《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

作中では5か月以上経過しているが、漫画的には失恋から1巻以内で次の交際に進むでビッチ。

マイルノビッチ 6 (マーガレットコミックスDIGITAL)
佐藤 ざくり(さとう ざくり)
マイルノビッチ
第06巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★☆(7点)
 

どブスだったまいるが綺麗に変身して恋しちゃう物語…のハズなんだけど、成くんとの失恋の結果、まいるは毒キノコに逆戻り!? 傷ついた心をなぐさめるためにお笑いにハマるという、なんだか絵に描いたような非リア充生活を満喫中!? が、しかしっ!! 綾乃の言葉で再び開眼! 再び恋愛モードに戻り、今度はSNSを始めて、そこで「大人の人」ゲット!?

簡潔完結感想文

  • 恋愛の神様は天佑だが、恋愛から逃避する状態の まいる を立ち直らせるのは別の人。
  • 自分の変身前を知る学校に出会いはないのでSNSを始める まいる。交際までは駆け足。
  • 前回、失敗した まいる の心の中にいる天佑を彼が気にする問題はクリアしたが…。

回の失敗を上手く乗り越えたと思ったら、違う失敗をする 6巻。

基本的にヒロインとヒーローの恋だけしか描かない少女漫画において、公然と2回目の恋の模様をお送りしようという前代未聞の展開が始まる。
今回は失恋の辛さで現実を逃避し続ける主人公・まいる が どうやって次の恋に進むかという経過がメイン。何だか またも あっという間に恋に落ちるが、本書は交際まで最短距離を取り、交際の内容や破綻を詳細に描く方式なので仕方がない。そして次の恋に容易に進むためには ある程度 まいる が尻軽≒ビッチでないと進まないので、そこに不快感を覚えてはならない。

面白かったのは、1回目(正確には2回目)の交際での失敗を乗り越えた点と、反対に乗り越えられなかった点の描写。どちらも まいる にとって神様である天佑(てんゆう)が関わることである。元カレ・成太朗(なるたろう)との交際では、まいる が天佑を常に崇めていたことが、独占欲や嫉妬が強かった成太朗には気になってしまった。まいる は次の交際相手となる25歳の社会人・七瀬(ななせ)との出会いの際も、天佑に同行させたり、彼の前で天祐の連絡を気にしたりと、同じ轍を踏んでいる。しかし七瀬にとって8歳以上年下の天佑は同性ライバルと見られない存在。成太朗のように天佑が劣等感を覚えさせる存在どころか、七瀬には天佑に負ける所がないと思える一種の傲慢さが見え隠れする。彼女の男友達を許せない同級生の次の、彼女の交友関係を微笑ましく見る大人の男性との交際は まいる にどんな幸福(と不幸)をもたらしてくれるのか。

七瀬は 天佑教を捨てられない まいる を含めて彼女を許容する。どこにも欠点は見当たらないが…。

そして まいる が乗り越えられなかった失敗は、自分の恋愛コンサルタントに天佑を常任できない点である。上述の通り、成太朗の時は彼が まいる の天佑という神様への信仰を捨てさせたが、今回は まいる のビッチっぷりに天佑が嫌気が差したことで彼が離れていく。
問題は、まいる の恋愛が天祐なしで上手くいかないことに まいる が気づいていないところ。初日から神様が人類(まいる)を見限るという神の祝福がない交際となる。波乱が予想される展開に ますます目が離せない。

天佑の処理を含めて、2人目に七瀬を持ってくるのが上手い。成太朗とは全くタイプの違う大人の男性に見えるし、一方で大人だからこそ簡単に子供(まいる)を騙すような狡猾さも持っている気がしてならない。良い人なのか悪い人なのか判別が出来ない点も続きが気になる。


2月14日の誕生日の失恋から5か月が経過。冬も春も通り過ぎ、季節は夏。まいる の外見も性格も元に戻る。完全にリセットである。
逃避先として まいる が選んだのは「お笑い」。ライブを見て、ラジオを聞いて、趣味が彼女を回復する。失恋の辛さが、まいる を恋愛から遠ざけた。ただ失恋を機に再臨した神様・天佑との交流も復活し、一緒にお笑いライブに行ったりしている。また同級生・綾乃(あやの)も彼女なりに まいる を心配し、失恋を悲しむばかりで、一生懸命だった恋愛にも目を背ける まいる の根性を叩き直す(暴力で)。
綾乃の言葉でまいるは立ち直る。もう一度 全身がしびれるぐらいの恋をするため、彼女は生まれ変わる。天佑は神様として彼女の恋愛の助言はするけど、恋愛をするかどうかは まいる の自発的な意思に任せる。天佑の その線引きが好きだし、恋愛する意欲の復活を綾乃に任せている役割分担も好きだ。

天佑が蜘蛛の糸で人を救うのなら、綾乃は千尋の谷に人を突き落として立ち直らせる。

太朗との思い出も捨てて、恋愛に燃えるが、まいる の毒キノコ時代を知る学校内に出会いは無かった。
そこで まいる が活路を見い出すのはSNS。まいる がプロフィールを作成した途端、メッセージが届く。その やり取りの中で、段々と相手の人となりが分かってくる。一応1人目の彼氏である山川(やまかわ)の時も、相手の顔を知らないままメールの文章だけで恋をしていた。今回は その時よりも身元が不明な人との交流で、いよいよマッチングアプリでの出会いの印象が強くなる(まいる は年齢制限でマッチングアプリは出来ないだろうけど)。

相手の名前は七瀬 雅樹(ななせ まさき)。建設会社につとめる25歳。やがて七瀬側から会いたいという話が出るが…。

その相談をするのは恋愛の神様・天佑。彼は否定もしないが感心もしないというフラットな立ち位置。ただし まいる の会いたいという気持ちを優先する。まいる は好奇心もあるが不安もあるので、天佑の同行を頼む。天佑が そんな無理を聞いてくれるのは「あんたの事 結婚式まで面倒みる覚悟だから」。


山川の時の失望もあるので今回、まいる はハードルを下げるが、実際に現れた七瀬はイケメン。まいるに興味津々に見つめられても、彼女の隣に天佑が横にいても動じない大人の男性である。そして まいる が高校生であることに驚いても、年齢を考慮して1年待てるという誠実さも持ち合わせている。

七瀬のイケメンっぷりに舞い上がる まいる を見て、天佑が嫌味を言うのは嫉妬なのかと思ったが、どうやら本人が自己分析するには父娘の気分らしい。そんな天佑すらも魅了してしまう七瀬。これは後述するように敵じゃないと思うから生まれる大人の余裕なのだろう。

帰路、七瀬がまいるの恋愛事情を根掘り葉掘り聞こうとするのを、まいるの傷口が開く前に阻止する。そんなナイトが姫を守るような状況を七瀬は大人の狡さで抜け駆け。更には、ねこの餌を理由に、まいるを自宅に連れ込む(嘘ではなかったが)。

本書の恋愛は簡単に恋に落ちる。まいる を速攻で好きになる七瀬。東京を一望できる夜景を前にキス寸前までいくが、まいるが天佑を気にして中断。この時、まいる は成太朗の時と同じく、天佑教を優先する失敗を犯すが、七瀬はそれを気にしない。なぜなら七瀬は天佑に負けない自信があるから。成太朗の場合、天佑と自分を比べると劣等感が生まれ、そして それを気にする自分の小ささに成太朗は苛まれていたが、七瀬は年齢差や経験があるから、ライバル視しない。
こうして天佑問題をクリアして交際が始まる。恋愛コンサルタント・天佑がいながらの恋愛は盤石だと思われたが…。


いる は成太朗の時ほど「強い好き」ではないが、七瀬の包容力に安心感を覚えたから交際を始めた。その日 起きた事の報告を聞いた天佑は、七瀬の狡猾さを非難する。更に まいる が彼を擁護し、そして初対面のその日から交際する軽薄さに愛想が尽きる。

こうして彼氏が天佑の存在を許しているのに、まいる と天佑の距離が生まれる。天佑教から脱会するのは不幸の始まり、というのが成太朗の時の教訓だった気がするが…。