《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

暦の上では秋だけど、残暑が続く限り体感的には 未だ夏。新キャラ・夏未さんのターン!

リビングの松永さん(4) (デザートコミックス)
岩下 慶子(いわした けいこ)
リビングの松永さん(リビングのまつながさん)
第04巻評価:★★★★(8点)
 総合評価:★★★★(8点)
 

シェアハウスでの暮らしにも慣れてきた女子高生のミーコ。一緒に暮らす一番年上のデザイナー・松永さんの優しさにミーコはどんどん惹かれていく。夏休みに入り、松永さんの誕生日に向けミーコがはじめたバイト先がなんと凌くんと一緒だった!! 凌くんをはじめみんなの協力のかいあって松永さんの誕生日会は成功!しかも松永さんから部屋に誘われたミーコは…!!! ドキドキが急加速する、ときめきシェアハウス・ラブ 第4巻!

簡潔完結感想文

  • 松永さんのプライベート=部屋=心の中への進入を美己は許可された。これで看病も可能。
  • 恋心を明確にするのはライバルの存在。男女それぞれの仮想敵が設定され こじれる予感。
  • まだまだ夏の思い出が欲しい松永に「小夏」から連絡。秋の思い出はニャッキーランドだが…。

たふりしてる間に、出て行ってくれぇ…、の 4巻。

相手が寝ていると思ってした行動が、全部相手に筒抜けになる本書。これで寝たふりは3回目でしょうか。1回目はリビングで雑魚寝していた美己(みこ)を松永(まつなが)さんが部屋まで運んでくれた『1巻』。2回目は一緒に並んでベッドに寝た際の『3巻』。そして今回は風邪を引いて寝込んでいる松永さんに 美己が…という展開だった。寝たふり以外では『2巻』でも松永さんが、腹痛に襲われる美己を夜を徹して看病していた。

このようにシェアハウスでは相手が寝ている所を目撃するのが日常的にある。ここまで1巻につき1回は相手の寝ている所を見て、75%の確率で寝たふりをした胸キュンイベントが起こる。シェアハウスの距離感の近さが良く表れている。またはネタのマンネリか…。

『4巻』で良かったのは、松永が美己を自分の部屋に招いたこと。『3巻』巻末での思わせぶりな発言は、またも巻末&巻頭詐欺ではあったものの、ここまで3巻、美己は松永の部屋の中を覗いたことすらなかった。それが今回、松永が美己に部屋=自分のプライベートな部分に入る許可を与え、それが2人の心の距離の接近を表している。松永の方から許可した、という流れが品行方正な感じを増す。美己が松永の部屋に黙って入ったり、虎視眈々と部屋に入りたいオーラを出していたら肉食感丸出しだろう。ちゃんと松永の許可が出るまで美己が動かないことに彼女の礼儀正しさが出ていて、一途な想いを感じることが出来た。また ここまできて、松永は自分の心に美己がいることを(無意識ながら)認めているように思う。

『4巻』にして松永の部屋を初公開。読者も美己と同じように目を皿にして、部屋を観察してしまう。

そして松永が美己を部屋に招いたことで、その後の風邪回で美己が松永の部屋に入って看病することができ、ラストの美己の行動に繋がった。このラストの行動が またまた巻末&巻頭詐欺にならないことを祈るばかり。いい加減、鈍感にも程があるだろと思ってしまう。だが恋心に気づいた途端、松永は年齢を理由にして美己を拒絶しそうで怖い。そういうドキドキも含めて作品に魅了されているということなのだろう。

ただ部屋への入室において、逆に考えると松永は美己の部屋に最初からグイグイ入ってきていた。1回目の雑魚寝からの寝たふりでは、お姫様抱っこをして美己を部屋に運んでいた。いや、松永は引っ越してきた当日の1話から美己の部屋にグイグイ入って、あれこれ指示をしているのか。部屋=心に最初に入ってきた時点で、美己は松永に恋することを宿命づけられているのか。
こうして1話から美己の部屋に入っているからこそ、その後に美己の部屋へ入ることに心理的抵抗が無いのだろう。でも美己が寝たふりをして運ばれた回はともかく、うめき声がするからといってヌルっと美己の部屋に入ってきている松永には恐怖を覚えるが。あの時点で美己が松永に好意を抱いていなければ、ただの変態おじさんである。

2人が互いの部屋に入る時期や順番などで2人の恋愛の仕方の違いが見て取れる、かもしれない。


生会の最後に、松永から「オレの部屋に来る?」と言われた美己。だが深い意味はなく、お礼をしたいらしい。ただ、風呂入ったり一通りすましてからでいい、と言われると またも変な意味を想像してしまうが…。

美己も男性の部屋に入るのは初めて。ここ、松永にとって聞き逃せない情報ではないか。
松永の部屋は綺麗に整っている。ここまで仕事漬けだったのに、このぐらい綺麗と言うことは、整理整頓をきちんとするタイプなのか(それとも美己が入浴中に片付けたのか)。

部屋で渡されたのは、新しいスマホのストラップ。松永はこれを事前に用意していたが、みんなの前で渡すの恥ずかしいから部屋に呼んだのだ。美己から素直に「かわいい」と言われるような品を買えたということは松永は「カワイイ」をマスターしたということか。これは年齢差や感性の差が埋まったということなのかもしれない。

美己は松永の部屋の中を観察し、そこからイチャつく2人。ほんと、松永ってスキンシップ多めですよね。『3巻』の「たかいたかい」といい、5歳児に対する接し方というか。甥っ子や姪っ子がいるとか、実は隠し子がいた!という裏設定がありそうだが、それもなかった。
遠慮なく美己の身体を触るのに、接近し過ぎると2人とも意識して動けなくなるのが可愛い。


接近の小休止となるのが、美己の両親のいる祖母宅への帰省。三歩進めば、必ず二歩下がらすのが本書の絶妙な所。関係が進んでいないように見えて、ちゃんと進んではいるから読者は物語の先へと誘われていく。

美己の父と祖母は初登場。自分の介護のために親と離れ離れになった孫に対し祖母は詫びるが、美己には心から祖母に対して恨みはない。この生活で松永に出会えたし、自立する難しさを知り、傍に誰かがいてくれる安心を実感した。そんな孫の落ち着きが見て取れて、祖母も美己の成長に安堵したのではないか。

美己は実家を満喫していた。食事は「自動的に」出てくるし、お風呂も自由に入れる。シェアハウス暮らしも楽しいが、子供らしくいられる この生活も美己には必要なのだろう。

このプチ遠距離で参っているのは松永の方。たとえ一泊であろうとも、会いたいときに会えないことがストレスらしい。自分の仕事が忙しくないからこそ気になってしまうのだろう。それまでは多忙ゆえに美己とすれ違っていたし、彼女が夏休みに始めたバイトの事も知らないまま。
そういえば同居や年齢差で共通点の多さを感じずにはいられない やまもり三香さん『椿町ロンリープラネット』でも、プチ遠距離生活に耐えられないのは男性側だった。序盤はヒロインが一途なのに、両想いにならない早い段階から男性側に愛されていることが分かる、というのが読者の心を潤すのだろうか。どちらも大好きな作品です。

同居人に家を出て行かれて困るのは いつも男性の方。結婚後もプチ家出は効果あると思うよ☆

った1泊で帰ってくる美己。交通費を考えると1週間ぐらいいれば、と思うのは、私の経済観念の問題か。ちなみにシェアハウスの最寄りの駅は「がなつま線」の「がなつま駅」らしい。これは まつなが ⇔ がなつま、であろう。

駅からシェアハウスまでは5分なのだが、美己は連絡を入れたっきり帰ってこない。松永はそれが気になる。過保護。

美己が遅くなったのはバイトのシフトの提出を、バイト仲間でシェアハウス住人の凌(りょう)に命じられたから。20分経っても帰ってこない美己を心配し、松永は家を出る。
そこで松永が見たのは、美己が凌と楽し気に会話している姿だった。自分より年齢の近い凌、そして美己と距離は遠いと思っていた凌に自分の立場を奪われ、松永は自分の心が解析不能になる。

そんな松永は自分の気持ちのモヤモヤを、バーテンダーの健(けん)ちゃんの働く店で話す。健ちゃんは松永のイライラの正体に気づいているが、鈍感な松永は自分の気持ちに気づかない。これまでの恋愛の経験は、松永の中でリセットされ、いつでも初恋になってしまうのだろうか…。


一方、帰宅した美己は、洗濯機の前で朝子(あさこ)が泣いているのを発見する。彼女はシェアハウスに来て3年近く経過したことに気づき、自分の状況が変わっていないことに焦りを感じていた。3年というのはシェアハウス住人が家を出ていく何となくの目安らしい。3年も経過すると、結婚したり出世したり、次のステップに進むのを機に出ていくものだという。

だが朝子は結婚どころか彼氏も出来ないままだから悩んでいた。この話では、シェアハウスの生活が いつかは終わる、住人が入れ替わることが示唆されている。3年が目安なら朝子や服部(はっとり)さん、健ちゃん、そして松永など先輩住人は いつ出ていってもおかしくないのか。連載が好評だから作中の時間が進んでいくのだが、それだけ別れの可能性が高くなるのかと思うと悲しい。

だが、そんな予感は朝子の衝撃発言で吹っ飛ぶ。なんと朝子はバツイチだという。ここに来る前まで結婚しており、離婚を機にシェアハウスの住人になったという。
美己と その秘密を共有するのは、途中で話に参加することになった凌だった。バイトといい、朝子の離婚歴といい、凌とは共有する秘密が多くなって、そして その分、距離が縮まっていく。

さらに凌は美己が松永のことを好きなことも承知していた。恋愛に全く興味のない凌に見抜かれているのは、ダダ漏れということを意味している。気づかないのは鈍感な あの人ぐらいなのだろう。


かも当の松永さんは、帰宅後リビングで再び、美己と凌が一緒にいるのを見てしまった。1日2回もイチャつくところを見せられた形になった。またも誤解が重なるが、凌の立場としては話に巻き込まれ、知りたくもない秘密を2つ抱える羽目になったと言えよう。

当然のように松永は美己と凌が付き合っていると誤解する。その誤解を解きたいが美己はバイト仲間だということを秘密にして欲しいと凌に言われていたため、2人の関係を上手く説明できなくて口ごもる。それを無言の肯定と受け取った松永は、交際を笑って祝福する。

その態度に美己は傷つく。誤解を解きたいが、全部は言えない、そんな頭を使う状況に美己はピンチに陥る。そんな美己を助けるのが、彼女の状況を察した凌。スマホを取りにリビングに戻った凌は、自分の口封じが美己を困らせていることを察し、上手く松永に説明する。凌が賢いことが分かる場面である。そして彼は どんどん優しくなっているように見える。


に助けられることになった美己は、バイトの日に彼に感謝を述べる。そして夏休みが終わってもバイトを続けることを宣言する。凌は、松永へのプレゼント代を稼ぐという当初の目的を果たした美己がバイトを辞めると思っていた。だが美己は働いて成長しようとしている。そこに自分の中のJK像との違いを認めたのではないか。凌は美己をJKというレッテルや、ただの同居人から美己個人として意識し始めるようになった、と言えよう。

ただ凌とは会話が弾んでも、松永と距離を感じる美己。ちょっとした浮気疑惑だろう。そして会話が出来ないまま、夏休みが終わってしまった。

新学期になり、美己の担任が変わる。産休の担任の代わりに半年間クラスを担当するのが新しく招かれた教師・小林 夏未(こばやし なつみ)。夏休みは終わったが、夏は未だ終わらない、ということか。

小林先生はカッコかわいい見た目とは対照的に、熱いスピリットを持っていた。年齢は27、今年で28歳。お酒が好きで、カレシはいない。松永との共通点が多いように感じられるが、この新キャラはどう動くのか…。


永は夏が終わってしまう前に、屋上でのキャンプを計画する。誕生日以外は仕事漬けだった夏を取り戻したいらしい。これは彼の中でも夏は未だ終わっていない、ということかもしれない。「夏を意識しとかなきゃいけなかったのに まじでしくじったわ」などという台詞も意味深である。

だがテント設営後にゲリラ豪雨が襲い、2人はテント内で雨宿りをする。2人が雨に降られるのは2回目ですね。そこで2人は久々に長い会話を交わす。これも一種の相合傘効果か。

その会話の流れで2人はニャッキーランドに行くことにする。これは美己に渡した新しいストラップはニャッキーランドのものだからである。

その約束が美己を前向きにさせる。本格的な2人でのお出掛けは初めて。詳細な計画を立てて嬉しさを爆発させる。予定日は9月末。暑くも寒くもない頃。だが その前まではまだまだ暑い夏なのである。

松永も どうやってランドに行こうか悩み、男性住人たちに それとなく 探りを入れる。その会話を立ち聞きしてしまった美己は「小夏(こなつ)」という先代の住人と松永にとって大事な人であること、そして松永はシェアハウス内での恋愛を避けていることを知る。年齢だけでなく、シェアハウスにいることが2人の恋愛の壁になってしまうかもしれない。

落ち込む美己は、小林先生に恋バナをする。同時に美己は小林先生が忘れたいのに忘れられない人がいることを知る。読者の中に、暗雲が広がる。美己の心にゲリラ豪雨が降るのも そう遠くないだろう。


の日、ゲリラ豪雨に打たれた松永が風邪を引く。濡れたままの服を着替えなかったのも伏線だったのか。

いわゆる風邪回ですね。これは松永が美己を部屋に招き入れたから出来たイベントだろう。松永は美己の看病を受け入れるが、彼女に風邪をうつしたくないので、顔を合わせず、背を向ける。自分が弱っている時でも 美己のことを最優先にしてくれている。これは極上の愛のカタチなのではないか。美己よ、そこに気づけ!

その後、眠ってしまった松永の頬に美己はキスをする。だが、松永は起きており、しかも彼のスマホに「小夏」から連絡が入り…。

このキスに美己の一途さが良く表れていて、そして松永の我慢に笑ってしまう。彼の中ではメガネ=大人の仮面なのかもしれない。それが外された時にキスをされ、松永も意識せざるを得ないだろう。でも もう「寝たふりネタ」は十分ですので…。