《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

禁を破って 初めて午前0時に会いに来たのは、嫉妬と溺愛を見せて読者を満足させるためさ☆

午前0時、キスしに来てよ(2) (別冊フレンドコミックス)
みきもと 凜(みきもと りん)
午前0時、キスしに来てよ(ごぜんれいじ、きすしにきてよ)
第02巻評価:★★★☆(7点)
 総合評価:★★★☆(7点)
 

一般JK・日奈々(ひなな)と超人気芸能人・綾瀬楓(あやせ・かえで)の秘密の恋は、いきなり2人の関係がバレちゃった! そして楓の女性関係も…。不安になる日奈々に楓がとった行動とは!? そして日奈々の秘密も明らかに!  みきもと凜の最新作は芸能人×JKのリアル・シンデレラStory!

簡潔完結感想文

  • デート場所や時間など、端々に彼の自制心や配慮に溢れていることを彼女は知らない。
  • 早々に芸能人と交際するだけでなく三角関係も『2巻』で成立。承認欲求が満たされる。
  • 本書ではカップル双方に心の闇が存在することが示唆された。こりゃあ 長くなるぞ。

「オレが君に会いたい」溺愛4連発で読者を溺死させる 2巻。

今回、感想を書くにあたって印象を改めたのはイケメン芸能人・楓(かえで)のこと。

基本姿勢がヒロイン・日奈々(ひなな)への溺愛ばかりで、
彼が物語を退屈にしている張本人かと思っていましたが、
今回、気づかされたのは彼の日奈々への数々の配慮だった。

例えばデート内容。
俳優としてドラマ・映画に引っ張りだこで、CMにも出演する彼は お金持ちだろう。

だが 彼は日奈々に対して金銭で満足させない。
プレゼント攻勢を用いて彼女の興味を自分に向かせたりしない。
師走ゆき さん『高嶺と花』は、プレゼント攻勢する御曹司とJKの恋愛だったなぁ)
楓自身が魔法使いになって、日奈々に素敵なドレスを着せることも可能なのに しない。

そして お金を使えば、人目を遮断できる場所を確保することも可能だが、
デート場所は夏祭りであったり、自宅であったりと慎ましい。

これは現役高校生・日奈々の等身大の庶民派デートと言っていい。
もしかしたら楓は自分も高校の同級生になったつもりで日奈々に接しているのかもしれない。

高校生の行動範囲と金銭感覚で彼女に会うことで、彼女に背伸びをさせない。
早く大人になってもらおうと無理にヒールの高い靴を履かせて、
彼女の足を痛めさせてしまうような失敗はしないよう注意している。

そして それは彼女と会う時間についても同じ。
日付が変わる時刻ならば多忙な芸能人の楓も彼女の家を訪れることは可能だし、
両親が謎の仕事方法で深夜にも帰宅しない日奈々も、内緒で彼を家に迎えることは可能。

だが、楓はそれをしない(滅多に)。
なぜなら それは高校生にとっては非常識だから。

まだ両親にも発覚していない恋愛だが、
楓は世間に、彼女の両親に顔向けできないような交際は一切しないと心に決めているのではないか。

そして そんな彼の態度は、読者の共感を呼ぶ。
その共感は、イケメン芸能人との非日常的な交際を描くのではなく、
自分の生活圏内にイケメン芸能人が彼氏として存在する、身近でパラレルな世界を描くから生まれる。

だから、夏祭りの中に、自分の家の前に、自分が好きな芸能人が来るという妄想を誰もがする。
お金に物を言わせた、読者が上手く想像できない豪遊ではなく、
読者の すぐ隣に綾瀬(あやせ)楓は立っているのだ。

見知った風景の中にある違和感だから いつも こう驚くのだ。
「綾瀬さん⁉」
すると彼は当たり前のように こう答える。
「いかにも綾瀬さんです」

彼女の生活圏内に現れる変身ヒーロー。素顔だけじゃなく疲れによる肌荒れ や くま も日奈々に隠せて一石二鳥。

して『1巻』の感想でも書いたが、本書には悪い人がいない。
だから交際の相手が誰もが羨む芸能人でも、この恋愛は誠実に進む。

それは安心材料なのだが、本書の退屈なところでもある。
楓に どんなスキャンダルが出ても、どんな すれ違いがあっても、
彼が裏切る訳ない事は読者には分かり切っているから。

もっと正確に言えば、問題は本書に悪い人がいないのではなくて、
作者は悪い人が描けない、という点だろう。
キャラへの愛が過剰だ。

各キャラ(特に追加キャラ)は初登場時には多少 癖があるように見えても、
絶対に良い人になることは過去作の傾向からして明らか。

それが作品を ある限界に制約し続けているように思えてならない。

作者は1話の中でヒロインを不安にさせてから、その後に それをヒーローに解消してもらう事で、
緊張と緩和を生み出し、それを胸キュンの基本構造としている。
大雑把に言えば毎回、前半のマイナスが、後半プラスに反転するだけの話なのだ。

そして それは長期的視点で作品を見ても同じ。
本書で不安や闇が出てきても、それは絶対に霧散する。

本当に綺麗さっぱり無くなってしまうからカタルシスが生まれるのだが、
水清ければ魚棲まず、という言葉のように、
容姿も そして精神も美しい者しか登場しない世界は どこか薄っぺらい。

作画はピカイチの作者だからこそ、金太郎飴のような作風を変えて欲しかった。


の家にいるところを、45歳独身のマネージャー・茂雄(しげお)に見つかる日奈々。
マネージャーが この未成年者との恋を応援する訳もなく、日奈々が追及されかけたところに、一本の電話が入る。
込み入った事情を察しながらも、楓に帰宅を促され日奈々は席を立つ。

後日、学校の前に茂雄が待ち伏せしていた。
そこで彼が放つのは「君 楓に遊ばれてるよ」「あいつの演技力に だまされないほうがいい」
「女には だらしない」「飽きたら捨ててを繰り返」す、という言葉の数々。

日奈々は自分で感じた楓の実像と離れた そのイメージに疑問を持つ。
しかし茂雄が見せたのは、週刊誌に載る予定の、新人タレントと楓のスキャンダルだった。
茂雄は現実を思い知らせ、日奈々に楓に会わない方が傷つかないと促す…。

ショックを受けた日奈々は楓の電話にも出ない…。
恋愛スキャンダルでショックを受けるのは芸能人を好きになったら覚悟しなくてはならないのは知り合わなくても同じ。
今回は芸能人同士だったが、JKが恋の相手と世間に知れたら一気に破滅。

茂雄は楓の「過去」のような出来事を回避するためにも、日奈々を牽制したらしい。
ただし人間としては人情派の茂雄は、自分の越権行為を反省し、楓に自由時間=日奈々に会う時間を与える。
やっぱり悪い人はいないのです。

この件で日奈々は、自分がどれだけ楓のことを好きだったか思い知る。
そうして涙を流しながら落ち込む彼女に、ヒーローは現れる。

王子様は目の前に現れ、必死に彼女に訴えかける「つき合いたい」と。
想いが同じであることを確認した日奈々は王子から交際を受け入れる。
ここからが正式なお付き合いになるみたいです。

どうでもいいけど、日奈々一家の住むマンションはオートロックとか ないのでしょうか。
なぜ楓が直接、玄関前まで来れるのか、エントランスとかないのかが とても謎。
なかなか豪華なマンションに見えるのに。
ドラマチックな展開にしたいがために色々 捻じ曲げたのか。

日奈々の両親が滅多に家に帰らないから日奈々はヤングケアラ―にならざるを得ないが、
帰ってこないから、楓との交際がバレないという一長一短な設定である。

こうして街中で噂の人物との交際は、読者に擬似的な優越感や承認欲求を満たしていくことになる。


際後、初めて楓と会える事になり、七夕デートとなる。
ここも普通の高校生らしいデート内容である。

だが楓は このところ体調が悪く楽屋で点滴を打つほど。
寝る暇もなく働きづめの楓。
売れっ子芸能人にとっては休息も仕事、そして その時間は貴重なもの。
そんな時間を自分のために使ってくれる、でまた日奈々=読者が特別な存在で承認欲求が…(略)

しかし18時に待ち合わせしているのに、楓は時間になっても現れない。
(ちなみに妹は「たまたま」幼稚園の お泊り会という ご都合主義)

30分以上遅刻して現れた楓は寝坊したという。
気合を入れた浴衣も褒めてはくれない。
そうやって日奈々を落ち込ませて…、という いつもの展開である。

これ以降、日奈々と楓が会う時に恒例となる、
「綾瀬さん⁉」「いかにも綾瀬さんです」という挨拶は この時が初めてかな?

楓がトイレに立った際に日奈々の携帯が鳴る。
そこで日奈々がマネージャーの茂雄を通して知ったのは、今日 楓が過労で倒れたこと。

そのことを楓を問い詰めるも、彼の答えは日奈々に会いたかったからという単純明快で嬉しいものだった。
前半のマイナスは反転し、幸福感に満たされる。

この時、日奈々の幼なじみの男性・あーちゃん(本名・浜辺 彰/はまべ あきら)が目撃者となる。
2人の関係を一番最初に知る あからさまな当て馬くんである。

気になるのは、街中での楓の呼び方。
いくら お面をつけていたりしても、背格好と声、そして綾瀬さん という名前で結びついてしまうのではないかとヒヤヒヤする。
偽名を使うとか、2人だけに通じる呼び方を考えるとかした方がいいのに。

でも、そうすると楓が試みる2人の誠実な交際が濁ってしまうのかな?
未成年のJKで問題はあるけど、堂々とした交際だということなのだろうか。


いては日奈々の風邪回。

その展開の前に、楓と、彼が脱退したグループFunny boneとの確執がほのめかされる。
ここから少しずつメンバー内で不穏な動きをする者が出てくる。

そして日奈々の家庭では幼稚園の送り迎えは母の仕事という事も明かされる。
だから『1巻』2話で、放課後の番組観覧に行けたのか(後付けっぽい)

でも なぜ保育園でなく幼稚園なのだろうか。
両親は保育園に預けて、それまでに仕事を終わらせるとかして効率的な働き方を模索した方が良い。
この両親の仕事内容、毎日のスケジュールが一向に見えてこない。

日奈々の発熱に対して、駆け付けるのは楓ではなく、あーちゃん。
無理しがちな彼女の性格を見越して、日奈々の負担を軽くしに来てくれた。

実家が花屋という事もあり、お見舞いの花を持ってきて、日奈々に渡す際、
その表情には明らかに恋情が浮かび上がっていた。
だが日奈々は彼の様子に全く気付いていない…。

あーちゃんの「あ」は当て馬の あ ですね。

その後、楓から連絡が入るが、会話中に あーちゃんが部屋に来たことで、楓は日奈々が男といることを知る。

日奈々が風邪を引いていることも、彼女を助けることも出来ない自分。
反対に彼女の傍にいて、彼女の助けになる あーちゃん。
世間的な立場は大スターと一介の高校生だが、男性としては超えられない壁がある。


の時のあーちゃんとの会話で重要な事実が ほのめかされる。
家族に甘えろ、というあーちゃんに対して日奈々は、
「大丈夫 本当の家族みたいに うまくやってるよ」といたからだ。

そして この回で分かるのは、本書はヒロインとヒーロー、それぞれにトラウマ的な過去があるということ。
前作『きょうのキラ君』ではヒーロー側に抱える現実があったが、本書では両者に用意されている。

そしてシンデレラをモチーフにしているのは一目瞭然なのだから、
シンデレラである日奈々が、後から家族になった者ということは簡単に推察できることだったのに。


の後、眠ってしまった日奈々が目を覚ますのは午前0時。

あーちゃん は日奈々の妹を寝かしつけている最中に眠ってしまったようで在宅中。
そして両親は0時でも帰らない。
飲食店経営じゃなくて水商売でもしているのか。

そこへ楓がマンション前に来たという連絡が入る。
楓は深夜なら日奈々に会うことも可能だが高校生の彼女の身を気遣って自粛していた。
だが、今回ばかりは彼女に忍び寄る男性の影が気になって呼び出してしまった。

初めて楓の分かりやすい嫉妬が見られて読者的にも満足な展開。

日奈々が自宅に戻った後、楓の前に現れるのは あーちゃん。
バタバタと家を飛び出す日奈々に気が付き、後を追ってきたという。

ここでヒロインの知らない内に男性たちのライバル宣言するという少女漫画的お約束展開が果たされる。
私の作った造語では「3巻は三角関係の3」なのだが、
展開の早い本書では『2巻』が起点となりました。
まぁ自分でも長期戦を覚悟している あーちゃん が活躍するのは、まだまだ先でしょうけど。

この話では、前半のマイナスがない代わりに、カップル双方過去に問題があることがほのめかされた。
本書の中では特殊な構成になっているが、
イケメン男性が自分を巡って争うという読者の承認欲求は…(略)

これぞ少女漫画! だけど一般人DKの あーちゃん と芸能人のFunny bone あやみ が同じ顔にしか見えない。

が やがて日奈々の成績が悪化し始める。
楓と交際し、彼の事ばかり考えていたから勉強に手がつかなかったからだ。
まるで成績こそが自分の全てと、日奈々は自分を必死に追い込むが…。

せっかく楓と会える機会も勉強をするからとキャンセルしそうになったが、
楓の甘えた声に日奈々は了解してしまう。

ここでの日奈々の葛藤は服装に現れる。
自分は勉強をしに来たという意思表示として制服を着てくる日奈々。

にしても楓を目の前にして勉強をするなど、勿体ない。
というか七夕デート回におけるの茂雄の話ではないが、楓の時間は非常に貴重なものなのだ。
芸能人じゃなくても平均して10日ぐらいは会えないのだから、それだけで今日という日は貴重なのに。
日奈々は勤勉で物分かりのいい女性だが、視野は広くない。
自分の意志だけを優先することが彼に失礼だということも気づいてないのだろう。

だが楓は気分を害することなく、彼も日奈々の横でインドアライフを楽しむ。
そんな彼も、日奈々が どうして自分を戒めてまで、「追い詰めるように勉強す」るのかは疑問に思う。

ふと気づくと、楓が眠っていることに気づく。
寝顔を初めて見て、そして彼の肉体に興味深々の日奈々。
これが日奈々の「ムッツリ」初登場でしょうか。

なんだか後付けのキャラ付けに思えてならないが、
日奈々が楓の肉体に興味を持つたびに、読者へのサービスシーンが作れて一石二鳥なのだろう。

楓の服をめくり腹筋を堪能している所で、日奈々は楓が起きていることに気づく。
恥ずかしさと勉強が非効率的になるから日奈々は帰ると宣言。

これにも楓は正論で反論し、自分は この時間で日奈々のことをもっと知りたいと思うぐらい夢中だと引き留めてくれた。

こういう自分の都合ばかりで相手に合わせないような行動は、
男女の些細な言い争いの元ですが、楓は決して 日奈々を非難するようなことを言わない。
強い精神力で自身の感情をコントロールし、不平や不満を変換して、日奈々に甘えたいと率直に自分の意見を届ける。

今回はマイナスからの反転はありませんが、
楓の中ではマイナスの要素もプラスに変換されて言葉になっていることが分かる。


そんな彼の気持ちに応えるべく、日奈々は言っていなかった自身のことを言う。
それは自分が「もらわれっ子」だということ。

こうして互いに距離を縮めていって、少しずつ自分の闇について相手に語ることになるのかな?

そして巻末は『1巻』に引き続き、楓の部屋に闖入者が現れるところで終わる。
交際のピンチは続き、マネージャー・茂雄、あーちゃん に続いて秘密は公然化していくのだろうか。

そして この訪問が楓側の闇を暴くのか気になる所で、以下 次巻。