アサダニッキ
青春しょんぼりクラブ（せいしゅんしょんぼりくらぶ）
第02巻評価：★★★☆（7点）
総合評価：★★★☆（7点）
隠岐島の晴れ舞台「コスプレ甲子園」がいよいよ目前に。 そんななか、学園一 の超モテ娘・香菜が、隠岐島をロックオン! しかし彼女は恋愛トラブルメー カーで…。どうする、にま!? 新世代ざんねんラブコメディー、疾風怒涛の第2巻!!
簡潔完結感想文
- コスプレ甲子園 当日。ハプニングに機転を利かせて、利かせすぎて自滅。
- その裏で拳で語り合う女性が2人。学校内に知人友人がまた一人増えていく。
- 青心研 最大の危機。最終回のような展開を救うのは にま。もう当て馬卒業⁉
一難去ってまた一難、今度の刺客は生徒会の 2巻。
少しずつ長期連載の形態が見えてきた気がする。
『1巻』の後半から続いていたアニ研＆香菜（かな）編が中盤で終わり、
続いては生徒会＆津和野（つわの）編が始まっている。
新たな部活（主に文科系）と新たなキャラが、
主人公の属する青心研（青年心理研究会）と関りを持っていくという流れなのかな。
『2巻』で驚かされるのは展開の早さ。
どちらも最終回付近で使えるだろうという青心研存続の危機と、
主人公の にま の当て馬体質脱却への道を早くも見い出している。
自分が好きになった人が即座に他の誰かを好きになってしまうのが、にま の当て馬体質。
だが、そんな彼女を好ましく思う男子生徒が現れて、
彼女は自分が死ぬほど憧れていた誰かに愛されることが叶う立場になっていた。
ただし その前に立ちはだかるのは、自分が相手を好きになれるかという難題。
誰かに恋をする人が一番輝いている瞬間を見つけては恋に落ちていた にま。
果たしてそれは、自分に恋する輝きでも放たれる光なのだろうか。
彼女にとって経験したことのない未来が待ち受けていた。
当て馬体質はもちろん、女装やアニオタなど設定を上手く活かして
予想の斜め上をいく展開に魅了されっぱなしです。
津和野の登場もコスプレ甲子園の衣装づくりに絡んで早めになっているのも良い構成である。
顔見せが事前に出来ているから、香菜編も津和野編も話がすんなり進んでいく。
話の交通整理と誘導が上手いなぁ。
そして どんどんと学校内が騒がしくなっていくのも好ましい。
生徒たちの声が重なったガヤガヤとした喧騒が肌で感じられるようだ。
にま は香菜の問題と向き合い、隠岐島（おきのしま）はコスプレと向き合う『2巻』。
香菜にとって告白して、相手の気持ちを奪うのは一種のゲーム。
にま は香菜の隠岐島への冷静な態度を感じ取り、彼女が恋愛に没入していないことを悟る。
それは香菜が にま に対して友達になろうと言ってくれたのも同じこと。
香菜の言葉には真実はない。
だから にま は珍しく他者に対して「きらい」という言葉を使う。
だが それこそ香菜にとって目の覚めるような言葉だったのではないだろうか。
香菜に「好き」と言い寄ってきた男性は多いが、この言葉を掛けた人は久しくいないと思われる。
これは にまが お人好しで、かつ相手の人のことを分かろうとする深い思い遣りから出た言葉。
一方、隠岐島はコスプレ甲子園に向けて特訓中。
そこで隠岐島の欠点が音痴ということが明かされる。
まさか これが伏線だったとは…（笑）
関係者の前で、香菜の過去の経緯が語られる。
語るのは家が隣通しの幼なじみの手芸部部員・津和野（つわの）くん。
香菜は好意を寄せてくる男性、そして自分が狙った男性を精神的に追い詰めて、生活を破綻させていく。
香菜のコスプレ衣装への危害を回避し、無事に出場できたコスプレ甲子園。
だが本番のステージ上で、「隠岐島 武子」として出場した「彼女」が男だという証拠画像が流れてしまう。
この危機は隠岐島の機転によって回避されたが、
彼の別のサービス（ジャイアンリサイタル）によって、優勝賞品のハワイ旅行は夢と散った。
（隠岐島が音痴設定なのはジャイアンと同じ「武」の名前を持つからなのか!?）
ちなみに隠岐島は、この後コスプレ業界ではちょっとした有名人となり、
雑誌の表紙を飾ったりするまでになる。
それを拡大コピーしたポスターは隠岐島のサインが添えられてアニ研に飾られている。
このサインも頼まれたから断れなかったのだろうか。
隠岐島はやるとなるとサービスをてんこ盛りにしちゃう人なのだ。
しかしアニ研関連になると作者の笑いのセンスが冴えに冴えるのは気のせいでしょうか（笑）
無事に閉幕したコスプレ甲子園だが、
にま は会場から去る香菜の姿を見つけ、彼女と対峙する。
そこからは血で血を洗うキャットファイトが展開する。
にま らしくないし、香菜らしくない。
だが2人ともなりふり構ってられない状態なのだろう。
傷だらけの喧嘩をしながら、本音をぶつけ合う2人。
これもまた青春の1ページですね。
香菜は ちゃんと自分のおかしさを理解していた。
けれど どうやって他人を好きになれるかが分からなくて、男性を手玉に取ることしか出来なかった。
そして たった1人自分の味方だったはずの幼なじみの津和野が にま に惹かれたことで、
にま への攻撃を始めるのだった。
彼女の今回の標的は、隠岐島ではなく その後ろの にま だったのだ。
意外な真相です。
そして動機の裏にある純情な想いが、香菜を可愛くみせる。
なかなか罪は重いと思うが、どうしても彼女を好ましく思ってしまうのである。
もはや隠し事のなくなった2人には友情が芽生え始める。
これが本書の1つのパターンとなるのかな。
なかなか困った性格の生徒とにまが交流し、どうにか心を通わせるまでが1ターンだろうか。
喧嘩で傷ついた にま の姿を見た青心研メンバーの対応が面白いですね。
依子（よりこ）は救急車と顧問弁護士を呼ぼうとし、
簸川（ひかわ）はコスプレ甲子園の参加賞のタオルを にま に渡す。
考えてみれば、これって簸川の かなりの優しさである。
だって そのタオルは彼にとってはハワイ旅行より価値があると認定された物だもの。
彼が にま に惚れてると勘違いするぐらいだが、その思いの矢印は生まれないのでご安心を。
香菜の一件でアニ研部員たちが女性不信を強めるのも面白い。
これで彼らはまた しばらく二次元世界への陶酔を強めるだろう。
約一名を除いて。
青心研がアニ研の活動に入り浸るのもここで終わり。
とはいえ一度できた絆は簡単には消えない。
これからも交流は続き、輪は広がる一方である。
そういう所が本当に愛しい作品である。
交流は永遠に続くと思いきや、青心研の存続自体が危うくなり断絶の危機。
理事長の娘である依子の特権を使っていた広い部室は奪われ、
彼らは部活から同好会へ格下げされた。
早くも最終回のような展開である。
アニ研の次に青心研メンバーが関わるのは、生徒のトップオブトップ、生徒会。
生徒会と青心研の話し合いの場がもたれる。
学校や生徒に貢献できるものがない、というのが格下げの理由ならば、
青心研は「豊富なデータを活かして、本校の生徒の恋愛アドバイザー的な役割を担」おうとする。
肝心なメンバーの実情は失恋組が3人に、恋愛に興味がないのが1人なのだが…。
その実績第一号に祭り上げられたのが、にま。
生徒会からノーマークの彼女を使って、
彼女が青心研によってステキな彼氏ができました、という設定をでっち上げる。
青心研のメンバーは機転が利くから、危機を回避でき、そして自分たちをより苦しめてしまうきらいがある…。
ちなみに生徒会長は簸川と中学3年間同じクラスだった。
口うるさくて干渉好きなのが特徴で、あだ名はオカンである。
生徒会長は、にまカップル と生徒会役員との1日Ｗデートを提案する。
にま たち、青心研の活動の結晶である彼らカップルが健全な交際をしていれば、活動内容の証拠とするらしい。
生徒会を誤魔化すために、即席の彼氏、少女漫画ではお馴染みの偽装交際が始まる。
即席彼氏に選ばれたのは、よりにもよって手芸部の津和野。
香菜の一件で、彼が自分のことを憎からず思っていることをしっている にま は一層緊張する。
今回、津和野が好きなのは自分であり、相手が誰かを好きになってしまう当て馬体質は発動しない。
自分が津和野を好きになりさえすれば、初の恋愛成就も夢ではないのだが…。
デートプランは生徒会によって設定され、青心研の介入は一切許されない。
にま は1人で この水族館デートをいい感じに成立させなくてはならなくなった。
ここでは、生徒会の尾行・観察こそが、青心研の活動内容と同様であるという皮肉が効いている。
そしていよいよデート当日を迎えるが、またまた気になるところで『3巻』へ続く。
気になるのは、水族館での簸川の反応。
何と隠岐島のコスプレに初めてトキめいている様子なのだ。
これまで隠岐島の女装は三次元であって、
コスプレをしても変身少女モノの変身後の姿だった。
しかし今回、隠岐島がアニメの変身前の制服姿のコスプレを着たことで、
二次元と三次元の境界が解け始めたらしい…。
まさか簸川が三次元に反応するのが、こんな対象だったなんて。
この後も隠岐島の女装は数々の被害者を生むことになる…。
魔性の女装である。
