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少女漫画と小説の感想ブログです

庶民の当て馬では帝の恋心を刺激しきれなかったので、隣国の☆プリンスさまっ を召喚。

帝の至宝 4 (花とゆめコミックス)
仲野 えみこ(なかの えみこ)
帝の至宝(みかどのしほう)
第04巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

平民の香蘭と帝の志季は友人関係。でも香蘭は志季に恋心を抱く様になり、ドキドキの毎日? そんな時、留学に来た隣国「録」の王太子・春玉を紹介される。平民に良い感情を持っていない彼と、なんとか仲良くしようとするが…!? ほか読切一編収録。

簡潔完結感想文

  • 男性の新キャラが登場して、三角関係になるかと思いきや 立ち位置は意地悪ライバル。
  • 幼なじみのプリンスによって志季の過去を後付け。これでトラウマの準備は整った!?
  • 誕生回・料理回・花火回と日常回が続くが、暗殺・毒殺未遂の後なのに危機管理に問題あり。

者の都合を優先し、読者に優しくない 4巻。

この巻から隣国の王太子・春玉(しゅんぎょく)が登場する。彼の1人3役以上の役割については後述するとして、まず彼の外見問題から語りたい。春玉は どうしてもヒーロー・志季(しき)と混同してしまうという難点がある。細かく見れば髪型や目の描き方などが違うのだが、2人の男性を一瞬で判別できない。しかも志季と春玉は同じ場所にいる場面が多く、それがより読者を混乱させ、余計な集中力を使わせる。

表紙から登場している新キャラ・春玉。志季とは髪飾り(?)で判別可能。河童・沙悟浄 感が否めない。

作者曰く「本当は髪にトーンを貼る予定だったのですが、この原稿をやっている当時、時間がなかったため、そのまま白になりました…」「しかし髪を描くだけでも だいぶ時間が かかるので貼らなくて良かった気がします。」

いやいや、貼れよッ! 貼ってくれれば読者は余計な混乱をしなくて済み、スムーズに作品を楽しめた。アナログ作業でトーン貼りは大変だとは思うが、自分の手間を惜しんで 読者に不利益を もたらしている。なんで そんなに自分の都合を優先するの⁉

このようなことは本書に収録されている読切短編でも起きている。『1巻』に収録されている読切短編は、魔女と うさぎの人形の話。この うさぎ の人形(ぬいぐるみ だと思うが…)は実は青年男性で呪いが解ける最終盤に男性キャラとして登場する。
このような構成になったのは「男の子を描くのが苦手なので どうやったら描かずに済むかという事に心を砕いて つくった話だったと思います。」というのが作者の言葉。

そして『3巻』収録の読切短編でも、青年男性は目に怪我を負っており目は包帯で巻かれている。「これも、男の子を描かずにすむ工夫に一生懸命ですね。楽をすることに関しては労を惜しみません」というのが作者のコメント。

この2つの話は、ヒーロー的な立ち位置の彼らが姿や目を見せないことが終盤のドラマを生み出していて好きな話だった。だが、作者が少々 冗談めかしてはいるが、苦手なことや面倒なことを回避しようとするのは、春玉の髪のトーン問題と根が同じである。

この巻で出てくる料理にしても花火にしても、作り手が一生懸命 作ったものだから受け手である食す側・見る側の気持ちを動かす。だが たとえ冗談でも手を抜きました、時間が足りませんでしたという情報は受け手に知らせなくても良いことだ。
イケメンの作画を回避するのも、少女漫画読者は素敵なヒーローの姿を見たいのだから、その需要に応えないと言っているようなものである。自分の都合を優先する作者を、それを自分から発表する作者を、読者は好きになるだろうか。答えは否。

春玉の髪トーンの件は、本当にこの作品に、漫画に心血を注いでいるのだろうか、と作者の姿勢に大いに疑問符がつく問題であった。


んなマイナスな印象から入ってしまった春玉だが、彼の役割は大いに面白いものだった。

春玉は1人で何役もの働きをしている。ここで春玉の立場やキャラを用いたのは大正解だろう。

まずは単純にイケメンキャラの追加。隣国の王太子という立場で、本書のヒーロー・志季に唯一 社会的立場で負けていない人である。

そして志季と同年代の幼なじみと言うことで、彼の過去を知る人物として配置され、ここまで あまり語られていない何やら暗い志季の過去があることが示唆されている。

春玉は本書発のヒロイン・香蘭(こうらん)に冷たいキャラとして登場する。ここまで帝の寵愛を受け、自由奔放に応急を出入りしていた香蘭に釘を刺し、志季との身分の差を改めて肝に銘じさせる。

ただ そんな香蘭が春玉と仲良くなりたいとヒロインパワーで彼を懐柔していく様子が、香蘭への読者の好感を更に高めていく。そういう意味では春玉は高貴な踏み台である。

そして香蘭と春玉の接近によって、志季に焼きもちを妬かせる。これまでは庶民の吏元(りげん)が当て馬役だったが、子供過ぎたためか、その役割は春玉が担うことになる。こうして香蘭の逆ハーレムは更に やんごとなき身分の人を加え、ビジュアル的にも補強される。ただし春玉自身が香蘭に好意を持っているとはハッキリとは描かれていない。彼女や志季が理想とする庶民と貴族の壁をなくすということを体現してはいるが、だからといって一気に好意を持って接している訳ではない。


ハッキリ言って私は、香蘭に意地悪を言う春玉に共感した。物語上、仕方ないのは分かるが、ここのところ、香蘭が志季に会いに行きすぎていてウザいと思っていたから。遠慮がなくなり過ぎた香蘭の緩んだ意識を締め直す意味で春玉の存在は ありがたい。

以前も書いたが、鈍感ヒロインがマイペースな上流階級ヒーローに巻き込まれる展開が多い白泉社作品で、本書は全てが逆になっている。鈍感なのはヒーローで、ヒロインが奮闘する。そこまでは可愛い。だが、本書は社会的立場が違い過ぎる。どう綺麗に描いても、平民が帝に下心を持って近づいている訳で、私が宮仕えをしていたら、香蘭のことは目の上のたんこぶだと思っただろう。

香蘭は切ない恋をしているかもしれないが、慎みが無いのも確かなのである。学校モノであれば、女子生徒全員の憧れで不可侵の生徒会長を訪ね、毎日 用もないのに生徒会室に入り浸る人が香蘭であろう。それを快く思わない女子生徒役が、今回の春玉である。香蘭も18歳の女性として見られたいのであれば、本当に大事な用事以外には顔を出さないなどの自制をすればいいのに。本能のまま動いているから容姿と相まって子供っぽく見えるのだ。彼女の理想だけは叶うという贔屓も含め、作品のバランスが悪い。

そうか、私はグイグイの香蘭が苦手なのか、と嫌味を書き連ねて気が付かされた。


国の王太子である春玉は、志季の幼なじみ的存在でもある彼は この国に留学に来ていると言う。

春玉は平民に良い感情を持っていないため、香蘭に厳しい言葉を投げつける人物となる。…が、この後、香蘭が彼を懐柔するのは目に見えている。そして香蘭の方も春玉と一緒に過ごす内に、彼がキツめの言葉遣いよりも優しいことが分かっていく。

幼なじみ的な春玉によって もたらされるのは、志季の過去。かつての志季は冷徹であったが、変わったと春玉は思う。志季の黒歴史が今後、トラウマとして浮上するのかな。ここでは志季の変化の裏には香蘭があるという影響力の大きさも忘れずに描かれている。

ただ春玉は、香蘭のせいで志季の生き方が変わったことを快く思わず、彼女に身を引くことを要請する。そして女性として見られたい香蘭の願いを感じ取った彼は、香蘭にキスをすることで、彼女の欲望を叶えようとする。それを阻止するのは当然、志季。

こうして幼なじみの関係にヒビが入りそうになるが、香蘭が春玉の心を理解し、理想論で仲介する。こうして結局、香蘭の望む世界が構築されていくのは本書の いつもの展開。

ただ相変わらず、帝と隣国の王太子が庶民の料理を食するという平和ボケの内容。以前に毒殺未遂を描いておきながらアンバランスな世界観だ。それに本物の毒だけじゃなく食中毒でも責任問題に発展すると思うのだけど。


いては側近・円夏(えんか)の誕生回。ちなみに30歳らしい。彼は独身という設定なのだろうか。帝の世継ぎ問題も大事だろうが、(いつだか分からないけど)この時代の30歳なんて人生の後半戦だろうに。

ちなみに この話で重要なのは誕生回ではなく、春玉と香蘭の接近に志季が 焼きもちを妬くことと、そして志季の実年齢である。読者にだけサラッと発表されてしまった。これが香蘭に伝わる日が楽しみなので読み続けるモチベーションになる。


玉が転校生として香蘭たちが通う学校にやって来る。貴族の学校にしないことで外交問題にならないかと心配だが、志季の推薦で この学校に決まったという。

ここでは転校生・春玉を交えた日常回が始まる。学食の新メニューを生徒たちがペアになって考案する。平民と貴族がペアになって、審査には志季も加わるらしい(いや、だから毒殺が…)。

香蘭は やる気のない春玉を一喝。だが春玉は志季も料理経験がないと告げ、志季も料理に参加することになり3人グループになる。香蘭は両手に花状態。

だが春玉は自国との文化の違いがカルチャーショックで受け入れられない。そんな彼を優しく導こうとするのが平民の香蘭だからまた彼は混乱する。

ここで香蘭を手で払った春玉は、香蘭に料理をぶちまけてしまうのだが、何が起こったか分かりにくい。春玉の手が料理が盛り付けられた皿を払ったのかな?

香蘭は被害者なのだが、自分が春玉の気持ちを考えなかったと謝る。どこまでも いい子。一時は騒然となる場を、自分のカリスマ性で周囲を落ち着かせる志季も素晴らしい働きをしている。


後も日常回の花火大会。

香蘭は春玉と志季を誘うが、春玉は予定があり不参加となる。しかも志季は いつもの側近2人がいないという。いや、側近がいなくても護衛役は いくらでもいるだろうよ…。

だが当日、集合場所には学校の皆が集まっており、香蘭は志季と2人きりではないことに落胆する。だが志季が身バレしそうになって、2人きりで逃亡。中華風の世界観ながら、やっていることは現代の少女漫画の王道パターンである。しかも芸能人とのデートのようである。考えれば考えるほど設定が変だから、帝は高貴すぎて顔を知られすぎないから大丈夫なのだ、ということにしておこう。

一般少女漫画の お祭り回でも よく見られるパターン。年齢的には高校生同士の恋愛なのか。

2人は帝のために用意された特等席ではなく、一般の客に混じって並んで花火を見上げる。夢での予行演習のように香蘭に告白の雰囲気が高まっても、志季は香蘭を安心する友人としか思っていないことが判明する。香蘭の願いは叶わないことで切ない花火となった。

だが志季は、この日のために仕事を大急ぎで片づけ、時間を確保していたことが分かる。そして香蘭が秘匿していた彼女の恋心を、春玉が志季に伝えてしまい…。こうして春玉の最後の役割が判明する。お節介である。


「姫君の指輪とゆううつ」…
気が合わない幼なじみ・ヨシュアと結婚する運びになった王女・メイ。政略結婚だと分かっていながら結婚するメイだったが、実は…。

両想いのツン・ツン同士のカップルが仲良く喧嘩している お話と読めばいいのか。いまいち楽しみ方も、楽しい場面も分かりにくい話だった。土砂崩れをヨシュアが防ぐ場面も何が何やら分からないし。5年前の この作品に比べれば、本編は格段に画力も お話も向上していることが分かる。それだけが救いである。