《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

彼女がいても何かとちょっかいを出す男と、彼女持ちだと知っても何かとアプローチする女。

コイバナ!―恋せよ花火― 2 (マーガレットコミックスDIGITAL)
ななじ 眺(ななじ ながむ)
コイバナ!―恋せよ花火―( こいせよはなび)
第02巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★★(6点)
 

花火に何かとちょっかいを出してくる誓。と思ったら突然そっけなくなり…コロコロ変わる誓の態度に花火の心の中はもやもやしっぱなし。オトコなんていらないって思ってたけど…?

簡潔完結感想文

  • 臨時講師の授業で恋愛が強制され、真実から目を逸らそうとしても矯正される。
  • 宇野誓に遭遇する確率の高い道ばかりを選んでしまう花火。同時に それは茨の道。
  • 2巻かけて ようやく恋が始まる。だが恋愛成就から一番遠い地点からのスタート。

日譚が終了し、次回からが本編、の 2巻

『2巻』で ようやく主人公・花火(はなび)が宇野 誓(うの ちかい)に対する恋心を自覚した。更には あっという間に告白めいたものまでしているのだが、花火は まともに相手にされない。その上、誓には彼女がいることが判明し、誓も彼女一筋。自分が割り込む隙も無い完璧なカップルを前にして、花火は恋を諦めるのではなく「すきでいるだけ」という現状維持を望む。

この最大の逆風が吹く中でのスタート、というのが本書の面白いところだろう。辛い恋をすることが分かっていても、自分の恋心を止められない。何かを望む訳でもない、希望のない日々でも自分を偽らないで気持ちと向き合ったことが花火の強さだろう(回り道も多かったが)。

同じ学年だけでも200人はいるであろう男子生徒の中で花火が話を出来るのは誓と佐々(ささ)の2人だけ。彼らに共通するのは清潔感と、女性に対する淡白さ、だろうか。彼らは彼女しか見えていなかったり、まだ明かされていないことであったりで、花火を女性として接していない。ある意味で それは屈辱的な事なのだが、それが花火を安心させている。誓とは、自分が恋愛対象ではないから話が出来て、話すほどに恋に落ちるのに恋愛対象ではない自分という悲しい結論に辿り着く。袋小路に入った恋愛から花火はどう脱出するのだろうか。


だ、この時点では分かりにくいのが花火が誓に、誓が花火にどうして興味を持ったか、ということ。

花火に関しては上述の清潔感と下心の無さ(と顔)だろうか。
誓が少々ナルシストだから、自分の身なりに気を遣い、そしてモテてきたからこその余裕があり、彼女がいるから花火を恋心や性的な視線で見ない。だから花火は過剰に男嫌いが発動しない。
顔に関しては漫画的表現なのは重々承知だが、彼女は顔で自分の周囲に置く人を選んでいる気がしてならない(笑) 誓や佐々、そして誓の友人たちも全員レベルが高い。それ以外を視野に入れないということは、ただのイケメン好きなのかもしれない。
気になるのは、例えば海回があった時に、誓が水着になり、彼の足なり脇なりに体毛を発見した時には花火の100年の恋も冷めるのか、ということ。この問題に直面させないためにも、本書では水着回や お風呂などの肌の露出シーンが皆無なのかもしれない。

そして誓。彼に関して語ることは少し この先のネタバレになるかもしれないので ご注意を。誓が花火を特別だと思ったのは、花火が強い拒否反応を見せたからではないか。これまでモテてきた自分が否定されることになり、プライドも傷ついたが新鮮味を感じた。その後も自分の言葉に対し反発する花火が、何でも誓に合わせようとする雪音(ゆきね)との反応の違いで、花火の印象が強まった。
そしてプライドが傷ついたことで花火を自分に振り向かせようとして、それが成功し、花火は誓に視線を引き寄せられてしまった。それは『2巻』で例えに出されるように、餌に飛びつく犬のようで、花火には屈辱的な関係性だが、犬好きの誓にとっては、花火の様子が飼い犬のクーに重なり、好感を持った。『2巻』までのそれぞれの反応・行動によって互いに どんどん その人の存在が大きくなっていくのだろう。

好意も不満も悲しみも、花火の喜怒哀楽は分かりやすいから誓も心も通わせやすかったのか?

と、完読すれば理解できることが多いが、初読時には、2人が その人に惹かれる理由が分かりにくく、それにより共感や爽快感が減じてしまっている。誓に恋人がいるにもかかわらず、それぞれ火遊びをしているような印象があって、あまり応援したくないのだ。先が見えない事が本書の面白さだと思うが、わずかであっても恋心に火がついた2人の最初の心の動きが分かりにくいから、いつまでも よく分からない話に思えてしまう。

まぁ本書は綺麗事だけで語らない部分があるからこそリアリティと面白さがあるのだが…。


分が宇野 誓に惹かれていることに気づいた花火だが、同時期に誓には彼女がいることを知ってしまった。

そんな頃に現れるのが、臨時講師の「ニットの姫君AMI」。またの名を「嵐のラブメーカーAMI姫」。彼女の授業は「クリスマスに愛するメンズに贈る物を編む」というもの。家族やペットは却下。彼女の存在によって、女性キャラの恋心が明確になるという役割は分かるのだが、愛を強要する恋愛バラエティを見せられている気分で辟易する。
I AM AMI で、愛を編むAMI なんだろうが、第三者に恋愛をかき回されるのは やっぱり不快。一気に恋愛脳漫画になってしまった。本書は後半は好きだが、前半部分がよく分からないノリと展開である。

登場するなり生徒たちの恋愛を把握するAMI。お節介おばさんの登場で恋は賑やかになるが…。

花火が最初に候補に挙げたのは佐々。だが佐々はとても良い人で、男の嫌な部分を感じなくても、ときめきはない。だが、AMI姫の策略によって、花火は自分が誰に ときめいているか、そして不毛な恋に足を踏み込んでいるのかを自覚する。


火は誓に会えることを期待して学校近くの「ステキロード」を利用するし、飼い犬のナンパの散歩も誓の思考をトレースすることで遭遇率の高い道を選ぶ。

そして計算通り、飼い犬とじゃれる誓を見つける。しかし偶然を装って出会えても、花火は誓に「彼女いる」と きっちりと線引きをされる。ここは、ようやく花火が見つけた恋の出発点。だが、それは成就から一番遠いところであった。


火はショッピングモールの雑貨店(?)でバイトを見つけるが、同じモールで誓の彼女「雪音(ゆきね)」がバイトしていることを知る。ここ、花火がバイトをする理由が少々 雑。雪音との接点のためだろうが、もう少し理由は作れなかったのだろうか。

誓は雪音のバイトが終わるまで待っていたり、見たくない現実が次々と襲ってくる。恋に浮かれる一方で、恋に叩きのめされる花火。


火がコイバナに参加するようになって、仲良しグループ4人のそれぞれの恋も見えてくる。
花より団子だった厚実(あつみ)は優しい佐々に対し、しのっちょ は物語開始前から交際中の彼氏がいて、そして美衣(みい)は何だかんだで鼻メガネくんとの接点があるが、彼女は別の人が好きかもしれなくて…。

そして花火は見返りがなくても、ただ誓を好きでいることに決めた。それを誓にも伝える。
だが告白しても現実が変わる訳ではなかった。ちゃんと好意を伝えても、誓にとっては仲間との鬼ごっこの方が大事。そのぐらいの扱われ方である。

不毛な、そして誰かを傷つけなければ成立しない恋を始めた花火。夜空に散る悲恋が予想されるが、少女漫画なのでハッピーエンドへの道でもあろう。フラれたまま終わる話も いつかは読んでみたいが…(現在までの110作品以上では全部ハッピーエンドだし)。