桐島 りら(きりしま りら)
世界の端っことあんずジャム(せかいのはしっことあんずじゃむ)
第04巻評価:★★(4点)
総合評価:★★☆(5点)
杏子フェロモンも人気もとまりませんっ! 女子高生×年上バンドマンの甘くキケンな音速LOVE!! メジャーデビューが決まり、なかなか会えない2人……。それでも杏子(あんず)を支えようと奮闘するひなに、リーダーの達郎(たつろう)が魅かれ始めて――! そんなある日ひなの学校に突然、杏子がっ!!? 嫉妬する杏子のフェロモンが大変なことになっております☆ 杏子の本気モードにどうにかなりそう!!
簡潔完結感想文
- 管理人の仕事をしない父親を嘆いていた主人公が その仕事を邪魔する。何様?
- 全6巻(実質5巻で)テンプレ展開が連発。ヒーローが駆けつけるだけの漫画。
- 初登場時から どんどん弱くなる主人公。とんだ地雷女にしか見えないのだが…。
続けて読むと似たようなフレーズばかり繰り返していると気付く 4巻。
主人公って こんなにバカで浅はかな人間だっけ?と怒りが湧いてくる。
彼女は16歳にしては大人びている設定だった気がするのだが…。
年上の恋人であるバンドマンがメジャーデビューを控えた大事な時期で、
バンドを売り出すプロデューサーやレコード会社の面々は恋愛禁止令を出した。
会えない切なさや会えた喜び、耐える時間の長さが、秘密の関係を描いた漫画の読みどころだろう。
けれど作品と主人公には我慢が足りない。
作者がまだまだ新人作家で、毎回 恋愛描写を入れなければ、
連載を継続できない事情はあるのだろうが、彼らが自分の都合を我慢する時間が余りにも短い。
良い風に言い換えれば、男女双方ともに会いたい気持ちが募って、
時間や機会を見つけては、自分から相手に会いに行く積極的な恋愛をしていると言える。
それほど彼らの愛は燃え上がっているのだ。
しかし主人公の ひなが採る行動は、既婚者との不倫中の女性が相手の配偶者に
自分の存在を匂わせるのと同じようなマーキングに近い行為に思えてしまう。
会ってはいけない人に会ってしまうかもしれない緊張感、
そのスリルの中で自分が この恋の主人公だと悦に浸ってはいやしないか。
漫画としては それが読者のスリルに変換され、面白さは出せるが、
こうも何回も仮想敵のいる場所に のこのこと現れる女子高生の思慮の無さを見せられると腹も立つというものだ。
主人公の ひな の両親は公私のバランスが取れずに別れていった。
自分が母の生活の足を引っ張っていると幼心に自責の念を感じた ひなが、今度は恋人の仕事の足を引っ張ろうとしている。
一方でヒーローの杏子は、兄の恋人を好きになり、実際に奪ったために実家は崩壊した。
そして実家を出て東京でバンド活動を始めた彼が、
今度は、再び自分の浅はかな行動で、バンドを崩壊させようとしている。
2人とも一番してはいけない行動をすることで、同じ過ちを繰り返しているように見える。
人に傷つけられること/人を傷つけることを知っている2人なのに、
思慮の足りない行動ばかりしていることが気になって仕方がない。
2人の過去はただの飾りに過ぎないの?と物語の展開に疑問を持つ。
今回の ひな の姿は、繰り返し使用した電池の持ちが悪い充電用電池みたいだ。
電源に繋げば すぐに充電は出来るけど、電源から切り離すと すぐに充電を消費してしまう。
充電スポット(杏子・あんず)を探しては泣き、
泣くと現れる彼に抱きしめられて充電をするのだが、その次の回には充電切れ、の繰り返し。
彼女が高校3年生だったら進路や勉強など、他のことで時間で消費できたが、
いかんせん彼女は まだ高校2年生で、時間だけはたっぷりある。
だから、空いた時間に彼のことを考えてしまい、そして泣いては助けられるのだ。
また、肉体関係をほのめかしては寸止め、という流れも繰り返される。
これでしか読者の興味を引っ張れないのだろう。
段々と杏子が口だけ番長、オオカミ少年のように見えてくる。
そういえば杏子の意外に筋肉質な裸のサービスシーンも多いですね。
杏子の未成年女子高生との恋愛はバンドメンバーは反対しない。
マネージャーの追及の手から ひなを逃がすためにバンドリーダー・達郎(たつろう)は ひなを車で送る。
その車中で語られるバンド結成秘話。
彼らの初ライブは2008年、これが高校卒業直後なのだろうか。
そして本書の時間軸は連載が始まった2014年だとすると、杏子は今+1歳にして25歳ぐらいか?
初ライブの時期が -1~+2年ぐらいとすると、24~27歳ぐらいが上下限かな。
いずれにせよ16歳の ひな にとっては大人である。
その話を聞いて、ひな は今度は杏子やバンドのために自分から距離を置こうとする。
でも、杏子のいた304号室に新たな住人が入ることだけは阻止する。
父の仕事を補佐していたはずの彼女が、父の仕事を邪魔する始末。
あんたに何の権利があるんだか、と言いたくなる乙女モードである。
またまた、こんな子だっけ??と戸惑う行動である。
達郎は ひなを送り届けたことで、木乃伊取りが木乃伊になってしまった。
どうやら彼女のことを好きになってしまったらしい…。
恐るべき魔性の女子高生である。
同級生の睦(むつ)も消化不良なのに、新たな当て馬が誕生した。
達郎は睦と顔も似てるし、高校生以上に純情だし、作者の妄想大爆発、と冷ややかな目で見る。
ここで ひなが達郎を選んだりしたら、今度は杏子が彼女を奪(と)られるパターンとなる。
そんなことになったら杏子の精神は壊れてしまいますね。
絶対にそうはならないと分かっているのが、少女漫画と現実の違うところである。
いつか全読者に嫌われてもいいから、こういうバッドエンドを描く勇気を持つ作家さんが誕生して欲しい。
あっ、バンドマンが登場する矢沢あい さん『NANA』がそれに近いか。
杏子のために離れる決意は早くも挫けそうになり、涙を流すひな。
だが、彼女が涙を流せば、杏子はやって来るのが辟易するほど繰り返されるパターン。
そして相変わらず ひな は杏子からの電話に出ない。
肉体的接触しか意味がないと思っているのでしょうか。
忙しい中、彼女のことを思い出している杏子を もう少し認めてあげてよ…。
会えないのならば会いに行く、が2人のスタイル。
杏子はひなの学校でサプライズライブを開催!
これは予想外の展開でビックリした。
よく見ると全校集会の間、会場となる体育館の舞台は暗幕が下がっている。
杏子の顔を見ることは出来たが、
握手会で杏子からビジネスライクな対応をされて傷ついてしまう。
更には顔見知りのバンドのマネージャーに交際の牽制されて、教室で独り泣く ひな。
はい、泣いたら出てくるのが杏子です。
なんで、こうも早くヒロインを救ってしまうのか、作者の過保護さを残念に思う。
ずっと お姫様対応をされているから、ひな は自分の立場を分かっていないのだ。
彼女は とことん飛んで火にいる夏の虫となる。
自分が世界のヒロインだと勘違いしているのか、ドラマチックな選択ばかりしていく。
達郎は自分が会いたいという気持ちもあって、ひな をMV(ミュージックビデオ)の撮影場所に呼ぶ。
しかし いくらバンドメンバーに正式に誘われたからといって、
マネージャー陣に牽制されている中で現場に出向く厚顔無恥さに開いた口が塞がらない。
更に杏子出演のライブ会場に必ず行くのも ひな の悪い癖。
彼女がライブ会場に足を運ぶのは これで何回目だろうか。
前橋・徳島・新木場、そして東京が2回以上か?
ヒーローがバンドマンなのでしょうがないが、同じことばかりが繰り返される。
会場で歌う杏子の姿に惚れ直し、そして その彼女だということに自尊心を満たされるのだろう。
しかし どこでも傷つくのが 恋する乙女・ひな。
そのライブのMCで、その日が杏子の誕生日だということ初めて知り、落ち込む。
彼女がライブ会場の周辺で落ち込むの何回目だろう。3回目ぐらいか?
そして会場でナンパされたことでピンチが訪れ、当たり前のようにヒーローが現れる。
ねぇ、杏子は毎回、どうやって ひな のもとに現れてんの??
彼が ひな のピンチに間に合わなかったことはない。
ヒロインが落ち込んでも、すぐ救われるのは安心設計だが、長編作品としては優れているとは言い難い。
多くの少女漫画と違って、どんどん弱くなっていくヒロイン像は珍しい。
彼女のファンだった読者は離れる一方なのではないか。
こんな単純な恋愛脳の女子高生じゃなかったはずなのだが…。