《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

少女漫画あるある では三角関係は3巻から始まるが、人気作の本書の場合、倍の6巻から…。

黒崎くんの言いなりになんてならない(6) (別冊フレンドコミックス)
マキノ
黒崎くんの言いなりになんてならない(くろさきくんのいいなりになんてならない)
第06巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

狭い部屋にはベッドがひとつ、枕がふたつ、黒崎(くろさき)くん(お風呂上がり)。まさかの“お泊まり”に動揺しまくりの由宇(ゆう)の顔を黒崎くんがのぞきこみ…。「発情するなよ すげぇ顔」雨の土曜日、ふたりきりで出かけることになった由宇と黒崎くん。恋人気分が味わえたら楽しいのかな、なんて思っていた由宇だったけど、事態は思わぬ方向に! W王子の中学時代を描いたスペシャルショートも収録☆

簡潔完結感想文

  • お詫びと暇つぶしを兼ねて1日お出掛け。恋愛感情はないのでデートじゃありません!
  • 悪天候により帰宅困難からの お泊り回。やはり肉体が反応することで恋愛感情が発覚。
  • 誰もが不器用なようで ようやく全員が恋心を自覚。俺達の恋愛はここからだッ!…えっ!?

こまでは恋愛感情がなかった、恋愛漫画の第0部だったことが判明する 6巻。

黒崎(くろさき)くんがヒロイン・由宇(ゆう)にキスという性暴力を振るうのは、小学生男子が好きな子にスカートめくりをしちゃうレベルだということが判明する衝撃の『6巻』である。
そして長い長い時間をかけて、登場人物が全員 鈍感設定だったことを持ち出すのも衝撃的な展開。ようやく ここから本題が始まるみたいです…。

これまでのキスと ここからのキスは意味合いが違う かも。しかし嫌がらせがキスって頭がおかしい。

どうやら誰も まともな性格の人がいないみたいだ。黒崎は幼稚だし、由宇は結局「いんらん」だし、唯一まともだと思っていた白河(しらかわ)も黒崎より常に一歩遅い行動をする愚鈍な人間だということが判明する。高校生にもなって初恋レベルの知識からスタートしているので話が進まない。そんなレベルで片思いしているから、これだけ黒崎にちょっかいを出されているのに由宇は黒崎から嫌われていると思っている。友人・芽衣子(めいこ)と同じ人を好きになったことが恋の障害になるのかと思いきや、最大の恋の障害は無知と鈍感であった。本書は学力の面でも由宇に足枷をつけていたが、こうやって恋愛偏差値も低く設定することで彼女を ある種 無垢(あるいは白痴)な存在にしているのは私の好みから外れる。自分が黒崎に嫌われていると思いこんだからといって、自分の恋心を告げずに芽衣子の恋を応援するというのも間違った方向性だし、巻末では それによって相手を傷つける結末になっている。ヒロインの考え方や身の振り方が好きになれないなぁ。黒崎への恋愛感情も結局、肉体的接触で呼び起こされたものだったのも残念。彼の良いところや知的な交流がある訳でもなく、ただただ同じベッドに寝たらドキドキした、これは恋⁉という「いんらん」に相応しい恋愛の自覚になってしまった。

強引にキスをしたり、愛撫をしたりと肉体的な接触で見せ場を作っていた割に、今回で各人の非常に幼稚な精神構造が露見したことがアンバランスさを感じる。皆さん性衝動は強いが、精神の発達が遅れ気味の人たちなの⁉と思わざるを得ない。

まさか世界最高峰の男子を2人も用意する本書が そんな低いレベルの話から始まるとは思わなかった…。黒崎は顔だけは どんどん老けていくのに中身が小学生なのか。


育祭で取り逃した最後のテロリストにも黒崎は暴力を振るうことなく、無事確保。更にはテロリストに情報をリークしていた小兼井(こがねい)を黒崎は庇い、実行犯だけが連行されていく。こうして体育祭は無事に終了。
ちなみに小兼井は この後、この高校に編入してくる。…が、大した活躍も役割も与えられず何のための転校だったのか疑問に思う。黒崎を恐怖した後で尊敬した梶(かじ)ポジションとまではいかなくても、小兼井と黒崎の距離感を縮めていくとか長編ならではの描写があったと思うが、本書では脇役にそんな愛情は注がれる訳もなく、彼はフェイドアウトしていく。残念だなぁ。

この体育祭で黒崎は由宇の両親に対面したが、最後に由宇は黒崎父と初めて顔を合わせる。黒崎父子の問題に、由宇が介入して家庭の問題を解決するんですね、分かります。


育祭後の代休、黒崎は朝から由宇を寮内の放送で呼び出す。黒崎としては体育祭で由宇に迷惑をかけたお詫びだという。でもこれ、それをダシにして得をしているのは黒崎の方だよね…。

黒崎としては誰とも遊べず暇な由宇をアテンドしているつもりのようだが、映画館に行っても由宇が1人で映画を見るだけ。由宇としては一緒にお出掛けをして一緒に楽しむつもりだったのかもしれないが、黒崎は娘を持つ父親のように、行き帰りで一緒に歩き、目的地では娘に一人で羽を伸ばしてもらおうという おもてなし だったのかもしれない。

その後、帰ろうとする黒崎だが、由宇は満足できず彼を水族館に誘う。これは由宇が黒崎と もう少し一緒にいたいという無意識の願望かもしれない。
イルカショーで水を掛けられるのも お約束。水を浴び、着ていた服が透ける由宇に対し、黒崎は自分の服を渡す。彼は弱っている人には優しいのだ(あと嫉妬深い)。しかし謎の「商店街の福引」といい、現実では減少傾向にあるイルカショーがいつまでも続いているのが少女漫画である。ベタな展開、に関して使わないという強い意志がない限り、自分の読んできた時代の少女漫画の定番イベントを ずっと使ってしまうのが少女漫画家なのだろうか。そのうち いつまでもアップデートされない現実とは かけ離れた「ニッポン」が生まれそうだなぁ…。


うしてカップルのような1日を過ごす2人。帰路につこうとする彼らを待っていたのは悪天候による電車ストップ。初デートの後で即、お泊り回になるというパターンも既視感たっぷりである。本書にオリジナリティーはないのか??

ここでも由宇がスッピンを見せるのは、黒崎だけ。黒崎は体育祭で由宇に迷惑をかけたという気持ちがあるから、食事を用意したり、彼女に対して優しい。2人きりの部屋で動揺する由宇を黒崎はからかう。もしかしたらこれは由宇の緊張を解きほぐそうとしているのかもしれない。

だが白河の名前を出されて、黒崎は不機嫌になり由宇に命令を下す。嫉妬深いんです。

だが黒崎に頼まれていた用を済ませる間に由宇は寝てしまい、更には鍵を持ち出さずに締め出されてしまう。そこで中にいる黒崎を起こし、部屋に入れてしまう。だが寝ぼけた黒崎によってベッドに押し倒され、2人で寝ることに。こうして一晩中、黒崎に身体が反応することを観念した由宇は、自分の黒崎への好意を認めるのだった。結局、肉体が大事なのね…。

優しくされる場面でも、格好いい場面でもなく、肉体的接触がヒロインの恋心を目覚めさせる。前代未聞!

何とか寮に帰った後、白河に由宇への恋愛感情を確認された黒崎は「――そんなの あるわけないだろ」と答える。嘘つけ、と思うが、状況的には由宇の片想いが始まる切ない展開となる。
白河がなぜ そんな質問をしたかというと、この頃から白河は黒崎に由宇を取られることを本気で嫌になっているから。ゲームだったはずが本気になってしまったようだ。誰もが叶わぬ思いを抱く三角関係の構図がようやく見えてきた。ここまで長かったー。


うやら黒崎には恋愛感情という概念が理解できないらしい。そんなロボット黒崎に恋愛感情という概念を教えるのが梶の役目となる。ここから黒崎は恋に関しては梶の影響が強くなる。

一方、自分の黒崎への好意に動揺する由宇は、ただの恋する乙女になってしまった。これにより黒崎への反抗や反論が一切なくなり、実は彼女に罵倒されたいドMの黒崎は由宇への関心を失くす。双方にとっての悪循環の始まりである。

さて黒崎への好意を自覚した事によって、由宇は友人・芽衣子に恋心を伝えるべきなのだが、芽衣子が積極性を見せたこともあり、由宇は彼女の応援ポジションに回る。だが応援するはずが、かえって芽衣子を傷つけることになり、上手くいかない。由宇の そんな態度は少なからず黒崎も傷つけているだろう。以前の黒崎の盗撮写真でも芽衣子と白河を裏切っていたが、由宇は自分を綺麗に見せようと周囲を傷つけるタイプの人間である。

黒崎に拒絶された芽衣子を励ます意味で由宇は自分の過去を話す。中学時代の自分を見せる。それはスッピンを見せるということであり、腹を割って話すのと同義であろう。そこまで話すのなら黒崎への恋も話してしまえばいいのに。話さない理由がいまいち分かりにくい。

優しく見えて本当のドSの白河に、由宇は黒崎への好意を見抜かれる。芽衣子の前で好きな人を発表させようとする。白河が意地悪をしてしまうのは自分のフラストレーションを晴らす意味もあるのかもしれない。由宇が黒崎を好きになったと分かってから、白河もまた由宇の事が好きになる。不器用な白河は傷つけ合ってしまうのであった。


黒崎は日々 恋愛感情の概念や、恋する乙女心を梶から学び、また少し人間としての感情を手に入れる。黒崎は芽衣子にも普通に声を掛けることになり、人間としての成長も見せる。

このことが由宇に、ある気づきを与える。黒崎が芽衣子にはやさしく声を掛けるのに自分が厳しいことを言われるのは、自分が黒崎に嫌われているから、という論理だった。それでまた これまでのような態度を黒崎に取れなくて、黒崎のストレスがたまる。だから芽衣子にはしたいとは思わないキスを、口やかましく黒崎に命令する由宇にはするのだった…。さすがドM。彼がキスをしたくなるのは、由宇が自分を罵倒した時なのであった…。


スペシャルショート 中1の春」…
思春期に入り、ますます容姿で人気を獲得する白河。そして そんな彼を守る親友・黒崎。
この話では黒崎がなぜ本編初登場時に長髪だったのか、その理由が明かされる。そういえば少し遅いけど黒崎も由宇と同じく高校デビュー組でもあるのか。由宇は暗黒の中学時代のトラウマを自力で乗り越えるためメイクをし、その状態だから黒崎に怯まず反論できた。そして その一言が黒崎のM心に火を点けるのであった…。