《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

自分に対する勝手な噂や悪評で上手くいかない人間関係があっても、笑う赤鬼。

ハニー 1 (マーガレットコミックスDIGITAL)
目黒 あむ(めぐろ あむ)
ハニー
第01巻評価:★★★★☆(9点)
 総合評価:★★★☆(7点)
 

それはまだ中学の頃。雨の中道端に1人の不良が倒れてるのを発見した奈緒ですが、ヘタレのために絆創膏と傘だけ置いて、逃げてしまいます。そして時は過ぎ高校入学。奈緒は偶然にもその不良と再会してしまいます。報復を恐れてビビリまくる奈緒ですが、彼の第一声は「結婚を前提にお付き合いしてください」!?

簡潔完結感想文

  • 不良と噂される男子生徒からの告白は脅迫に思え、ヒロインは彼と交流を始めるが…。
  • 研修合宿で学ぶのは同級生たちとの交流の大切さ。24時間 誰かのために動く大雅が良い。
  • 少女漫画における1人目の好きな人は比較対象になりがち。本当に好きな人は誰なのか。

ステルカラーで塗り絵のように全てのページに色を塗りたくなる 1巻。

絵本のような少女漫画。作者がファンシーグッズを展開したら、その方面でもファンがつくのではないか、と思う可愛いイラストが満載で眺めているだけでも楽しい。

『2巻』までは何度も泣きそうになったし、こんな傑作漫画があるのか!と思った。…が、良くも悪くも本書は『2巻』がピークで、最適な長さであった。もともとは読切短編を基に全10回(単行本2巻分)の短期連載が企画されたらしく、その好評を受けて全40話までの長期連載となった作品。白泉社系の漫画のような見事な出世魚になったが、連載延長で魚としての味は落ちていくのが正直な感想である。私が勝手に考案した少女漫画4分類の中では「Ⅲ類 男女交際型」となる作品で、『3巻』以降は あれこれ作品世界を拡張しようという努力の後は見えるが、結局 定番のライバルたちの登場にページを使うこととなる。

いきなり鬼瀬に告白されて戸惑う奈緒。だが鬼瀬は鬼は鬼でも人と仲良くなりたい鬼であった。

本書の大きな美点は、鬼瀬 大雅(おにせ たいが)という人間の心の大きさだろう。赤髪で目つきの悪いヒーローであるが、彼は本書における男ヒロインで間違いない。どうしたら こんなに深い愛情を持てるのか、と考えただけでも涙が出てくるような存在である。その容姿から周囲に誤解され、それが原因で上手くいかないことに もどかしさや、言いたいこともあるのだろうけど、彼は不満を決して述べない。彼が周囲に降り注ぐのは お日様のような温かさと周囲への愛情だけなのである。困難が多かったであろう15歳の若者が、こんなにも誠実な恋をしていることが涙が出るほど嬉しく思う。

大雅という人を知れただけでも本書は お得だ。更に綺麗で丁寧な作品作りをする作者のことも好きになった。この後の作品も絶対読むだろう。全体的に好感を持った作品ではあるが、以下のように不満を述べようと思えば、いくらでも述べられてしまう。私は本書が好き、という前提で以下の文章を読んで欲しいが…。


ヒロインの大雅が交際を申し込むのが、正式な女ヒロインである小暮 奈緒(こぐれ なお)。奈緒は いい子なんだろうけど、一緒に い過ぎると疲れる雰囲気がある。連載が続くにつれ、大雅よりも奈緒の方が空想上の生き物のように思えてしまう。古い言い方ですが かまとと ぶってるし、ぶりっ子で、作中の友達の心情ではないけれど、もっとハッキリと気持ちを表して欲しいなぁと思う部分が出てくる。長編化で問題となるのは お決まりの展開になってしまったことと、奈緒の性格に疲れてしまった部分があると思う。叔父である「宗(そう)ちゃん」と2人で暮らしている奈緒が、家事を分担しているようには見えず、料理オンチやドジを理由に叔父に任せているのも気になる。そこに努力の痕跡が見えない。作者も そういう奈緒が批判される部分を どうにか改善しようという動きは見えるのだが、「良い人」にするために身動きが取れなくなっている気がした。

そんな奈緒の性格を含めて同じ集英社の雑誌「りぼん」で掲載した方が良いのではないか、という恋愛観と世界観であった。可愛らしい作品ではあるが、過剰に幼く描いている部分もあり、高校生の恋愛描写を期待している人は段々と物足りなさを覚えてくるだろう。「りぼん」で中学生設定なら心を広くして読めていただろうが、「別冊マーガレット」作品にしては恋愛に夢を見すぎな、リアリティのない交際模様となってしまった。また、大雅も含めて、可哀想な境遇の2人を愛でる作品で、そこに自己愛を感じてしまう。また作品内には美男美女しか存在を許されないという、可愛い雰囲気の中での排他的な感じを受ける。その上、身内カップルばかりが成立していくから世界が狭い。美点だと思っていた部分が、いつしか反転して欠点となっていくような印象を受けた。

また奈緒たちが在籍する情報ビジネス科などがある やや特殊な学校なのに、それに関しての描写が全く無いのも気になる。作中に定期テストなどの勉強回はあるが、大雅の苦手科目が普通科と変わらない科目ばかりで、彼らの高校生活が分からず設定が無駄になっている気がした。恋愛が深化しないのなら、高校生活で楽しませて欲しかったなぁ。
奈緒には友達が一切いないのは なぜなのかも謎。同じ学校だった生徒が1人ぐらいいるだろう。

こういう部分は連載の形態がどんどん変わっていったから仕方ない部分も多いだろう。この辺の初期構想をどんどん深めていくという点が次回作では改善されているのかを注意深く見守ろう。なんといっても私は作者と作品を確かに好きになったのだから。


書は不良(と思われている生徒)と優等生の恋である。不良と名高い大雅から交際を申し込まれ、断り切れずに奈緒は彼と交流を始める。だが日が経つにつれ、大雅と時間を過ごすにつれ、奈緒の中で罪悪感が芽生える。

なぜなら奈緒は彼のことを少しも好きではないから。奈緒が好意を持つ人は別にいるのに、自分と過ごすだけで笑顔になる大雅を見ていると、自分には笑ってもらう資格なんてないのに、と胸が苦しくなっていく。

自分の行動を反省した奈緒は大雅に謝罪する。ここは雨の日から始まった2人の縁が、雨の日に友達として、向き合うという流れが素敵である。奈緒は あの日は逃げ出してしまったが、今回は2人で同じ傘に入っている。逃げたとはいえ自分の傘を置いて、雨の中 濡れた奈緒も、今回 傘を投げ出して謝罪する菜緒に大雅が即座に傘を差しだして、彼女を濡れないようにするのも良い。

奈緒が倒れていた大雅に勇気を持って出来る限りの施しをした中学時代のエピソードは、奈緒の良さを引き立て、そして片想いの長さから純愛を演出している。大雅の事だから自分が奈緒に近づくことで迷惑をかけるかもしれないという逡巡はあっただろう。それを恐れて行動しない選択肢もある中で、それでも自分の気持ちを伝えたい所に切実さが生まれる。こういう衝動を持っているから やっぱり大雅は男ヒロインなのである。


2話目は学校イベント宿泊研修で、グループを作り、そのメンバーが仲良くなっていく話。この研修自体が、クラスメイト達の交流を目的にしているので、このイベントで仲良くなるのは よくある展開だが、孤立した者同士の集まりという流れは その1年前に連載が始まった咲坂伊緒さん『アオハライド』を連想した。

そこでグループを組むのが矢代 かよ(やしろ)という女子生徒と三咲 渉(みさき あゆむ)という男子生徒。矢代は人に無関心で、奈緒や大雅が孤立しているという情報は関係ないため奈緒に声を掛けた。そして三咲は素直になれない性格のため、周囲に敵を作ってしまい、人と仲良くなれない。そんな彼を大雅が半ば強引にグループに参加させる。そして大雅は三咲を無理矢理引っ張ってきたから、彼を楽しませようと画策する。
その1つが手作りのしおり。だが、その しおりが同級生の嘲笑の的になっていることを知り、その恥ずかしさから三咲は しおりを破いてしまう。その彼の蛮行に一番 怒ったのは、大雅の心情をよく知っている奈緒だった。手を振り上げ、三咲を打擲しようと奈緒。それを大雅が止める。

本来なら大雅が怒るような場面だが、彼の行動は100%善意で見返りを求めていない。器の大きさを感じる。

激昂した奈緒を落ち着かせようと大雅は彼女を外に連れ出す。しおり に込めた思いを破かれても、大雅は大らかに優しい。そこに大雅の器の大きさを見るが、上述の通り、大雅は その笑顔や落ち着いた雰囲気の裏で、どれだけ傷ついてきたのだろうと考えずにはいられない。


修当日、三咲はずっと奈緒に何かを言いたそうに こちらを見ている。しおり を破ったことについて三咲は奈緒に謝罪するが、奈緒は彼の言葉は、自分にではなく大雅に言わなければならないと言う。大雅への恐怖で動けない三咲の気持ちが分かる奈緒は、大雅は優しい人だから大丈夫、と彼に助言をする。奈緒の その絶対の信頼感に三咲は彼女の大雅への好意があると思うのだが…。

班で行動中、三咲に鳥の糞が落ちてきて、大雅は自分のジャージで それを拭う。彼に酷いことをした三咲は それが いたたまれない。だが大雅は三咲と友達になりたいと思っているから、困っていれば助けたいのが自然だと三咲への率直な気持ちを話す。


宿泊研修での奈緒の困り事は肝だめしだった。彼女はオバケ屋敷で気絶するぐらいのビビり。当初は大雅が奈緒を守るはずだったが、ジャージを三咲のために使い、その後 半日 半袖で過ごした大雅は風邪を引いてしまう。それでも大雅は奈緒の恐怖を排除するために肝試しに参加しようとする。

その彼を奈緒は叱る。自分を大事にして欲しいと。
そこへ三咲が話に参加し、大雅の代わりに奈緒を守る、友達の言うことは聞け、と彼なりの歩み寄りを見せる。大雅の誠意が伝わった瞬間で、2人は笑顔になる。

だが肝試しの途中で、三咲は自分が恐怖に負け、奈緒を孤立させてしまう。一人 残された奈緒だが腰が抜けて動けなくなってしまう。山に入れば、怪我、迷子になるのが少女漫画のルールである。やがて闇の中で両親を亡くしたを悲しみが奈緒を襲う。これは彼女に取ってトラウマと言える悲しい記憶だろう。そこで奈緒は思わず、自分の好きな人の名前を叫ぶ。その名前は大雅ではなく、宗ちゃんだった…。


緒の絶叫に呼ばれ助けるのが、ヒーロー・大雅。三咲に事情を聞き、そして高熱から少し回復したから、大雅が動いた。

奈緒は大雅に おんぶされて帰る。その道中、奈緒は自分が好きな「宗ちゃん」の話をする。
両親の亡き後、6歳の自分を、それまでの仕事を辞めて、傍にいるために、奈緒の両親が営んでいた喫茶店を引き継いだ宗ちゃん。大雅にとっては少々聞かされたくない話ではあるが、奈緒がこんなにも自分の事情を話すのは多分 初めてであろう。友情という意味では大雅は奈緒の一番近くにいる人物と思って間違いない。

宿泊研修後は同じグループの4人は大河の手作り弁当を一緒に食べるようになった。


緒の大好きな宗ちゃんが怪我をし、予約されていた常連客の息子さんの誕生日会で出す料理に支障が出てしまう。奈緒は料理オンチで戦力にならないため、大雅が召喚される。

こうして宗ちゃんと大雅の初対面となる。少女漫画的には親族と会うのは結婚フラグなのだけれど、微妙な三角関係でもある。>

大雅と出会ってから奈緒には笑顔が増えた、と宗ちゃんは感じているはず。そして笑顔で大雅は一層 惚れる。
<大雅にとって宗ちゃんは都合の悪い存在だが、そういう安い敵対心を大雅は見せない。大好きな人の大好きな人だから大雅もきちんとした態度で応じる。

誕生会は成功したが、その後に紹介した大雅の顔面の怖さに子供が泣き出してしまう。それを助けるのは奈緒。彼の良さをプレゼンする奈緒は、やっぱり彼のことが好きなのかもしれない。そうでなくては こんなにも彼の良さを笑顔で話せないだろう。奈緒の周囲の人には分かっている大雅への好意。それに奈緒が気づく時、どんなことが起きるのだろうか。