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少女漫画と小説の感想ブログです

YouTuber・アクマリアによる THE FIRST TAKEが バズりまくり!!

悪魔とラブソング 12 (マーガレットコミックスDIGITAL)
桃森 ミヨシ(とうもり みよし)
悪魔とラブソング(あくまとらぶそんぐ)
第12巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★☆(5点)
 

父ジョンとも和解し、横須賀から戻ってきたマリア。一方、目黒の右手のケガは悪くなっていき…。ついに、衝撃の発言を!! マリアと目黒、2人の未来は…!? 激動のクロス編、いよいよクライマックスです!!

簡潔完結感想文

  • 決着。クロスは愛の輪。排除の論理に罪の重さは関係ありません。
  • 別離。一線を越えるデートの日。しかし2人の隔たりは地球の裏側まで⁉
  • 空港。限りなく近づいた永遠の距離。それを埋めるのは意外な歌声。

森ミヨシは二度 同じことをする、の 12巻。

※前作『ハツカレ』のネタバレを含みますのでご注意を。

別離である。
『12巻』ではマリアと目黒(めぐろ)が離れることになるのだが、
思えば『ハツカレ』でも最終巻の前に遠距離恋愛を持ち込んでいた。

遠距離恋愛や別れの危機は少女漫画では あるあるのクライマックス展開ではあるが、
同じ作者で二度続けて同じ内容を描くのは読者としてはガッカリである。

また、これ以外にも この作品中で同じことをしているのも気になる。

少し前まで喉の病気で声が出なくなった あんな がいたのに、
マリアの声が出なくなる失声症を患うことに違和感があった。

そして身近な人がアメリカに行くのも あんな でやったこと。

なぜ こんなに あんな と同じことをさせるのだろうか。
これで あんな が最終回までに再登場して見せ場があるのなら、
あんな もマリアの輪の一部だった、と納得できるんですが、
そんなこともなく、あんな の件は ほぼスルーされる。

そんな物語から追放した人は二度と登場させない排他的な感じが嫌いです。

元・クラスメイトのハナちゃんや あんな は もう戻ってこない人々。
これで世界の輪とか友情とか言うんだから二律背反もいいところ。

結局、マリアを中心(頂点)とした世界でしかないことが残念だ。

作中の「ラブリー変換」はマリアにとって清浄なる世界を創るための用語なのだろうか。
マリアに忠実な者は残留、汚いものは視界から消す。

人工的に美しい世界が出来上がっても、読者は嬉しくありません。


リアが目覚めたラブリー変換は継続中で、血縁者と新しい関係を構築する。

実の父親・ジョンとも初対面を果たし、彼のことを赦すマリア。

その父からクロスは母・杏奈(あんな)のかたみ だと知らされる。
親友と おそろいで作った愛の輪のおまもり、だそうだ。

生前の母と手紙のやり取りをしていたジョンは、
杏奈の人生の全てを知る勢いである。


マリアは後悔と懺悔を繰り返す父に向かい、
「それよりママへの きもちが ききたいな」
「ママが愛されてた はなしを ききたい」と言う。

…で、「ママが愛されてた」ってのは具体的にいつ??

性犯罪の被害者と加害者が手紙で遣り取りをして、
加害者が一方的に好意を募らせたら、その人は愛されてた、ってことになるの??

マリアは「ラブリー変換」してるかもしれないが、
母は、自分が被害者となってから満たされた時など一秒たりとも無かったと思うよ。

娘のマリアが母を二度 凌辱してどうするんだ。

間延びした「あんな編」の失敗の教訓からか、
結論を急いだら、情がごっそりと失われた。

マリアと父親は もっと微妙な関係でいるべきだった。


リアに声が回復したことで、目黒とのデートが実現する。

マリアは自分たちの関係が一歩進むことを予測し、
友人たちに具体的な手ほどきのアドバイスを望む。
だが、当日の目黒は浮かれた様子がなく…。

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恋愛アドバイザー・神田による男性をドキッとさせる秘訣満載。自分の恋は上手くいかないけどね…。

デートは横浜周遊思い出巡り。

その中で目黒が通っていた音楽教室の榊(さかき)先生、再登場。

彼はこれが最後の登場でしょうか(『13巻』でも少し登場)。
名前に「申」がある「申し子」の1人かと思いましたが、
意味あり気に出てきた割に、見事に何にもなかったね、この人。
「あんな編」が不発に終わったことが影響しているのだろうか。

もし『7巻』で幻に終わった、
マリア・目黒・神田(かんだ)・あんな の4人でのユニット活動があったら、少しは違ったのかな。

榊は いきなり有名なボイストレーナー設定になっている。

あれ? 作曲科出身じゃなかったっけ?
本来ならオリジナル曲の作曲とか、編曲・プロデューサー的役割だったのに、
その才能の使い道が漫画内では絶たれたので、路線変更かな?

目黒は声の専門家となった榊にマリアの今後を託した。
読者としては敵なのか味方なのか分からない人に託さないでくれと思うが…。


1日かけてデートをして、
やりたいことをやらしてくれるのに、マリアの心は不安で満たされていく。

そして観覧車内でのキス、
それを合図に、マリアは目黒の隠していることを聞き出す。

目黒は傷ついた手の手術を決意していた。
だが、元通りになるまでの確率は10%。

リハビリの苛立ちに マリアを巻き込まないように物理的な距離をとる提案する目黒。
目黒にとって今日は最後のデートだったのだ。

男性キャラって、こういう独り善がりな結論を出しますよね。
恋人同士のことなのに相談もしない、自分が格好つけることを優先する。


ただし目黒は恋人関係の解消を提案している訳ではない。
あくまで距離的な別離があることを示唆しているだけ。
手術の地はアメリカ。

マリアは子供みたいに、全力で、全身全霊で必死で目黒を引き留める。
特別な関係を望むマリアに目黒は行為を中断する。

彼はマリアに申し訳がなくて、
彼女より自分の手を守ろうとした自分が嫌いになっている。
自分の汚さを嫌というほど自覚してしまったから。

そこへマリアは目黒にピアノの演奏を望む。
演奏の音色を通して目黒との思い出が回想される。

痛みで手が止まった目黒に代わって、マリアは歌で曲を繋ぐ。
そして歌い終わった後、究極の「ラブリー変換」をしてみせた。

「あたしの好きな目黒」でいて欲しいというマリアの願いは、
一方的で、独善的に思えるが、彼女なりの目黒への最大のエール。
乙女の自分の弱さも変換して目黒の背中を後押しする言葉に変えていく。

号泣しながら目黒に訴えるマリアには傲慢さはありません。
これは目黒への押し付けではなく、
マリアにとって、目黒を応援できる 在りたい自分になるための「ラブリー変換」なのである。


黒が手術のため渡米することで、
本校を退学になったことを喜ばしいことの様に報告する担任。
神よ、天罰を!と思ってしまう。


2人が別離することを2人以上に心配し騒ぎ立てるクラスメイトたち。
黒須だけは全力で喜んでおりますが…(笑)

でも目黒は自信を持っている。
自分はマリア以外に惚れない自信を。

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自分の気持ちより好きな子と親友の恋路を優先する、人間愛に溢れた「ラブリー変換」。

マリアに友情以上の感情を持つ神田は、目黒にお節介を焼く。

そして目黒、出発の日も神田回。
今度はマリアにお節介を焼き、空港へと2人で急ぐ。

マリア自身の物語としては『11巻』で、
目黒との恋愛は『12巻』の空港シーンで終わりになります。

遠距離恋愛とか、空港での別れのシーン(語弊あり)とか、
一風変わった物語は、最終的に少女漫画の王道を歩いております。

空港のシーンは意外な展開。

分かりやすい感動ではなく、本書ならではの愛の結末で好感を持った。
マリアではなく目黒が歌に想いを乗せたことが かえって感動的だ。
印象的な告白&別れのシーンとなりました。
マリアも揺らがない想いを手にしたようでホッと胸をなでおろす。


目黒の歌に合わせて歌ったことで、
マリアは空港に居合わせた人からアンコールを要請され、リクエストに応えて歌う。
ここ、またマリアは舞い上がってませんかね。

街中で無暗に歌うと悪いことが起きかねないのだが…(『9巻』

空港で歌うマリアを撮影していた神田はそれをYouTubeにアップ(無断で)。
それが次の展開へと繋がる…。


れが最終章「マリア YouTuber編」である(嘘)

ただ、全面的に嘘ではなく、新しい歌の発表方法、
そして海外にいる目黒へのメッセージとしてYouTubeが活用される。
2010年前後の時点でYouTubeを物語に組み込んだのは凄いことだと思う。

録画機器の画質も悪いだろうし、この時代の携帯電話から
動画をアップロードしたら料金と時間が大変なことになりそうだ。


そうして恋人と離れたマリアを励ます「申し子」たち。

まるで、彼女が悲しみの海に沈んだら、この世界を退屈なものだと思ったら、
世界が崩壊すると思い込む、「ハルヒ」的な展開である。

まっ、結局、何でもかんでも思い通りになっているという点で
マリアが女王様であることには変わりはない。

世界がラブリーになり過ぎて、
汚いものに蓋をし過ぎていることが気になるところ。