《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

主人公は男性を すぐに魅了してしまうので、主上(おかみ)には絶対 会わせられません。

遙かなる時空の中で(4)
水野 十子(みずの とおこ)
遙かなる時空の中で(はるかなるときのなかで)
第04巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★(6点)
 

異世界「京(きょう)」に召喚された現代の女子高生あかね。京の命運を左右する龍神の力にとまどいながらも、鬼と対峙する あかね。その あかね が八絃琴(はちげんきん)の呪いに倒れた時、あかねを守る七人目の八葉が遂に現れ…⁉ 大人気ゲームのクロスメディア漫画(コミックス)、第4巻登場!!

簡潔完結感想文

  • 四神・五行・八卦、八葉の中で一番相性の悪い組み合わせはどこだろう?
  • 八葉は倒したいが、あかね は無傷で奪いたい。鬼の方が攻略法が難しい。
  • 日常回。各人の得意分野を活かして男女の婚姻を援ける。女装に犯罪⁉

葉集めよりも日常回が面白かった 4巻。

主人公を守護する八葉(はちよう)集めも残るはあと一人。
しかし1話の段階で顔バレしているので、もはや全員集合となった『4巻』。

私は純粋な漫画読者なので、最後の一人がなかなか集まらないとか、
意外な人がそうだったとか、そういう楽しみ方をしたかったので残念である。

主人公側も、敵対する鬼側も関係者が揃って、いよいよ本格的な争いが始まる予感。

八葉を四神で分けて2人組4グループにする下地も出来て、
これからは彼らが反発しながらも、仲を深めていく様子も楽しめる。
男同士の友情に萌えるという楽しみも出来よう。

ハッキリ言って、愛され/守られ主人公への気持ちよりも、
関係性に振り幅があるだけ、反発する2人組が心を通わせていく様子の方が楽しめる。
再読すると、ああ この時点では仲悪かったよねー、などと懐かしい気持ちが湧く。

ゲームありきの物語で、序盤は漫画読者を置いてけぼりにする描写が多いので、
漫画読者は理解した上での再読に新しい発見がある。

逆に この話、もう二度と出てこなかったな、とか
これ伏線として張ったけど回収されなかったな、とか粗も見えるけど…。

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こういう説明は痺れるところ。本書やゲームをキッカケに五行や八卦を学ぶ人もいるだろう。

1話目は小天狗(こてんぐ)大騒動。
アクラムとの大きな話が終わったから小休止の日常回ですかね。
『4巻』のラストも日常回となっています。

『3巻』で泰明が嵯峨野で調伏していたのは この天狗ですね。
こういう繋がりが読めるのも長編化のメリットでしょう。

小天狗はマスコットキャラなのか?
それともゲーム内では郵便屋の役割なのだろうか。
小天狗もまた攻略対象なのかと思ったが、背負ったのは結構 重い役割でしたね。

物語終盤で ああなったけど、最後は ああなると予想していたが、そうはならなかった。
これはページ数の関係なのか、忘れ去られたのか、
それとも物語に重みを出したのかが よく分からなかった。
再登場して欲しかったなぁ…。


休止を挟んで語られるのは、7人目の八葉と主人公・あかね にかけられた呪いの話。

『3巻』でも あかね は呪詛をかけられたが、その時は泰明が返り討ちにしていた。

しかし今回は、怨霊の憑りついた鬼側の道具・八絃琴(はちげんきん)の音によって。
あかね に呪いがかけられ、彼女は昏睡状態になってしまう。

体内の神気を乱された彼女は年単位で目を覚まさない可能性があった。


今回の事件の首謀者はアクラムの身体に八葉が傷を負わせたことを恨むセフル。
今回は怒りに燃えた彼の単独行動らしい。

鬼の中でも子供の部類に入るセフルは、ショートパンツの装い。
もはや和服ではなく洋服の部類である。
現代なら少年っぽいところが魅力の中学生ぐらいか。
あかね がセフルに手を出したら犯罪か。

セフルは八葉が命と引き換えに本来は琴にないはずの八本目の絃をつま弾けば、
あるいは神子(みこ・あかね)は助かるだろうと口添えをする。

鬼側の目的は あかね の命ではない、
八葉という彼女を守る存在が欠けることが大事なのである。


陰陽師・泰明(やすあき)によって捕縛されたセフルを助け出しに現れたのはイクティダール。
これまでの西洋風の鬼に対して、中東・インド系(?)なイクティダール。

とにかく京の人々にとって異国人風であれば鬼の人種は問わないということか。

イクティダールは泰明の捕縛を軽々と断ち切っていたことから、
セフルは考えも力も まだまだ未熟だということが分かる。

鬼側も主要人物は全員が登場し、
鬼と八葉の交流や因縁も生まれ始める。
八葉内だけでなく、種族を越えての人間関係も読みどころ。
というか、それが描けるほど恋愛関係のイベントが少なすぎる ということなのだが。


の八絃琴の呪いを解くために登場するのが、
八葉に目覚めたばかりの永泉(えいせん)。

彼は今上天皇の腹違いの弟という京の中でも この上ない血筋。

永泉は現代ならエリート御曹司だろうか。
世俗に疲れた御曹司の恋は現代劇なら安心して夢が見られて楽しいだろう。

永泉は政略に利用された過去があるので、
自分の存在を隠すように生きている。
その性格は変わらず八葉の中でも終始 地味であった。
初登場から、本命候補にはならないだろうな、と見当がつく一人である。

そして主上(おかみ)も初の顔出し。
主上も若くて(20代中盤?)、そしてイケメン。
さすがに やんごとなき血筋の方を攻略対象にするほど無礼ではなかったか。

そういえば あかね と主上は直接的な対面は一度もありませんでしたね(多分)。
間接的には経済的支援などをされているが、
龍神の神子として主上に挨拶に出向くなどもしていない。

これは主上といえども、あかね に会ってしまったら、
恋仲になってしまう可能性が生まれてしまうからでしょうか。

ある意味で あかね は魔性の女性です。
変なフラグが立たないように、徹底して遠ざけたのでしょう。


永泉は八絃琴に対して命をも捧げる覚悟で臨み、
実際に傷を負いながらも その呪いを解くことに成功した。

ただし その活躍を見て欲しかった あかねは昏睡中で、
目覚めた後の感謝の言葉も割愛されている始末。
恋愛のメインキャラだったら この後の交流を描かない訳ないのに。

目を覚ました あかねが声を掛けたのは詩紋(しもん)とイノリだけ。
詩紋は心配で眠らず目を赤くしていたら、
彼女に膝枕をしてもらうという役得付き。

この不遇が永泉が永泉たる由縁か…。


絃琴の話を終えた後は、この時代における日常回。
恋愛要素が少なすぎる本書において、恋愛を感じさせる一編。

愛し合いながらも伴侶になれない恋人の橋渡しに、
あかね と八葉が奔走するという内容。

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まさか八葉が全員集合(友雅・ともまさ は宝珠持ってないが)しての初めての協力作戦が これとは(笑)
私は『4巻』の中で一番好きな内容かもしれない。
こういう日常回で、あかね との恋愛イベントを数多く起こして欲しかった。
ハッキリ言って戦闘が邪魔である(笑)
鬼との対決は最後の2巻ぐらいで、まいて終わらせてもいいから…。

ってか、↑の八葉全員集合の一コマ、
これ あかねの好感度順に並んでたりしないよね…?

天真(てんま)と頼久(よりひさ)が濃くて、
永泉と鷹通はほぼ影、という順位がやけにリアルに思える。


一芝居打って出た際には出番のなかった鷹通(たかみち)が、
本業である戸籍を改編するという処罰モノの活躍をしているのが面白い。
彼もまた不遇な人間の一人だろう。

泰明も本来の陰陽師の仕事とは離れた詐欺師まがいの行為をしている。
男女の仲を少しでも学べただろうか。