《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

目的を果たすためなら たとえ火の中 水の上。比喩ではありません。修行の成果です。

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岩本 ナオ(いわもと なお)
町でうわさの天狗の子(まちでうわさのてんぐのこ)
第02巻評価:★★★★(8点)
  総合評価:★★★★☆(9点)
 

憧れのタケル君とつきあうことになった秋姫(あきひめ)。早速、デートの予定を組もうと考えるが、週末にはお山で100年ぶりに“修験道(しゅげんどう)”の大イベントが行われることになっていた。天狗の娘・秋姫も参加しないわけにはいかず、初デートはひとまずお預けに。でも、ちょっとずつタケル君との距離も縮まってきて…♪ ドキドキ青春ファンタジー、第2巻♥

簡潔完結感想文

  • 交際スタート。それでも8人から君を見つけたよ 根拠はあるけど♪ 忌避するDNAに今回は感謝?
  • お山のイベント。秋姫がクラスメイトと仲よくなった次は瞬ちゃんの番。秋姫奔走、のち沈没。
  • デートのための修行。春の海は危険がいっぱい。デートを邪魔されないための滝修行に火渡り。

通の恋愛がしたくて天狗から遠ざかっているはずが近づいているような 2巻。

『2巻』は主人公・秋姫(あきひめ)が、
晴れて学校のイケメン男子・タケル君と恋人関係になるところから始まる。

そんな初々しい交際に舞い上がったり落ち込んだりする秋姫の様子を見せながら、
彼女の天狗としての立ち位置が それとなく示されているように思う。

それは同じく天狗の子である、京都からの転校生・紅葉(モミジ)を登場させたことで、
より明確になったのではないかと思われる。

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初登場のモミジ。モミジ も秋姫と一緒で 徳 <<< 力 の人なのかな。どこまでも同じ立場。

またモミジは秋姫と兄弟同然の瞬(しゅん)ちゃん に近しい人として描かれる。

モミジの父親は「瞬ちゃんのNo.1大好きカラス天狗様」で、
モミジは秋姫とは違い、天狗になることを目指して修行している瞬ちゃん側の人間。

これは年々、瞬ちゃんとの距離を感じ淋しさを覚える秋姫にとって、
更に淋しさを募らせる大きな出来事となっている。


またモミジは『2巻』の中で起きる2つのイベントでも、大きな役割を担っている。

モミジは、天狗になる道を選んだ秋姫のもう一つの姿だろう。

秋姫が天狗を目指して修行を積んでいれば、出来ていたことや、
果たしていた務めを、モミジが代わって行っている。

秋姫が天狗として生きることを選んだ場合、
瞬ちゃんのとなりでどう生きていたかが、モミジによって類推される。

そんな中、秋姫は普通の女子高生として、普通の恋愛をすることを目指すのだが、
自分が「天狗の子」である立場や障害を思い知らされるのであった…。


向きには、ずっとタケル君との交際の様子が描かれている。

交際初日から彼の家に夕ご飯をご馳走になったり(with 瞬ちゃん)、
一緒に下校するために話しかけるタイミングを窺ったり、と普通の恋愛の描写もある。

だが週末のデートの予定が、父親の治める山でのイベントに巻き込まれたり、
タケル君と海へ出かけるためには、修行しなければならなかったりと制約も多い。

天狗と人の血を受け継ぐ秋姫は、まさに人と天狗を行ったり来たりしているのだ。


タケル君は嘘をつけないけど、裏表はないし人として優しい。
だが恋愛に夢を見がちな秋姫は、自分だけの特別感や胸の高鳴りが欲しい。

そんな野望を持ちつつも、現実は眷属見習いの八郎坊(猪)の身体を洗ったりするだけ。

ただ、秋姫もフランクで率直だから、
会話の中で相手の長所を発見し、一層タケル君に親しみを感じる。
逆もまた然り。
問題なく情が折り重なっているように思う。


なみに秋姫にプライバシーはありません。

元々、母親には恋の相談をしてたりしましたが、
父の住まう お山では見習いたちの耳目が終結して、
一挙手一投足が見守られている(見張られている)感じである。

タケル君との交際も筒抜けである。

秋姫の父で、大天狗・康徳坊(こうとくぼう)様がタケル君を抹殺(?)しようとするも、
彼が、仏師として高名な神谷(かみや)家の者だと知って、矛を収めた。

実は そのことがタケルが秋姫に安心感をもたらす原因でもあるらしい。

『1巻』でタケルが黒板に描いた天狗の絵が とても上手かったのも、
その天狗の目が動いたのも、こういう理由からだったのか。

ちなみに緑峰山(りょくほうざん)の修行イベントの日には、
タケル君と父の康徳坊様が初対面。

そういえば秋姫もタケル君の家の家族とは既に会っている。
少女漫画のセオリーから言うと家族への紹介は結婚への第一歩だったりするのですが…。


が、タケル君との交際は一筋縄ではいかないことが判明する。

特にパワースポットだと知り、秋姫が行きたいと所望する海は危険らしい。

それは互いの血に因るもの。
秋姫は山の天狗の血を引いているので、海との相性が悪い。
更に仏師の家系のタケル君は作品に命を吹き込む才能に悪い輩に狙われやすいのだ。

なんだか逆境が多いですね。
ただ逆境のある恋愛こそ燃えるのも事実。

なので燃える火の中に手を突っ込んだり、歩いたりする修行に移ることになった。
モミジの提案で2週間の修行をすることで妖などへの抵抗力をつけようという作戦らしい。

前述の通り、普通のデートをするために、
一番なりたくない天狗の修行をするという矛盾の構図が面白いですね。

ただ恋する女子高生の秋姫にとっては重大問題。

天狗の修行を重ねて、うっかり天狗になったりしたらタケル君に嫌われてしまうかもしれない。
身体中から毛が生えてしまうことは女子高生にとっては死活問題なのだ。

そんな葛藤の中で秋姫の天狗としての才能が垣間見られる。

普通でいようと、普通のままでいたいとする秋姫の自制が修行を進展させず、
人のために必死になり、リミッターを外した時、本来の力が解放された。

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好きな人とデートに行くための修行。愛する家族同然の者たちを守るための修行の成果。

秋姫の才能と、瞬ちゃんの地道な努力、
この2つがぶつかり合って問題を起こさないかが今の心配事です…。


登場のモミジをはじめ、更に登場人物が多くなりましたね。

秋姫=太郎坊、瞬ちゃん=次郎坊、以下 十郎坊までいるらしい見習いたちも四匹が登場済み。

動物の眷属 見習いたちは人型にも変化できるらしく、今回はお山のイベントで人型で登場。
なんだか2倍賑やかに感じますね。

登場人物が渋滞するのを防ぐためか、
今回、人型時の顔を見せるのは狐の三郎坊だけ。
残りの全員にも顔が用意されているのでしょうか。


また、そこら中に恋の種が蒔かれるのが『2巻』。

その中では誰が好きなのか いまいちハッキリしなかった親友・ミドリちゃんの恋(仮)に注目。
ミドリちゃんは、小学校の頃、ピアノ教室で一緒だった1つ年上のユカリ君と接近中。

いや、ミドリちゃんの想い人が秋姫の知らない人で良かった。

ミドリちゃんはポーカーフェイスで自分の気持ちを素直に発さないだろうから、
瞬ちゃん か タケル君のことを密かにずっと好きなのではと危惧していたのだ。

タケル君だったら、応援しつつも家では泣いてるみたいな状況じゃないかと、
いつか2人の友情が終わってしまうのではないかと心配していた。


恋愛関係では、瞬ちゃんの存在に嫉妬を覚えるタケル君に驚いた。
彼も少しずつ秋姫への気持ちが友達から移行しているのかな。

また、その嫉妬を瞬ちゃんに直接 話している その間柄も眩しい。

瞬ちゃんは小中学校に通ってないので高校生にして初めて同級生になった彼ら。
顔見知りではあったが、親友とはまだ呼べない距離感。
タケル君が「瞬君」と呼ぶ その丁寧さが好きだ。


瞬ちゃんに関して言えば、相変わらずのヒーローっぷりが素敵である。

自分が憧れている人の、とっておきの話の最中に、
秋姫の異変を感じ取り、飛んでいくその姿。

彼の優先順位が如実に表れているエピソードではないか。


瞬ちゃんといえば今回初めて、彼の出自が明かされる。

瞬ちゃんは秋姫が生まれて間もなくの頃、
お山のふもとで康徳様が見つけた子だったのだ。

そうして「お母さんのおっぱい取り合ってた記憶」もある2人。
本当に姉弟のように育てられたのだ。
(話の流れから察するに誕生日は秋姫の方が早いだろう)。

だが、タケル君も父・康徳様も、
血が繋がっていないが故に、年頃になった秋姫と瞬ちゃんのことを気にするのだ。

ただ、血が繋がっていなくても康徳様にとって瞬ちゃんは息子同然。

今回、お山の修行イベントに参加した瞬ちゃんのクラスメイトが、
瞬ちゃんとの写真を撮りたいという要望を聞き、秋姫が先導して、お山の禁足地内に入った。

娘に甘い康徳様も、さすがに秋姫をたしなめるが、理由を聞いて許可する。

康徳様の中にある瞬ちゃんへの愛情がしっかりと伝わる一幕である。
どの場面を切り取っても、人と人の繋がりが感じられるから、本書はサイコーなのである。