《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

21世紀のシンデレラは恋する相手を自分で決めたので、王子様は諦めました。

初恋はじめました。(4) (なかよしコミックス)
山田 デイジー(やまだ でいじー)
初恋はじめました。(はつこいはじめました。)
第04巻評価:★★☆(5点)
  総合評価:★★(4点)
 

恋愛から解脱した“脱モテ”生活をエンジョイしていた姫子(ひめこ)。年下イケメンの春樹(はるき)から突然告白され、困っていたのに、オレ様な本田(ほんだ)からも告白されて…学園中が大騒ぎ! 騒ぎを収めるために、姫子は春樹と付き合う“フリ”をすることに…。しかし、恋人のフリでは終わらせないと迫る春樹に押され…、恋を教わるデートをするハメになってしまったけど…!? ぜ、絶対に、無理ですから!!

簡潔完結感想文

  • キレるカップル。普段は温厚な2人なのにキレるとリミッターが振り切れる。怖いよ。
  • 新しい靴を買わなくちゃ。靴を片方なくしたシンデレラは新しい靴を買って家に帰る。
  • シンデレラのために靴持参で来訪した王子は、彼女が他の男を選んだことを知り呆然。

して『デート〜恋とはどんなものかしら〜』の 4巻。

今回、初めてのデートを前提としたデートする 姫子(ひめこ)と春樹(はるき)の2人。

春樹を意識して着飾っている自分が急に恥ずかしくなり、
仮病を使ってドタキャンしようとしていた姫子だったが、
その心の遷移まで春樹に正直に話すと、春樹はまた姫子の可愛さを知る。

しかし姫子は自分とは違って忙しい春樹の時間を何だと思ってるんでしょうね。

新しい服を着て街に出る緊張感や恋する乙女の恥じらう気持ちは分かるが、
自分から提案した本格的なデートを自己の都合で投げ出そうというのは いかがなものか。

根拠が不明な強気な面を持ちながらヘタレでもある。
ここが、春樹にとっては「アバタもエクボ」で可愛いと思えるんでしょうけど。

姫子も自分の性格を知って、少しは内省的になるかと思いきや…。


ートコースとして春樹が設定したのは、自分のルーツでもある通っていたスポーツクラブ。

ここで久々に姫子のお説教全開です。

クラブの卒業生で、スターの春樹の登場に沸き立つ子供たち。
その中で、怪我で見学している子供が春樹と練習をしたいと駄々をこね始めた。

春樹に他の子供たちと練習を続けさせるため、その子に
「敬意を払えない人間に おそわる資格はないわ でていきなさい」、
とキツい言葉で たしなめる姫子。

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ある意味で 姫子が一番 姫子らしくいる場面は、講釈を垂れている場面だと思う。

…なんで、この人は人に注意する時は こんなに上から目線なんでしょうね。
子供であっても大人と同じ言葉遣いをするのはポリシーとして理解できますが、
「ケガ人はだまりなさい じゃまよ」と初対面の子供に向かって言える精神が理解できません。

人に対して、意見を言う時の攻撃性が ちょっと怖い。
日頃ストレスのたまった中年男女が急にキレる現象に似ている気がする。

そして「敬意を払えない人間」という言葉は そっくりそのままお返ししたい。
春樹に敬意を払わずドタキャンした君なのだよ。
それが僅かな時間で子供に説教するんだから天晴だよ…。

ちなみに姫子の言動は「センパイの言動すべて愛おしい」と春樹に評される。
偉そうにしてても愛されるんだからいいですよね(嫉妬)


回は春樹も意外な一面を見せる。

件(くだん)の怪我の子が順番を無視してハイジャンプをしたから、春樹 激おこ。
そういえば この子、黒髪といい性格といい ミニ本田(ほんだ)って感じがしますね。

ルールを守らない子に、容赦のない春樹。
「オレはオマエみたいなヤツが一番 ゆるせない」

姫子が、飴と鞭を使い分ける春樹のことを深く知る場面として用意されたのだろうが、
ここまで強い拒絶は必要だったか。

姫子といい春樹といい、2人してモンスターペアレンツになりそうな予感…。

そして やっぱり春樹って、人心を掌握する術を持っているのかもしれない。
全てが自分の持っていきたい方向に進んでいる。


んなミニ本田の騒動を経て、登場するのが本物の本田。

春樹とのデートの途中で本田に拉致される姫子。

そこで彼は姫子たちの交際の嘘を知っていることを告白する。
本田から逃れるために ついた嘘が彼にバレており、彼は再び姫子を追い始めた。

姫子が履きたかったヒールの靴で足を痛めたこと知った本田は、
それを春樹に言い出せなかったことを指摘する。

春樹のステータスや人気に対して姫子なりに気を遣っていることに対して本田は、

「オマエは気なんかつかわなくていい」
「オレはいつものオマエが好きだ」
「オマエらしくいてくれるなら オレのことをすきじゃなくていい」
と、素顔の姫子を包容する言葉を紡ぐ。

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ひざまずいて深い愛の言葉を紡いだことで、本田が一気に王子様に昇格。

本田の愛は深すぎませんか⁉
姫子と同級生ですが、大人の包容力を見せつけてくれてます。
でも この言葉で一気に春樹の恋愛が陳腐化してしまった気がする…。

これは少女漫画のフラグとしては本命フラグですね。
初登場時に春樹の頭に水を かけてから アンチ本田の私も 宗旨替えをしそうになりました。


本田が消毒液を買ってくる間(優しい)に、逃げ出した姫子は 春樹と合流。

本田には片方の靴を逃げ出さない保険として預かられたので、新しい靴を購入することに。
その際、靴を脱いだ姫子の足を見て、それ以前から彼女が無理をしていたことに気づく春樹。

春樹もまた初恋であり初デート。
気遣える範囲には限りがあり、自分の至らなさを思い知らされる。

姫子がした背伸びは自分がさせた無理で、
そのせいで怪我をしたこと、黙っていた気遣いは不要だという春樹。

でも それは背伸びをしたかった姫子の気持ちを無視している。
少しでも見た目が良くなるようにという姫子の気遣いだったのに。

少しずつ すれ違い始める2人。
段々、本田こそ姫子の理解者だという気がしてきました。


田に偽装交際がバレていた情報を春樹と共有し、
春樹に新たな対処法を託す姫子だったが…。

だが それではテスト勉強に身の入らない姫子は、春樹を呼び出し自分から動く。

この時、選んだのは先日のデートで春樹が購入してくれた
新しい靴であることが、姫子の選択だろう。

”シンデレラ”として王子様が靴を持って来てくれるのを待つ選択肢もあった。

だが、彼女は自分の意思で靴を履き、走って彼のもとに走ることを選んだ。
三角関係としては この時点で終止符が打たれてるんですね。

『3巻』の終わりから靴が、姫子の変化の大きな象徴となっていますね。
靴を巡る、姫子の高くなった目線や背伸び、気遣いのお話など上手くまとまっています。

姫子がヒールのない新しい靴を選んだことは、
彼女が等身大で春樹に向き合う決意でもあるんでしょうか。
その次のデートの場面は足に何を履いているかが描写されていないんですよね。

少しの失敗を重ねて、彼らは改めて相手と向き合い続ける。


そして姫子は春樹に告げる。
「あなた以外から恋をおそわる気はまったくない」
まったくないというのが、彼女の意識の表れですね。

その場面を見て、ゴミ箱にヒールの靴を捨てる本田。
しかし本田は靴をなぜ持っていたのでしょうか。

「”シンデレラ”みたいに あのくつを持って むかえにい」く最中だったのか。
だが、王子様が息を切らして姫(子)に会いに行ったら、公園で他の男とイチャついている場面に遭遇。

王子様は本格的に失恋したのか。
本田、お前のこと忘れないぜ…。


そして改めてデートに臨む2人。
相変わらず春樹は眩しいが、姫子の中には相手を知りたいという気持ちも芽生えている。

姫子の読んでいた本から、自分も本の興味の幅を広げた春樹。
そして根っからの本好きということもあり、彼の読んだ本が気になる姫子。

この連鎖、そして世界が広がっていく感じが良いですね。
気になる人が読んだ本は読みたくなるものです。


デートは どんなものかしら?
デートは1人では出来ないから 難しく、そして楽しい。