《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

主に少女漫画と小説の感想ブログです

試練につぐ試練 と 試験。沸騰直前の恋に(将来の)義理の両親が 差し水してくる!

f:id:best_lilium222:20200806094413j:plain
小村 あゆみ(こむら あゆみ)
ミックスベジタブル
第5巻評価:★★☆(5点)
  総合評価:★★★(6点)
 

「何を諦めたとしても花だけは諦めたくない――…」 パティシエになる夢を諦めて、実家を継ぐと決めた隼人。それは、亡き祖父との約束だった…。感動の展開の末、ついに花柚と隼人が付き合うことに! でも、思わぬ反対が…!!

簡潔完結感想文

  • 親の許可があっても隼人がパティシエを選ばない理由とは…? しゃっくり と共に溢れる思い。
  • 正式な交際が始まったと思ったら、大将から別れを勧められる。将来の義父母からの嫌がらせ?
  • 女将さんからバイト禁止令。期末試験に備えろというが一分一秒も惜しい花柚は両立を目指す。

げ物と恋愛漫画は 温度の調整が難しい 5巻(揚げ物は本編に出てきません)。

『4巻』が ほぼ全編、サブエピソードだったのに対し、いよいよ もう一人の主人公・隼人(はやと)編が始まる。
…かのように思えたが、隼人のお話は彼の過去の悔恨が語られ、将来のお話は また先延ばしとなりました。

その代わりに、隼人の固く閉ざした心を花柚(はなゆ)が解凍することによって、
2人が過去の自分を戒めるためにも冷凍保存してきた相手への気持ちも 遂に伝えることが出来た。

少女漫画としては幸せの絶頂ともいう時期だが、
同じ回の中で早くも幸せに水を差す人が登場するから作品内の温度差にビックリしてしまう。
もうちょっと幸福なムードでいさせて欲しかったなぁ…。


『5巻』はちょっと違和感を覚えるほど(無駄に)熱い展開が続いています。

正確には展開はそれほどでもないのですが、表情が暑苦しいですね。
登場人物の誰もが眉が吊り上がっていて、読者としては人心地つけない感じです。

『5巻』の色んな箇所にある作者のコメントを見ても、どうも創作に苦労した感じが滲み出ている。
長期的な展望があるというよりは、短期的に困難を乗り切ろうと努力しているようだ。ネタ切れか?

だからなのか、どうにも将来のことを決めるパートと、
その他の日常パートとの差を作者が上手くつけられていない感じがします。
無理矢理 料理に例え続けますが、ちょっと火加減の調整が疎(おろそ)かになっているのではないか。
一度上げた火力を戻せなくなっているので、作品全体に暑苦しさが蔓延してしまっているのかな。

そのため作品から柔和さが消えてしまい、少年漫画における料理漫画のような展開を見せている。
簡単に言えば、試練につぐ試練で主人公がずっと闘っている状態。

そのせいか、将来のことを含めた主人公の生き方に性急さばかりが目立つ。
何だかずっと時間と闘っているが、焦る理由はどこにもないはずだ。

現在、主人公たちは高校1年生の7月。
まだ1学期も終わってないのだ。
そして少なくとも あと3年間弱は高校生という身分なのだ。
身近な寿司職人の先輩・サキだって高校卒業まで勉学の方に重心を置いていた。

まだまだ学校や友人関係、恋愛からだって学ぶものの多い彼らに、周囲の大人たちも厳しすぎる。
偽りなく真摯に向き合っている証左でもあるだろうが、同時に彼らの身を縛り過ぎている。
どちらの親も、小さい頃から子を後継者として育てており、即戦力として頼りにし過ぎている。
恋愛が成就して浮かれる主人公を戒めるのも、もっと長い目で見てやればいいのにと思う。

それもこれも作者が主人公たちに試練を与えることを是としているからなのだろう。


来なら『5巻』のメインディッシュは恋愛成就だったはずだ。

一度は自分の目的のために相手を利用するように交際を始めた2人だが、
互いに利用していたことが明らかになると、恋心などなかったかのように、
一定の距離を保って接することを決めた。

しかし今巻でようやく、その禁が解かれた。
解いたのは2人の涙。
花柚の隼人を想う心が涙を溢れさせ、
隼人はずっと言えなかった過去を、その後悔を涙と共に流し出す。

f:id:best_lilium222:20200806161907p:plainf:id:best_lilium222:20200806161900p:plain
隼人を縛るもの、それは かけがえのない人との思い出。もう 会えない人の大切な記憶。

隼人を寿司職人にさせたがっているのは、両親ではなく、今は亡き祖父。
死の直前まで孫が握る寿司を食べることを所望していた祖父に対する思いが、
隼人をパティシエの道に進ませないと花柚は初めて知る。

そして隼人は改めて実家の寿司屋を継ぐことを決め、
ずっと花柚と同じ道を歩くことを告げる。

「オレのそばにいて 何を諦めたとしても 花だけは 諦めたくないー」

将来の夢と同じように、自分の失敗で自分を縛り付けてきた二人の鎖はようやく解き放たれる。

幸せな場面なんですよー。
ハチャメチャな関係から始まった恋愛でしたが、その紆余曲折を見守ってきた読者としては幸せの余韻に浸りたい。
少女漫画を読む喜びって、ここに凝縮されていると言ってもいい。

…なのに大将と作者ときたら無粋。
粋な江戸っ子寿司(かどうかは不明だけど)の職人とは思えないほど、無粋。

幸せで背骨がなくなりそうな花柚の姿勢を正そうという気遣いというのも分かる。
分かるけど、『4巻』丸々2人の恋愛話を描かなかったんだから『5巻』ぐらいは勘弁してほしい。

作者は煮詰まってしまったんでしょうかね。
話にドラマ性を生ませるために花柚に試練を課すことをノルマにしてしまったのでしょうか。
上にも書きましたが、どうにも息が詰まります。
幸せの空気を吸い込みたかった。この店、雰囲気悪いです。

そんな騒動にすっかり霞んだ感がありますが、キスしてるんですよね、2人。
そういう意味でもメモリアルな巻なのに、せわしない巻になってしまっています。


練はつづくよ、どこまでも。

隼人の父親でもある大将から忠告を受けたと思ったら、
こんどは母親である女将が店への出入りを禁じた。

理由は期末テスト対策。
中間テストで赤点を取った二人を案じて、本分である学業を疎かにしないよう忠告する女将

f:id:best_lilium222:20200806161725p:plainf:id:best_lilium222:20200806161720p:plain
職人志望とはいえ 高校生の身分。女将さんは本分に専念するよう店に出ることを禁止するが…。

本業でもなく肩書としては職人志望のバイトの身分でしかないが、
仕事を覚え始めた時の 一週間(の休み)は痛いと思い、休みたくない花柚。
どこまでも猪突猛進の、少し痛い子です…。
そして女将に対してバイトに出つつ勉強を両立させ、
1学期の期末テストで赤点を一つでもとったら店に来ないと宣言してしまう。

って、また隼人が切り拓いてくれた道を自ら閉ざすようなこと言って…。
同じ巻で、自分の夢を進路変更することが隼人に対して失礼だと認識したばかりだというのに。
バイトではなく弟子入りしてるも同然だと思うのなら店側の命令に従うべきだし。

勝負とか条件とか中二心を くすぐるような内容で作品を盛り上げてるようですが、
花柚には整合性というものがまるでない、なかなかに鼻白む展開です。

なんだか後出しの話が出るたびに、前半の整合性が崩れていく気がしますね。
『2巻』における隼人のキャラ変も、
花柚のためとか、裏では隼人は親友にこう語ってたとか理由付けをしても、
「作為」という言葉の説得力の前には何の意味もありませんもの。

そして花柚に課せられた試練は続き、今度は実家のケーキ屋さんに危機が訪れる。
これによって実家を手伝うため花柚は、女将と約束したお寿司屋さんのバイトはお休みする。
んー、何のための両立宣言だったのでしょうか。
15-6歳の少女ともいえる年齢の子に課すには重すぎる試練です。

読み返すと家業に対しての子供への負担の大きい漫画ですね。
自営業・飲食業のお家はそうなんでしょうか。

あと一週間ちゃんと勉強すれば次のテストまでは修業ができるんだから、
と軽く思ってしまうのは私がダメ人間だからでしょうか。


繰り返しになりますが、息苦しい『5巻』。
ウソみたいだろ。両想いなんだぜ、それで。
情緒がもっと欲しかったですね。