《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

雪音が花火に平手打ち。その後、謝罪され手打ちとなるが、雪音は先手を打ってくる!

コイバナ!―恋せよ花火― 4 (マーガレットコミックスDIGITAL)
ななじ 眺(ななじ ながむ)
コイバナ!―恋せよ花火―( こいせよはなび)
第04巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★(6点)
 

花火と雪音が直接対決!? そして花火は、なんと誓とドッグランにお出かけ。その時、雪音の反応は…。そして予想外のハプニングまで!! 佐々の恋心も明らかになります!!

簡潔完結感想文

  • 彼女を認識しながら2人きりのお出掛けに誘う。なら同じことされてもOKだね☆
  • 山に入れば簡単には帰れないのが少女漫画。そして彼の帰りを待つ雪音だが…。
  • 晴れてフリーとなった誓に近づく花火。だが払拭しきれない雪音の影。攻守交代。

女と別れさせる前からグイグイ行動する自称・男嫌いの肉食女、の 4巻。

どこまで行ってもヒロインの花火(はなび)を応援できない。恋愛の作法として、これでいいのか?という気がしてならない。

どうしても比較してしまうのは雑誌は違えど同じ集英社で2007年の夏にスタートした咲坂伊緒さん『ストロボ・エッジ』。こちらの作品も彼女がいる男性を好きになる、いわゆる奪略系のお話ではあるが、本書と違って「好き」という気持ちをフルスロットルに稼働しながらも、ヒロインが相手の交際に(それほど)影響しないように細心の注意が払われていた。そのため彼の交際が終わるのも前向きな選択だったし、その後に2人が即座に動かないことが自粛期間となり、やがて実現する彼らの交際が濁らないようになっていた。

本書は、ある程度はドロドロとした話にすることを意図していると思われる。それは、キラッキラしていた前作『パフェちっく』との違いを鮮明にするためであるし、それが作者の新しい挑戦なのだろう。
それを理解しつつも、やっぱり花火の行動は目に余る。本当に男嫌いなのか、と思うほど、誓(ちかい)に対してはグイグイで、誓が彼女と交際中なのを知っていて、それでも2人で出掛けようとしたり、虎視眈々と隙を窺う。そして花火には自分が誓たちの交際にとって破壊神だという意識が足りない。自分が誓の彼女・雪音(ゆきね)に対しての加害者だという認識を持たないまま、ただ自分の束の間の幸福のために動く。

誓に対して精一杯 尻尾を振って愛情を表現する花火。よだれを垂らして主人を見つめる前代未聞のヒロイン。

こういう花火の態度は、後に実現するかもしれない交際を濁らせる。この点が『ストロボ・エッジ』とは対照的なのである。ただ本書も最後まで読むと、それも作者の試みであることは分かるのだが。

そして誓も、自分が交際中に花火に心を移していくから、次の花火の交際でも同じ現象が起こると簡単に予想されてしまう。そして たとえ誓が浮気しても、花火には誓も、そして相手の女性も責める資格はない。だって それは かつて自分がしてきたことなのだから。

こうして交際前に花火と誓がしてきた不義によって、まだ始まってもいない交際が汚されていく。未来の予測がつかないから初読は とても面白いが、再読して大事にしたい物語にはならない。


分の気持ちには逆らえないことを知った花火は再び誓への気持ちを取り戻す。
だから花火は雪音にも謝る。それは これから自分が2人の仲を険悪にする、または裂くから。『3巻』で雪音に「(私が彼女で)ごめんね」と一方的に高い位置から謝罪された花火は下克上を目指す。花火の方も「(いつか誓を奪ってしまうから今のうちに謝っとくわ)ごめんなさい」とは、なんという勝気な言葉だろうか。

花火のアドバンテージは、外見ではなく、犬にまつわる全てのこと。犬みたいに ご主人様に離れず、犬のように気持ちを素直に表せる、それが誓が花火を気に入る点であろう。

犬を縁とした この関係だから、犬グッズを買いたいという誓に対し、連れていく、と鼻息を荒くする花火。誓もそれを承諾。誓は花火に下心があるのを知ってるんだから断るべきで、こういう彼のいい加減な所が、花火との交際にも問題になるのではないか、と思ってしまう。上述の通り、本書には、こういう部分の調整力がないという気がしてならない。それに人を呪わば穴二つ。花火がしたことは、後々、花火を苦しめる要素でもあるのだ。


のペットショップでドッグランの招待券を貰い、2人で出掛ける。誓は雪音と交際中に他の女性と2人でお出掛けすることになる。もはや浮気である。
ただ、誓は雪音にちゃんと連絡を入れる。しかし雪音の反応は淡白だった。雪音には本心を出せない苦しみがある。ここで ちゃんと花火の存在を拒絶していれば未来は変わったかもしれない。だが、そういう反応も期待したであろう誓の予想は裏切られた。誓は「犬属性のもの」が好きなのだ。金魚に例えられた雪音には勝ち目はない。…が、なら誓は雪音のどこを好きになったのか、という疑問が消えない。設定ありきのカップルで2人の関係に血肉が通っていない。

山の中のドッグランでの1日で彼女気分を味わう花火。

一方、雪音は頻繁に誓に連絡を入れていた。だが、電話に出た誓に対し、どうでも良いことばかり話し、肝心のことは聞けない。雪音が何かを言い出せないことを誓は察しているのに、彼もまた そのことについて言及しない。どちらも無関心な振りをしてしまい、本音が言えない状態が健全ではない彼らの交際を表現している。


女漫画では山に入ったらトラブルがつきもの。天候不良か迷子か怪我。本書では天候不良が起こり、電車が止まり(道路も通行止め)、帰宅が困難になる。

突然の雨に濡れた2人は、無人駅で身体を寄せ合う。しばらくして電車が復旧し、2人は無事に帰宅。だが身体も心も寄せ合い、確実に2人の距離は縮まったと言える。

雪音は誓の帰りを待っていた。それでも花火の話は全くしない。それが誓に ある結論を導き出すのだが…。

そんな2人に花火が遭遇。晩御飯を買いに出たという花火だが、犬も運動させ、自身も疲れている時に、再び散歩に出るのか、という疑問はある。

その花火に、雪音は平手打ちを食らわせる。恋人の誓に出せない不平不満は、同性の花火に向けられるらしい。そして花火は平手打ちされても致し方なし、なのである。

誓が浮気をした事実から、今度は花火が誰かの頬を叩き、立ち去る番となる。本書に永遠の愛なんてない。

情を昂らせた雪音の肩に乗せた誓の手は彼女によって振り払われてしまう。なぜなら、その直前、2人は別れたから。
別れは誓から切り出された。その言葉にも、雪音は従うだけ。自分のわがままや、自分の醜い心を見せまいとしてしまう。誰かさんと違い、気高い人なのである。そういえば花火は夏のイメージで(そうとも限らないが)、雪音は冬を連想させるのは、2人の違いを端的に表すためなのだろうか。

もしかしたら誓は、雪音が花火を怒る感情があることが嬉しかったのではないかと思われる。暴力だし間接的とはいえ、別れたくない、こういう結果になってしまった原因である花火に当たり散らしたい、という雪音の気持ちが感じられる行動である。

だが こうして、彼女持ちという誓の最大の障害がなくなる。


々(ささ)に恋をする厚実(あつみ)を応援したい花火。花火は厚実のことに関しては お節介ババアを発動させ、佐々の恋愛話を聞き出そうとする。本当に、花火はロクなことをしないと思ってしまう。

だが『3巻』に引き続き、恋のお節介は今回も失敗。厚実が知りたくない真実を引き出してしまった。

佐々の好きな人は、花火のバイト先の店長(男)。てっきり佐々は花火のことが好きで、花火が厚実に介入すればするほど、厚実を悲しませ、花火も苦悩する展開だと思っていただけに、意外な人だった。佐々なら最強の当て馬になれると思ったのだが。

意外な恋の相手に聞き出した自分も絶句してしまう花火。花火は恋が下手なのに力技で行こうとするパワータイプの人間である。


が雪音と別れて、花火の立場は楽になったと言えよう。だが そのことで苦しむのが鼻メガネこと尾山(おやま)だった。彼は美衣が誓を好きだと知りながら、それを黙認して かりそめの交際をしている。だから誓が別れてしまったら、美衣が動くのではないかと恐れている。尾山にとっては、花火が誓を繋ぎとめるリードなのかもしれない。

障害のない恋となった花火は積極的に誓に話し掛け、メアドをゲットし、クリスマスの約束も取り付ける。そのメアドに「1223」と入っていることから、その日を誓の誕生日だと推測して、彼との幸福な一日を夢みる。

雪音は誓の学校で彼を待つが、話し掛けられない。その代わりに花火に話し掛け、平手打ちを謝罪し、花火をイブの日のバイト先のクリスマスパーティーに誘う。雪音は今度は花火との「手打ち」を提示しながらも、マウントを取るようなことを仕掛ける。花火をパーティーに誘うのも、イブの日に花火が誓と会えないようにという先手を打ったのではないか、と推測される。

だが、今は、邪魔をしようとする雪音より、純粋な気持ちを誓に向ける自分に大義名分はあると胸を張る花火。ただし別れる前までの自分の所業は後ろめたいものなのに、そう思わないのが花火の欠点だと思うが。


束の23日は お互いの犬と一緒に過ごす。これは自分が誓に好かれているという確証がないから、犬をダシにしている花火の姑息な計算でもある。犬がいれば誓を喜ばせられる。

誓と写真を撮ったり、彼にプレゼントを渡し、誓からもその場で買ったとはいえ誓からもプレゼントを貰い花火の幸福は絶頂を迎える。

だが この日は誓の誕生日ではなく、雪音の誕生日で、誓は彼女のことを思ってアドレスを作成したことが判明して…。