《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

主に少女漫画と小説の感想ブログです

月明かりの下でのキス@沖縄。おれ人生のピークじゃね? 間違いナイトプール パシャパシャ!

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末次由紀(すえつぐゆき)
エデンの花(えでんのはな)
第04巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★(6点)
 

「羽柴くんが好き」。ようやく自分の想いに気づいたみどり。しかし、みどりを憎むクラスメートが、みどりの裸の写真をバラまいた! 再び絶望に突き落とされた、みどりがとった行動とは? そんな中、アメリカから爆弾ギャルが時緒を訪ねてきて⁉ 苦しみの過去から光あふれる未来へ。想いを刻みながら進む運命の愛の伝説、第4章。

簡潔完結感想文

  • 今まで以上に好奇の目に晒される学校内。でも一人だけ、どんな私も見捨てない人がいてくれるから…。
  • 新キャラ登場。爆弾ギャルは巨大な台風。嫌なことのあった土地を離れて沖縄へ。四角関係ラブコメ編。
  • 恋人は愛されている実感させてくれる人。どんな時でも あきらめないで私を見ていて。そしたら私は…。

獄から天国へ。でも天国の土俵際に立っている 4巻。

『3巻』で自身のポルノ画像を教室内に貼り出され、
再度 地獄に落とされた みどりの学校生活。

だが、恋人となった羽柴(はしば)が何を知っても みどり と共にいることを態度で示してくれたことで、
みどり は毅然とした態度で学校へ登校することが出来た。

イジメというのは常に「弱者」となる者を探す行為でもあり、
みどり への攻撃が不発に終わったことを思い知った女子生徒たちは、
この計画の責任者を、その行為に走った心弱き者として槍玉に挙げる

みどりの写真を貼った実行者の宮田(みやた)が女子生徒の中で議題になり、
彼女は実質クラス内から追放処分を受ける。

彼女たちは『1巻』で、みどり が宮田の他生徒への嫌がらせの犯行現場を見たと言っても信じなかったが、
今回は宮田自身の株が落ちていることもあって、女子生徒は彼女を切り捨てる。

宮田は、自身の株が落ちるという人間関係のストレスや焦燥が原因で、
こんな卑劣な行為をしたのに、更に孤絶する結果となった。


一連の女子生徒たちの心の流れは、客観的に見れば醜いのだが、
同時にリアルだと共感もする自分もいる。

自分が多数派でいるために、更なる弱者を探すために、
徒党を組んでしまう彼女たちの中にこそある弱さは、とても理解が出来る。


そうして八方美人の宮田が陥った袋小路。
彼女は みどり への攻撃を止めないことで みどり が追い詰められることを望むが、
自分を認めてくれる人たち(羽柴や兄)の存在が みどり を変える。

みどり にしては珍しく自分の感情を露わにしながら理由を問い詰める。

宮田は自分の努力と正反対に離れていく人心と、
みどりに羽柴という彼氏が出来て幸せに見える、と語りだす。

そんな一方的な動機と羨望に みどり は宮田に平手を浴びせて、
ポルノ撮影など前の家庭で行われていた性的暴行を告白するみどり。
そして、それを廊下で聞いていた羽柴…。

みどり が宮田に訴える、
「自分の心の醜さと あんたも闘いなさいよ」という言葉は秀逸ですね。
これは人を羨んでしまう時に思い返したい言葉です。


そういえば学校側もこの問題を把握していると思うが、
大人たちからの尋問や叱責の描写は一切ありませんでしたね。
みどり が通っているのは結構いい私立学校みたいなので、
みどり が一方的に何らかの処分を受けてもおかしくはないはずですが。

飽くまでもメインは同世代との戦いということでしょうか。


校と言う地獄問題が解決すると、またまたラブコメに戻る。

夏休みを迎えると新キャラが登場し、日本の楽園・沖縄へ舞台を移すのが『4巻』です。

新キャラは二階堂 紫(にかいどう ゆかり)。
そう、兄の時緒(ときお)と兄弟同然に育った家の子・正宗(まさむね)の妹である。

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憎たらしいけど嫌われない、セクシーさの中に純情を隠し持つ、無敵のキャラクタ・紫(ゆかり)。

ここで2組の兄妹が揃いましたね。
正宗もテンションが高く、お祭りボーイだったが、紫は まさに爆弾。
彼女の前では何もかもが彼女の思い通りに動く。
いや、動くように仕向ける。
コスプレ男・正宗が常識人に見えるほど、紫の破壊力は凄まじい。


そして紫は、時緒の元カノ ポジションでもあります。
『3巻』でも時緒の過去に彼女がいたことにとげが刺さったと感じたみどりに、
スキンシップやキスを含めた現実が付きつけられる。

また、紫を通して、みどり は自分の知らない兄の過ごした経験や時間を感じる。
これは『2巻』で時緒が みどり の凄惨な過去を知って後悔したものに似ていると言えば似ている構造です。

兄妹という確かな絆は感じられるけど、
離れて暮らした13年間という時間の大河が2人の間を流れている。
その断絶を含めて、みどり が時緒と どういう兄妹関係を構築するか、が今後の課題か。


紫は若月家の面々だけじゃなく、
みどりとの約束を守って若月家を訪れた羽柴まで巻き込む。
そして羽柴を沖縄に連行する。
当て身を食らわせてまで(笑)

遅れて到着した兄たちにも、経済的優位を確立して懐柔させる手際はお見事。
そして全員が女王様の手下に成り果てました。

みどりが薔薇の女王なら、紫はワガママの女王ですね。
キャラとして確立している上に、時緒と みどり のお邪魔虫としても大活躍。
どんなことをしても嫌いになりきれないところが最大の強みですね。


紫のもう一つの役割は、愛情の表し方を みどり に実感させること。
紫の時緒への熱烈な想い、情熱を感じて、好きにも種類があることを知るみどり。
紫から羽柴への冷静な関係を指摘される。

今の自分が羽柴に対して、紫の時緒への想いの熱量に届いていないことは、
みどりが自制してしまっているからなのか。

紫の存在や言葉は、みどり の根幹を静かに確実に揺らしていく…。


確かに、みどり は非常識な展開に面を食らっているのだと思いましたが、
彼氏との初デート、そしてそれが お泊りとくれば、
通常の少女漫画の主人公ならば、これ以上ないぐらい胸を高鳴らしているはずだ。

しかしみどりにはそれがない。

んーー、なんだか嫌な伏線が張られ出しましたね。
えっ、羽柴くんは本物じゃないの⁉

交際直後にこの仕打ちはあまりにも可哀想だ。
でも、そう言われると羽柴に当て馬感が見えてくる。
良い人すぎるとこうなっちゃうのが少女漫画か。

そして、旅行中にも数々生じる違和感。
みどりの心の中を大きく占めるのは、実は時緒?


時緒という存在がなければ、『4巻』はただの すれ違い巻である。
両想いの後の小さな波乱であって、勝手な嫉妬や羨望も水に流して、
ほら、仲直りのキスをしよう、という内容になっている。

そう、あの みどり が誰かに対して嫉妬しているのだ。

羽柴に対しては、空港で紫とイチャイチャしていたことに対して、
沖縄にホイホイと来たことに対しての苛立ちが募り当たってしまう。

そんなみどりに羽柴も今日の自分の受難を訴え、
そして彼こそがヒロインのように旅行に対しての胸の高鳴りを正直に告白する。

沖縄旅行は、両者とも自分のコンプレックスを刺激されているんですよね。
みどり は紫に対して、羽柴は時緒に対して。

男としての無力さを痛感している羽柴はそれを正直に伝え、改めてみどりへの想いを口にする。
そしてみどりも応える。

好きな人がいるから、よく思われたい自分がいる。

少し前なら、みどり は自分の容姿や体型など気にも留めなかっただろう。
それが気になるのは、彼女よりもよく見られたい男性がいるから。

そして夜の沖縄のプールで口づけを交わす…。

状況だけ見れば、とてもロマンティックな場面。
どれもこれも、ただのすれ違いの演出に見えなくもない。

しかし、どうしてもそれ以上に不穏な空気を感じてしまうのは、
みどり と時緒の間に、兄妹という関係を超えたものが流れ始めているからだろう。


時緒にとって、沖縄は特別な地。
どうやら彼らの親が新婚旅行でこの地に来たらしい。
時緒が日本で妹に再会してやりたかったことの一つなのだろう。

そんな土地で、並んで眠ることになった兄妹。
原因は紫の いびき で、部屋割りの関係上、一番 問題がない組み合わせだったという理由だけなのだが。

この場面、決して みどり が彼氏よりも時緒を選んだという描写ではない。
正宗が自主的に出て行ったのだし、
彼氏の部屋に行くのも意味が出てしまうから当然の帰結ではある。

だが、兄妹が並んで眠る姿を見た羽柴は、光景以上の衝撃を受ける。
朝日の中、手に手を取って眠る姿は、神々しく、そして何か暗示的なものがある。
正宗の言う「最悪のライバル」とはどういう意味なのか。

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光の中で眠る兄妹に、自分では立ち入れない聖域を感じる。警戒レベルがグンと上がる。

だし時緒自体は、羽柴を みどり の彼氏として認めている。

しかし、夜のプールでキスをする妹を見つめる時緒の視線は切なさに満ちていた。

一時は恋人と呼べる関係になったにも関わらず、
「妹」にしか見えなかった紫に対して、
「妹」には見えなくなってきた みどり。

そんな対比構造が浮かんできます。
義兄に続いて、本当の兄というインモラルな関係は、
楽園を再び追われる罪としては十分ではないか…。


一方で、みどり も また、自分の兄への感情が揺れ動いていることを自覚し始めている。

そんなみどりの心中を、的確に見抜くのは羽柴。

彼自身が時緒と みどりを巡って敵対しており、
みどり の時緒への全ての言動を感知しているから思うことがある。

羽柴が みどり に時緒への独占欲を指摘すると、みどりは声高に反論する。
だが図星を突かれると怒りだすのはみどりの癖ではないか…。

また、紫が みどり に対して自分の時緒への特別な感情・関係を語ること、
そして みどり の少し青い羽柴への感情を揶揄すること、
それらが紫の本来の目的を達成していないことが面白い。

紫が意識しないこと(アメリカでの時間や羽柴とのお喋り)は みどり の心を揺るがすが、
意識して意地悪を込めて話すことは、みどりを落ち込ますことなく、
かえって、みどり が意識していない感情(特に時緒に対して)を呼び覚ます結果になっている。

大きな いびき で眠れる獅子を起こしてしまった紫。その代償は…?