宅に招く。それは教師と生徒ではなく、ただの男女として。んー、でもね形式上は既婚者だよ彼は☆


2人の進展を阻もうと、もう一つの三角関係の一角、燿子は片寄を捜していた。自己憐憫をフルパワーで発揮して沖野を篭絡しようとするのだが、沖野は それを拒絶。彼は ぽっと出の燿子という「奥さん」より、中学時代から世話になっている片寄を信じたみたいだ。

やがて片寄の家に沖野と共に燿子が現れて、もう1つの三角関係の最終決戦となる。といっても亜子は先に帰され、ここは大人同士の話になる。もし亜子がいたら根拠なく片寄を擁護して話が進まなかっただろう。ただし片寄が完全に亜子を選んだことは燿子にも伝わる。亜子の笑顔が勝者の証である。

亜子は一緒に帰された沖野から片寄から聞けなかった過去を聞く。沖野の片寄への不信の1つだった大事な試合に現れなかった日の真相は、その日が片寄が燿子の家に連れ戻された日だったからだと燿子の情報から判明する。そして謹慎明けで仁科(にしな)も亜子の奮闘を認めることで、自分の過去の恋を含めた片寄への複雑な感情をリセットする。仁科こそヒロインだよ…。

そしてタイジも克巳の尽力によってバスケ部に戻ってくる。これでバスケ部は元通り。


が燿子が学校側に全てを話したため片寄が転任することになる。それは燿子の最後の復讐だろう。

その前に片寄は離婚届を持って燿子の家に行っていた。それは家族の崩壊を意味しており、その引き金は亜子と言う存在。その話を聞いて亜子は「そんなこと考えてなかった」と言い出す。燿子はともかく潤とは交流があって、片寄との関係も知っているのに、そういう発言をする理解力のない亜子に唖然とする。

転任騒動を知った亜子が、学校で不用意に片寄に近づこうとするのも頭が悪すぎる。今 片寄に接近することは「迷惑」そのものなのに、彼女は軽率な行動を取り続ける。それを亜子に教えるのは片寄から彼の心情を全て聞いたタイジだった。片寄は自分の全てを捨てて亜子を選んだのだ。


れは燿子にとっては想定外の事態。だから彼女は何が片寄を動かしたのか亜子に事情を聞く。そこで燿子が知るのは亜子と自分の差。亜子は純粋に片寄を愛し、彼に何度も好きだと言った。それが好きなのに好きと言えなかった耀子との決定的な差だった。でも燿子が あの家の娘である限り、どうあっても片寄は燿子から逃れようと画策しただろう。それほど彼の反抗期の衝動は強い。

片寄を発見した亜子は彼と体育館の倉庫で話す。片寄は「今までのオレ全部」と亜子を天秤にかけて後者を選んだだけと亜子に伝える。こうして夫でも教職でなくなった片寄に問題はない、というのが本書の結論みたいだ。

1年後、片寄は塾の講師になっていた。仕事の関係で片寄の住居は離れてしまったが2人は週に3日は会う関係。そこで この1年間でのバスケ部の変化が語られる。片寄の方は離婚が成立。この日は亜子の誕生日で彼女は18歳になった。だから もう教師でない片寄は亜子を初めて家に泊める許可を出す。2人だけが幸せなハッピーエンドである。せめて卒業まで待てなかったのか。この人たちのことなんて、どうでもいいけど。