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少女漫画と小説の感想ブログです

ヒーローが同意なくヒロインの下半身を触った時点で、少女漫画として死んでるんだぞ☆

蜜×蜜ドロップス(2) (フラワーコミックス)
水波 風南(みなみ かなん)
蜜×蜜ドロップス(みつ みつドロップス)
第02巻評価:★★(4点)
 総合評価:★★(4点)
 

HONEY」柚留(ゆずる)の最初の難関「DROPゲーム」。でも、このゲームで最下位になれば、HONEYをやめられるかも!?千駿(ちはや)にそそのかされて、わざと負けるつもりだったのに、可威(かい)にひかれている自分に気づく柚留。そんな時、千駿の真意に気づいた那由太(なゆた)に魔の手が…。最終的な狙いは…柚留!?

簡潔完結感想文

  • 1話に1回 肌を露出するノルマの庶民&無能ヒロイン。若い肉体を作品に奉仕せよ。
  • 二人羽織に 扇子と和風セクハラの連続。作者は中年男性なの⁉という妙な発想力。
  • 前門の虎 後門の狼。男性たちの身勝手さと、自分の快楽に振り回されるヒロイン。

当の性暴力を見せることでヒーローを最低キャラから脱出させようとする 2巻。

普段はぶっきらぼうで、自分に対する愛があるのか不安になるようなヒーローが
時折 自分だけに見せる優しさに胸キュン、というのは少女漫画で よく見られる描写。

だが本書においては、そのヒーローは女性の同意なしにキスをしたり下半身を触ってくるような人間なのである。
例え どんなに優しくても そのマイナスが大きすぎて、このヒーローに嫌悪感しかない。

ヒーローと交際後に、第三者から性暴力を受け続ける事を少女漫画におけるピンチにした前作『レンアイ至上主義』も最低だったが、
気持ちが通じ合う前にヒーローを性暴力加害者にしてしまった本書も大きく間違っている。

前作のヒーローは役立たずだったが、性暴力加害者ではなかった。
ヒーローの不器用さや性格を熟知している作者からすれば、
このヒーローの「ヒマつぶし」の性暴力は、彼の「照れ隠し」の愛情表現という前提なのかもしれないが、
作者は男性側の一方的な理論で女性が性被害に遭う作品を成立させようとしていることに疑問を抱かなかったのか。

作者が卑怯なのは、ヒロインがヒーローを想う時、自分が受けた性暴力を綺麗さっぱり無かったこととして語らせる点である。
まるで普通の学校生活の中で、ヒロインが大切にされているかのように場面を切り取る。
そうやって都合の良い部分だけを切り貼りして、そこに愛があるかのように錯覚させていく。
その不自然な構成が目に余る。
そしてヒロインの頭の悪さばかりが悪目立ちする。

エロ描写で大ヒットした前作から大きく路線変更は出来なかったのだろう。
1話に1回、ノルマのように女性は肌を露出しなくてはならず、2話に1回は下半身を触られる。
作者としてはエロ描写は おまけ・サービスであって、
2人の恋愛が成立しそうで成立しない、ピンチの連続こそ作品の本質だと考えているのかもしれない。

確かに『1巻』の感想でも書いたが、その構図、エロ描写を全部 抜いたら普通に面白いと思う。
エロ描写を入れるにしても、ヒーローのスタンスを誤った。

主役カップルが成立するのが遅くなる作者の構想と エロ描写ノルマが合致しなかったために、
早くから主役たちを性の渦の中に投入しなくてはならなかったのだろう。

その葛藤は理解できるが、ヒーローを性暴力加害者にした時点で、作者が描きたい一途な愛は成立しなくなった。
序盤のエロ描写は他のキャラに担当してもらうとか、
何とかカップル成立まで人気を維持する工夫で乗り切ってほしかった。


ロインの柚留(ゆずる)は「DROPゲーム」でわざと負けて、可威(かい)から離れるチャンスを棒に振り、
自分の手で可威のHONEYであることを選択した。

この結果に千駿(ちはや)は落胆するが、それは彼の狙いが外れたからであった。
千駿は柚留を可威から救うのではなく、可威から柚留を引き離したかった。
彼にとって柚留は「目障りな『HONEY』」で消したい対象だったのだ。

天使と悪魔が混在する可威と、ここまで ずっと優しかった千駿による
柚留を巡る三角関係⁉と思いきや、千駿は柚留を気に入るどころか憎悪していた。

この構造で面白いのは、千駿が敵となることで、可威が味方のように見える点である。

千駿はずっと とてもまともな倫理観を持った言葉を発している。
狂った学校制度や、可威のセクハラをしっかりと非難していた。

作者や作品が狡猾なのは、千駿を危険人物とすることで、
可威や この学校制度を間接的に肯定し、異論を封じているのである。

一度は、この作品世界が間違っているという正論を出すが、
正論を述べていた人の評判を地に落とすことで、その正論が間違っているかのような印象にしていく。


うしてDROPしたのは柚留の逡巡となった。
こうして 躊躇いも全てリセットされて、可威とのデート回のような展開になる。

本書のヒロインは根本的な問題を突き詰めて考えないで、可威に言われたことだけしか考えられない人なのです…。

行き先はカップル限定のテーマパーク。
ここは柚留が突発的に思いついた場所なの、に千駿がいきなり登場する。
小学館の漫画って根拠とか示さずに、目まぐるしい展開があればOKみたいな、柚留のような短絡さを感じる。

千駿は可威に代わって、柚留とカップルとして入場。
可威から柚留を守る振りをして、今度こそ柚留に徹底的な打撃を加えようとする。
実は千駿は、彼が高校入学時に転入してきて以来、夏休み前までの可威のHONEYを排除してきたらしい。
上述の通り、良い人そうな千駿が悪い人になることで、可威の地位が自然に上がっていく。


その柚留のピンチから守るのは可威。
柚留も可威の事を改めて悪い人じゃないと思い始めるが、その回想の中には性暴力が含まれない。
エロは本書 最大の売りだが、これさえなければ というウィークポイントでもある。
不自然なエロ描写がなくても、学校制度を巡る話だけでも十分に波乱の展開の連続なのに。

今回もテーマパーク内に カップルの「休憩所」としか思えない施設があり、エロシーンに突入する。

ここでの柚留の独白が最低である。
「好きになりかけてる」ぐらいの関係の人に下半身を触られても、「いやだって思えない」。
「ムリヤリされてるのに ドキドキしてる」。
男性の成人向け漫画かと思う内容である。
直接的な絵よりも こういう言葉に嫌悪感を覚える。


威は自分から柚留を好きとは言わないが「俺のこと好きなんだ?」と柚留の好意は確かめたがる。
こういう所が卑怯にしか感じられない。

更に卑怯といえば、今後は「主人(マスター)触ってください」と柚留が言わない限り、
下半身を触らないという約束の顛末が挙げられる。

これによって可威が性暴力加害者から脱却するのかと思ったが、
既に快楽の入り口に立っている柚留に選択肢を与え、合法的に触ろうとしているだけ。
自分が罪に問われないように狡猾に立ち振る舞う卑怯者でしかない。

可威の言葉には嘘はないのだが、可威は屁理屈で結局、性暴力を与える。
その屁理屈が「エロ二人羽織」。

キーボード操作が覚束ない柚留に、自分の指と柚留の指を重ね合わせてテープで固定する。
前後になって座り、耳に吐息がかかる距離でキータイプを教えた後は、
その重ね合わさった手で、柚留の身体を撫で回す。

可威 曰く「お前の手が誘導すんだから しょうがねぇだろ?」。

エロ一休さん かよ!
作者はどうやって こんな中年男性が喜びそうなシチュエーションを考えているのでしょうか。
内容はともかく、その発想力には感心する。
本当に男性の青年誌・成人向け雑誌で連載すれば よろしいのでは?
本書が少女漫画レーベルである必要性がまるでない。

そんな辱めを受けても可威の気まぐれな優しさで、性暴力の事実すら忘れてしまうのが柚留。
アホで淫らなヒロインは、作者にとって さぞ便利な人間だろう。

気持ちよりも先に身体が反応する柚留。こういう内容描きたいなら少女漫画のフリやめてよ…。

うして柚留は彼への愛おしさだけを胸に、HONEYの役目を果たそうとする。

学校でも千駿は柚留に痛手を与える機会を虎視眈々と窺っていた。
可威は不出来な柚留をフォローするような言動を見せ、千駿には その光景が腹立たしい。

だがクラスメイトで可威の幼なじみでもある那由太(なゆた)に千駿の目的がバレてしまい、彼が柚留を守ろうと動いていた。
そこで千駿は那由太を譲るから遠ざけるために、
那由太のHONEYである絃青(げんじょう)を籠絡し、動きを封じる。

うーん、千駿は絃青における優先順位を狡猾に狙ってはいるが、
絃青にとっても可威は大切な人で、行動を縛るまでにはいかないような…。

何か他に脅迫材料があるのなら分かるが、人形を一つ落とされただけでいう事を聞くのは根拠が薄弱。
そして賢いであろう絃青(中学の頃から可威を抜いて1位の成績)が、
千駿への対抗策を練るなど全くしないまま、言いなりになるのは ご都合主義が過ぎる。


青の協力もあって、柚留と2人きりになった千駿。
柚留を強制「DORP」させるために、彼は柚留を辱める。

どうやらHONEYがMASTERによって付けられたピアスを外すと、それでDROPするらしい。
柚留の場合、MASTERである可威のピアスの内側のHONEYのピアスを外すための4ケタの暗証番号を入手し、
専用の道具に暗証番号を打ち込むとピアスは外れる。

それを遂行するために、千駿は柚留に暗証番号の入手を強要する。
千駿に凌辱された上に可威から捨てられるか、
それとも自主的にDROPの道を進むか、柚留に与えられた選択肢は2つ。


このシーンの回想で千駿と可威の出会いが語られる。
それは3年前の中学1年生のテニスの大会で、圧倒的な強さを見せつけた可威に、千駿は精神的に支配された。
千駿にとっては可威との関係は精神的なMASTERとHONEYなんですね。
自分が信奉すべき尊敬する人物。
彼の側で彼のために行動するのが至上の悦びなのだろう。
だから高校から同じ学校に編入して、可威に相応しくないHONEYは千駿がDROPさせ続けてきたという。

作品的には千駿は、柚留が可威の恋人になるための試練でしょうか。
誰も頼んじゃいないが、千駿は、可威とは身分も能力も違い過ぎる女性を私的に審査していく。
決して、女性たちを慰める振りをして近づき、性行為に及ぼうという考えではない、はずなんだけど…。

どうでもいいけど、中学1年生の千駿が、
「こんな名門私立限定の大会じゃなくて 普通の…インターハイとか出たいなぁ…」
と言っているが、中学1年生の彼が、インターハイ、すなわち「全国高等学校総合体育大会」に出られる訳もない。
もしかして千駿がおバカだぞ、というエピソードなのだろうか…(嫌味)

千駿の正体は、柚留が可威の恋人になるための第一関門。まずは千駿による身体チェックから…。

駿は柚留が決断するまで彼女の下半身を まさぐり続ける。
『レンアイ』でも そうでしたが、ヒロインが好きな人以外に下半身に触られることが作品における「ピンチ」なんですよねぇ…。

初めて可威以外の男性に触られて分かるのは、身体の反応の違い。
可威の時に押し寄せていた快楽はまるでなく、ただただ苦痛でしかない。

こうやって柚留の気持ちを表現してるんでしょうけど、
上述の通り、最低の人物を配置することで、可威の性暴力を間接的に肯定している気がしてならない。
女性が感じていれば多少 乱暴にしてもセーフ、みたいな男性本位の考え方が垣間見られる。

このピンチは絃青が良心の呵責に耐え切れず、理由をつけて警備員を千駿の居る場所に寄越し、柚留は難を逃れる。
それにしても絃青は、警備員が自分の差し金だとバレないように工作するとかないのだろうか。
まぁ 工作しても自明だから犯行の意志を隠さないのかな。


威は柚留に鞄を間違えられ、柚留の鞄の中にある携帯電話に、
千駿から脅迫メールが届いたことで、柚留 周辺の不穏な動きを察知する。
最悪な男の登場で ようやく可威がヒーローらしく行動することが出来るようになった。

一方、柚留は可威に黙ったまま、DROPの準備を始める。

鞄を届けるために可威の邸宅に初めて入る柚留。
可威の家の中で柚留は、可威の元HONEYたちが彼へコンタクトを取ろうとする場面に遭遇し、
執事によって それらが可威に届く前に処分されることを知る。

ちょっと ワザとらしい場面だが、ここはHONEYじゃなくなった時の可威との距離感を示しているんだろう。
しかし この元HONEYたちは可威に何の連絡をするのだろう。
忘れられない、もう一度HONEYなりたい、とかだろうか。
私には可威という人間に そこまで固執するような価値があるように見えないのだけど。

柚留は可威に「主人(マスター) 触って下さい」と自分から仕掛け、
情事の最中に彼のピアスの内側を見る作戦でいた。

が、可威は柚留の目論見に気づいており柚留から事情を聞き出そうとする。
だが、事情を話せば千駿から凌辱されてしまう柚留は口を割るわけにいかない。

柚留が自分の思い通りにならないことにヘソを曲げ、
可威は謎の言葉「3307に期待なんてするんじゃなかった」
「3307の意味もわからないような奴に傾ける耳なんて持ってねえ」と退室してしまう。


こから柚留の暗証番号探しが始まる。

早くも『2巻』で思い出散歩するように、
出会いの場所となり、ピアスを装着させられたホテルで、
その時 可威が設定した暗証番号のヒントを歩いて探す。

この捜索では、何だかんだで柚留の言う事を聞いたり、
彼女の身を案じたり、優しい先週の姿が垣間見られる。
千駿も時折 優しくて、柚留の顔は赤く染まる。
ギャップに弱いのか?

あの出会いの日の全てを追体験することで、柚留は暗証番号と、可威がそこに込めた想いを知る。

「3307」
手近にあった4桁の数字なんだろうけど、もうちょっとロマンティックな数字は無かったのだろうか。
『1巻』でヒントを仕込んでいるならまだしも、急にドリンク代だされても…。
あの日のドリンク代の値段を柚留が覚えていると思っている可威が変である。

普通に出会った日付とか、やっぱりホテルのルームナンバーの方が良かったような…。
連載開始時から ここら辺までは構想しているだろうから、
最初から印象に残るような4桁を用意できなかったのだろうか。


一方、可威お坊っちゃんは有能な教育係・冬唯(とうい)から柚留の危機を知る。

この場面は、可威はストレス解消でバスケなんてしてないで、
自力で千駿の行動を先んじて封じて欲しかったところ。
まぁ お坊っちゃんなんで仕方ないか。

可威は、この学校の謎の制度「RIBORN(リボン)」の発動をしようとしているらしい。
こういう特殊な学校内での特殊な制度は福山リョウコさん『モノクロ少年少女』を連想する。
学校自体も制度も特殊すぎて訳が分からなくなっていく所も似ている。

しかし この新キャラ・冬唯は いまいち分からないキャラでしたね。
作品上に必要とは思えないし、可威に顔が似すぎだし。