《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

目は人を威嚇し 声は人を悩殺 親指は人を癒す。究極の三枚目・三姫のための3巻。

親指からロマンス 3 (花とゆめCOMICS)
椿 いづみ(つばき いづみ)
親指からロマンス(おやゆびからロマンス)
第03巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★☆(5点)
 

ついに始まった裏マッサージ大会。優勝を目指す千愛たち不陶花学園だが、武をライバル視する脳天直下ボイスの持ち主・三姫をはじめ、個性的な強者が揃う山茶花高校の存在が…!? そして千愛と陽介の関係も新展開を迎えそうな気配!?

簡潔完結感想文

  • 裏マッサージ大会開催。凝りをほぐすはずのマッサージするはずの体がガチガチに硬直して…。
  • 恋愛のソーシャルディスタンスは保持。体抜きでも愛し合いたい千愛に対して、陽介は…。
  • 三姫が全てを持っていく3巻。彼がいるところに事件は起きる。楽しい愛され三枚目キャラ。

3巻の3は 新キャラ・三姫(みひめ)の三。
ちなみに ↑ の表紙の右側の緑髪の男が三姫である。

3巻は近隣の公立高校・山茶花(さざんか)高校のマッサージ部員
三姫 周(みひめ あまね)の活躍が徹頭徹尾 描かれている。

確かに良いキャラをしている。
外見は緑の髪に、いつもサングラスをしているのが特徴。

というのも彼の目は恐い。
「クラスメートはおろか 先生まで泣き出したくらいの 筋金入り」だそうだ。

その目が直接 描かれることはないが、
見た者が「化け物」悲鳴を上げて一目散に逃げる様子から、相当なものだと予想される。

だから他人を怯えさせないために、そして自分が無駄に傷つかないために
彼は いつもサングラスをかけている。

ちなみに主人公の千愛(ちあき)は、三姫との二度目の対面の際に彼の素の顔を見たが、
「ちょっとビックリ」はしたものの、過剰な反応をする三姫を見て笑顔になっていた。

このことがキッカケで三姫は千愛のことが気になり始める。
彼はまた、千愛に横恋慕する、陽介の恋のライバルとしての側面も持つ。
美味しいところの融合体のような三姫の出番が増えるのは必然か。

この千愛が三姫の顔を恐れないという描写は、
千愛が陽介に対して顔の評価が一切ないのと通じるのだろう。

要するに千愛にとって顔は人物の評価にとって二の次、三の次なのかもしれない。

実は千愛は陽介も三姫の顔も のっぺらぼうに 見えていたりして…。
人物の判別方法は体つき、ツボーズや声を手掛かりにしてたりして(千愛なら ありえそう)。


もう一つ、三姫の大きな特徴としては男性版ローレライ であること。

彼の低音美声(ボイス)を聞いたものは男女問わず、立ち上がれないほど腰を抜かしてしまう。
これは主人公の千愛も逃れられないみたいで、彼女も立てなくなってしまった。

いつか『月刊少女~』の瀬尾先輩と声で対決してもらいたいものだ。

声で人をある程度言いなりに出来る絶対遵守の力を使えば、
復讐だって国家転覆だって出来そうだが、基本的に人の良い三姫はそんなことはしない。
それしたら、もうマッサージ関係ないしね。

そして自分の好きな子の心を奪うこともしないのが良い。
声で人の心を捻じ曲げてまで獲得する恋に価値はないことを知っているのだろう。

だが、残念ながら、千愛にとって三姫は、マッサージ ≦ 陽介 に続いて三の次 以下の順番だろうけど。


『2巻』のラストで急にその存在が明かされた
「高校生のみが参加でき」「各学校で技術を競い合い優勝」を目指す「裏マッサージ大会」がいよいよ開催される。

そのライバル校として登場するのが山茶花高校であり、三姫なのである。

全16校の参加する大会ではあるが、
新キャラとして登場するのは千愛たちの高校から一番近く、そして強力なライバル校である山茶花高校の面々のみ。
そして出場者は各学校 先鋭3人だけなので、新キャラの大渋滞は起きない。
(といっても3巻だけで5人以上の新キャラが登場しているのだが)


三姫の他の大会出場者もキャラが濃い。
そして山茶花高校は能力者の集まりでもある。

三姫は前述の通り。彼の能力は声だろう。そして目つきの悪さも能力と言えなくもない。

また3年生で部長の桜ノ宮(さくらのみや)も
「解消した凝りが実態となって見える」「悪魔のイリュージョン」という
スタンドみたいな能力を保有する。
ちなみに これはツボの妖精(?)ツボーズとは違い誰でも見られるみたい。

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天下一武道会 ならぬ 裏マッサージ大会。異能力と必殺技の応酬、戦闘力は10000超え⁉

そして1年生の黒松 了(くろまつ りょう)は周囲の音を一切遮断する「無音」の使い手。
ある意味で三姫の天敵だが、同じ高校なので対決などはしない。

ちなみに黒松に関しては三姫の知らないことがあるという話は、
三姫の良い意味での間抜けっぷりが良く出ていたのではないでしょうか。

ただ、この黒松は、陽介と似すぎていて判別に困る。
よく見れば背の高さやら、細部が違うのだろうけど。

作者の作品は多人数の大騒ぎが楽しいが、人数が増えると人を混同してしまうのが難点。
髪型やトーンなど分かりやすい外見的相違が欲しい。

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同一人物や双子ではありません。ほら服とか方言とか違うでしょ。顔は似てるけど…。

…と、能力者たちによる異能マッサージバトル漫画になり始めた本書ですが、
「裏マッサージ大会」やマッサージで勝敗を付ける対決は、今回一回限りで終わり。

大会は1年に1度なのでもう描かれないし、
山茶花高校の部員たちの能力も 今後はそれほど活躍しない。

少年漫画のバトルものっぽい雰囲気を楽しみたかったのでしょうか…。


3巻は前半が「裏マッサージ大会」、そして後半はライバル校2校の交流が描かれています。

三姫は陽介よりもキャラクタとして動かしやすそうだ。
陽介よりも おバカなので、数々の勘違いや突飛な行動で、話と笑いのテンポを作ってくれる。

千愛と既にラブラブ(?)な陽介が まさか自分のライバルとは思わずにいるところも可愛いではないか。
いつか全面的に対決する日が来たりするのだろうか。

陽介には三姫の声が通用するのかが見どころですね。
まぁ、喧嘩でも恋愛面でも三姫の負けは確定しているようなもんですが…。
三姫の三は三枚目の三、なので、

やっぱり少女漫画のヒーローとしては陽介のような人物が適当なのだろう。


いていかれがちな恋愛面ですが、
マッサージバカの千愛が、陽介に最初に惹かれた凝りすぎている体を抜きにして、
陽介に恋をしている様子は描かれています。

ただ、その心境の変化を察知しているような陽介の方が、
千愛と適切な距離を取り続けようとしているのが気になるところ。

まだまだ小中学生の初心な恋愛のような2人です。


書は疑う余地もないほどのマッサージ漫画ではありますが、
マッサージが魔法のようには描かれていないんですよね。

マッサージを受けて人生が変わったとか、
凝りの解消が悩みの解消と同義といった極端な形ではマッサージは使われていない。

その証拠に、三姫と千愛の恋愛を面白おかしく書きたてる山茶花高校の女性新聞部員の話においても、
千愛がマッサージしただけでは、彼女の報道への信念は曲げられなかった。

直接的に問題を解決したのはデジカメのデータを消した陽介なのである。
勿論、千愛のマッサージがあったから彼女は引き下がった部分もあるだろうけど。

ファンタジー要素があるとすれば、
免許を持たない・持てない高校生による施術や、
マッサージ部の全国点在と、それなりの部員を確保し続けている点でしょうか。


千愛の双子の姉・明佳(さやか)が一コマも出ないだけで、
こんなにも心から作品を楽しめるとは思いませんでした。にどとくんな!