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少女漫画と小説の感想ブログです

妖怪学園の学校案内は終わり、舞台が次々と移る。それは黒羽最強説の終焉かも!?

ラブ・モンスター 3 (マーガレットコミックスDIGITAL)
宮城 理子(みやぎ りこ)
ラブ♥モンスター
第03巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★(4点)
 

初デートに出かけたヒヨ子と黒羽。なんだかいいムード?…も束の間、迷子になってしまったヒヨ子は悪い妖怪たちにからまれてしまい大ピンチ! 危機一髪のところで助けてくれたのは、夢を食べるという妖怪「獏」で…?

簡潔完結感想文

  • 白カラスの羽に様々な意味を持たせ、ヒヨ子は狙われヒロインで あり続ける。
  • 学園内の新キャラが出尽くしたので、新たにライバル校とライバルキャラ追加。
  • 横の広がりだけでなく、親世代の登場で縦の広がりも用意して 最強キャラ乱立。

を交換した時点で恋愛漫画的には最終回、の 文庫版3巻。

今回のタイトルにした通り、これまでの2巻では新入生のヒヨ子(ひよこ)が妖怪学園の様々な場所や人に出会ってきたが、この『3巻』からは新たな地平が用意される。ここからは別の学校や海外、別世界と舞台が次々に移って、そこでのヒヨ子と黒羽(くろう)の活躍が描かれることになる。そして学校を離れるということは黒羽の特別性が失われることでもあろう。学校内最強の生徒会長として君臨してきた黒羽だが、学校外では井の中の蛙。決して最強ではなく彼が一瞬で問題を解決することは少なくなる。この後は黒羽だけじゃなく、2人の力を合わせて問題を解決する展開が多かったように思う。

学園ラブコメという狭い世界の閉塞感や既視感から脱するために、舞台を動かして、新キャラと新鮮な気持ちで物語を進める。こうすることで読者を飽きさせないようにする作者の狙いがある。
まぁ 舞台が移っても内容は変わらないのですが…(笑) ヒヨ子が新天地でイケメンとお知り合いになり、彼女が気に入られた頃に黒羽が遅れて到着。そこで黒羽(またはヒヨ子)が能力を見せつけて解決。2人で学園に帰る、という ここまででも何回か繰り返されてきたパターンである。

ハッキリ言ってヒヨ子と黒羽の関係は もう変わらない。2人は互いに相手が大切な存在であると気づいているし、今回で羽の交換というカラス天狗にとって、人間における結婚指輪の交換のような儀式を行っている時点で恋愛的には終着点に辿り着いている。

在校生ではない妖怪が この学校に来校し、そしてヒヨ子たちを別のステージに連れていく。

それでも お話を面白く読めるのは新しい世界には新しい背景が用意されているからだろう。それぞれの舞台には個人の事情があり、世界の成り立ちがある。その中にヒヨ子と黒羽が闖入することで、彼らが その世界の問題を知り、解決に動き成長していく。
大体 単行本にして1巻ちょっとの分量で舞台が変わり、それぞれが○○編と分類できるだろう。もう これは同じ集英社の「少年ジャンプ」の世界である。少女漫画なのでバトルシーンは短いが、人気が落ちるまでオムニバス作品のように新しい場所で新しい物語が続いていく。

唯一、違いがあるとすればヒヨ子の白カラスとしての成長度合いではないか。ここにグラデーションがあって成長と覚醒が見られるから、最後の とんでもない内容になっても そういうものかと納得できるような気がする。今回の連載では物語を貫く「縦軸」が最後まで存在しているから少女趣味でも厨二病全開でも読んでいられる気がする。そして繰り返しになるが連載として面白さを確保し続けているのが単純に凄い。


カラスであるヒヨ子の羽には 何でも願い事がかなう という特性が付与される。これによってヒヨ子は より多くの人に狙われることになるのだろう。

黒羽の自己犠牲の精神によって、ヒヨ子は彼に確かに惹かれる気持ちを自覚する。そんな時に起こる初デートイベント。この時、黒羽はヒヨ子の身の安全の為、自分が無理やり連れて来た この世界からの帰還を提案する。だがヒヨ子は明確に拒否。黒羽のそばにいたいという告白のような言葉を引き出した。最初はハチャメチャだった関係だが、互いに相手を思い遣る気持ちが確かに生まれている。

告白めいた言葉を使ったヒヨ子は逃亡し、妖怪のショッピングモール内で迷子になる。そこで悪い輩に絡まれそうになった際に現れるのが新イケメン。彼は夢を食べる獏の妖怪だった。その後、教師になって学校内にも登場するが彼の登場は1回きりだったような気がする。毎度 似たような顔とは言え、せっかく考えた新キャラの使い捨て状態である。全員の顔を並べて誰が誰だか分かる人は いるのだろうか。


うやら学校内のキャラは出尽くしたようで、新しい展開のために この学校以外の妖怪学校が登場する。

そこで新しい学校を登場させるために、生徒会の交流行事が始まる。唐突に始まるライバル校との意味不明なバトルは ちょっと白泉社っぽい(登場キャラも多いし)。
彼女の安全を確保するために黒羽によって自室待機となっていたヒヨだ子が、黒羽と離れたことで誘拐されてしまうのも お約束の展開。いつも何らかの理由で黒羽と離れてから事件が起きる。

首謀者は相手の学校の生徒会長・灰音(はいね)。種族はカラス天狗で、格としては黒羽と同じ。結局、色々な妖怪は出てくるが、まずカラス天狗でなければライバルキャラになれない格差社会である。
灰音はカラス天狗であっても黒い羽ではなく、その名の通り灰色の羽を持っている。この羽の色は灰音にとってコンプレックス。そして羽の色をバカにした奴らを叩きのめすことで灰音は強くなった。醜いと言われても母親だけは灰音が白カラスの末裔だから灰色なのではと言ってくれていた。灰音自身はそれを信じていなかったが、実際にヒヨ子が白カラスだということを知り救われた部分もある。

イケメンのコンプレックスと それを克服させるヒヨ子という存在。まるっきり黒羽と同じ構造である。男性キャラのトラウマを克服させるのがヒロインの役目である。ここで迎えに来た黒羽と灰音は直接対決をせず、ヒヨ子が帰る意思を示し、最後に貴重な自分の羽を灰音に渡す。

最強の男性はヒヨ子の前では弱さやコンプレックスを隠さない。承認欲求が満たされる~。

音の影響は続く。今度は小細工を用意した灰音たちが こちらの学園にやって来る。

ヒヨ子は灰音と、そして黒羽は千夜(ちや)というカラス天狗の女性と別れて座り、それぞれに親交を深める。ここでは男女のライバルが2人同時に襲来した形となる。
灰音は率直にヒヨ子との交際を望み、ヒヨ子が渡した羽と交換する形で自分の灰色の羽を渡す。この羽の交換はカラス天狗にとって「最上級の愛の誓い」らしい。ヒヨ子は知らなかった慣習が、灰音は知っており、その上でヒヨ子に求婚した。それぐらい彼にとってヒヨ子は特別なのだ。

ただしヒヨ子は それが自分が白カラスという存在で好かれているだけで、本当の自分を見てもらえていない感覚を覚える。それは これから出会う人全てに抱いてしまう感情だろう。自分が特別で価値があるから男性が近づく。その気持ちを完全に払拭できるのは、白カラスであることを知らないままであった黒羽だけなのである。


音の騒動後も、千夜は この学校に転籍するという。そして黒羽とは実の兄妹であるという。発育不全から黒羽は早くから祖父の家で育っていたため、自分に妹がいることは今日まで知らなかったという。ただの兄妹であることに安心したヒヨ子だったが、妖怪世界の常識では兄妹の恋愛や婚姻は認められているらしい。千夜からしてみても会ったことのない兄とは思えない男性なので、簡単に恋愛感情が持てるのだろう。

千夜という邪魔者、そしてバレてしまった灰音との羽交換だが、それは黒羽が大人げない嫉妬を見せる前振りでしかなかった。ヒヨ子は灰音の甘い言葉に憧れながら、黒羽から愛情表現を受けると それだけでウットリしてしまう。これが女性の幸せなんだろうけど、頭がからっぽな恋愛をしているようにも見える。

ヒヨ子と黒羽が羽交換した時点でハッピーエンドでも良かったが、物語は続く。しかもヒヨ子は まだ妖力が弱いために、羽も身体から離れると すぐに消えてしまう。本当のハッピーエンドはヒヨ子の覚醒後となるのか。
こういう儀式を用意したのなら最終回に、羽の交換などすればいいのに、作者はそういうことを忘れがち(それが出来ない状況になってたけども)。『花になれっ!』でも指輪を渡さないままだったしなぁ…。


突に妖怪学園で授業参観が行われ、それぞれの親族が登場する。これも新キャラ召喚の儀式と言えよう。
それぞれの親同士は同級生・同窓生らしく旧知の仲。同じ種族ではない者が結婚したりしている場合もあるが、そうなると一気に種族存亡の危機なんじゃないだろうか。

そして学校に来ないと思われていた黒羽の両親が来校する。これは千夜の差し金であった。黒羽の母親は「闇夜の巫女」、そして別名「狂気の巫女」と恐れられている人。彼女は未来を見る力を持つ最強ランクのモンスターらしい。

しかし そんな母親にヒヨ子は人間だと冷遇される。それに対して黒羽は自分の大事な人で白カラスだと母に訴える。親族の反対に愛を貫く展開か。その情報に驚くのはヒヨ子の父親。彼は娘の覚醒を知らなかった。ちなみに黒羽の両親とヒヨ子の父親には三角関係があったことが明かされる。

そして頭のおかしい母親によって千夜が黒羽の花嫁になってしまう。にしても千夜は黒羽に惚れたからと言って灰音の羽を侮蔑するような発言をするのが悲しい。当然、黒羽は それに反対するのだが、母の能力によって身動きを奪われる。黒羽をも凌ぐ謎の能力は何に由来しているのか分からないが、こうして黒羽よりも権力と能力を持っている者によって話は進む。