《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

主に少女漫画と小説の感想ブログです

堤監督っ! 監督の鬼の千本フォトもパワハラもセクハラも全部私たちのためだったんですねッ!!

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福山 リョウコ(ふくやま りょうこ)
悩殺ジャンキー(ノーサツジャンキー)
第05巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★(6点)
 

堤がナカに告白した! それを知ったウミは、遠く離れた東京で落ち着かず、千洋に弱音を吐いてしまう。一方、ナカは沖縄の撮影で、空回りしつつも何とかウミに追いつこうとしていた。しかしTVの「ジャンク」特集で、新しいモデル・実羽が笑顔でウミと並んでいるのを観て…!?

簡潔完結感想文

  • ナカには告白、海には宣戦布告、鬼監督・堤の沖縄長期束縛はまだまだ続く。
  • 偶然 沖縄の仕事が入り、同じ空気を吸うウミとナカ。だが声は掛けずに立ち去る。
  • 1か月終了。空港での再会の場面はトレンディドラマのような仕立てだなぁ。

出発前から一悶着あった沖縄1ヵ月の長期カウントダウンがゼロになる 5巻。

相手のことを好きだと自覚し、1秒だって長く相手の隣にいたい時期に、
1か月の遠距離片想いを経験するウミとナカの中盤 ~ 後半戦を描いた巻です。


開幕は『4巻』のラストから続く、ホテルの一室での堤(つつみ)とナカの会話から。
海に関する噂を封じるためにナカにした唐突なキスも「好きだから したんだ」という堤。

初読時は、ウミのライバル役として素直に受け取った言葉ですが、
再読時にはどう読めばいいのか分からなくなりました。

堤は本当にナカを好きなのか、
それともナカの頭から海を排除するためにインパクトのある言葉を投げかけたのか。
堤は美羽(みはね)のことを忘れたことがないと思っていたので、
混乱するナカ同様、堤の心情がトレースできなくて困っています。


これはどういうことなんでしょう。
考えられるのは2つ。

1つは作者側の路線変更。
最初は堤は言葉の通り当て馬で、海の中の男を呼び覚ます役割だった。
堤のナカへの好意も本物で、今回の写真集をはじめとした一連の行動もナカのことを想ってのもの。

ただ途中で作者の中で千洋(ちひろ)という高校生トリオの1人の存在が大きくなり、
千洋の不憫さを倍増させるために堤を美羽のもとに戻らせた。
沖縄では堤もフリーの時期だったので、ナカへの気持ちも嘘ではない。


そしてもう1つの可能性は堤の鬼監督路線。
初登場から堤はわざとヒールに徹してるのではないかという疑惑です。

厳しい言動をとることで、2人の意識を高め、
個々に修行に耐えることでお互いレベルアップする。
そんな遠大な計画が堤にはあった。
そのための自身の演技であり役作り。

全てはモデル界の質向上のため、一段高い視点での行動だったのだ。
その為ならば自分はどれだけ人に嫌われてもかまわないという覚悟は堤にはある。

…って、心を鬼にして後進に厳しく当たるなんて本当に少年漫画みたいですね。
私のイメージとしてはあだち充さん『タッチ』で中盤から出てきた新監督です(分かる人に伝われば…)。

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堤との対決姿勢を鮮明にする海。自分から欲するものがある時は きっと無敵だ。
気になるのはナカが体調管理できていない、メンタルの弱さからの失敗が続くという嫌な展開。
上手に笑えないという設定はいいが、眠ってないとか体調不良の場面が多いのはプロとしてどうかと思う。
オーディションには連戦連敗だが心身ともにタフ、どこでも眠れる大器という感じの方が良かったなぁ。

というか、全体的にどちらかが熱を出したり体調不良だったりということが多すぎるように思う。


一方で一見、平常心を保っている堤も闘っていたのだろう。
これは巻末に収録されている堤が中学生当時の短編を読むと彼なりの葛藤が垣間見られる。
自分の失敗があるからこそ、ウミナカに厳しいながらも助言が出来るのだ。

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堤の言葉は巻末の自分の過去の短編と呼応する。そして この時の空はきっと赤い。
沖縄1か月滞在の中盤で少々強引な流れで、ナカと海は再会する。

まぁ海の精神的にも、読者の興味的にも、
ここら辺で一度会っとかないと、落ち着かないのも確かです。

そして体面はしたものの、ナカが体調不良で眠り姫になっており、直接の会話はしていない。
ここは好きな場面です。エネルギーだけチャージするって感じで。
お互い相手の存在だけ感じて奮起する姿がたくましく、微笑ましい。


が、そこでバレてしまうウミの秘密。
もう秘密が秘密じゃなくなり始めていますね。
今度、バレたのは美羽。
『悩殺・八犬伝』5人目の秘密保持者です。

同性のモデル仲間(つまり海の異性)にバレるのはリスクが高いですよね。
触れ合ったり、抱き合ったり、スキンシップが多くて、拒絶反応が出かねない。
まぁ、そんな心配がないような美羽の天然な性格なんだろうけど。


そして千洋(ちひろ)の映像を見て、朦朧とした自分の無責任な行動とナカの言動の意味を知った海。
そんな過ちを徹底的に非難する自分と、ナカの心に自分がいるかもしれない嬉しさを押し殺せない海。

ここは千洋の隠し撮りのような映像が、海に客観的な視点をもたらすというのが面白いですね。
写真家ではなく映像作家志望が一人いる意味が出たように思います。

そして千洋の家で海が気づいたもう一つのこと。
それは千洋の美羽への想い。

割とすぐに堤の(もしくは作者の)路線変更によって、
千洋は良きコンサルタント役、恋愛片想い担当になってしまうが…。


海とナカの再会シーンも印象的だ。
1か月前にそれぞれの決意と共にエレベーターを出て別々に歩き出した2人が、 
エレベーターの中で再会する場面の創作はベタだけど上手い。

あの日以来、見つめ合って抱き合う二人。
そこには成長した二人の姿が、募ってきた想いがある。


しかし既にここまでで最終回を迎えてもいいと思うポイントがあるのも事実。
どうせすぐに別のカウントダウンが始まるんでしょ、と冷ややかに思う自分がいる。
作者は読者の気持ちを駆り立てるのがとても上手いが、
短い期限を設けた展開の繰り返しは、もう飽きました。

そして作者が気に入ってるという生徒会のシーンとか、海の兄弟たちとの梶原家のシーンとか、
テンション高めにボケとツッコミが飛び交う様子が「ザ・白泉社漫画」って感じがして苦手です。
脇役まで愛する懐の深さは私にはありません…。


悩殺ジャンキー 番外編ー赤の春ー」…
中学生の堤が出会った駆け出しのモデル美羽との出会い…。

堤がトラウマを克服するまでを描いた短編。
自分の中の弱さを見つめて、本当の心と向き合って、成長する。
それが中学生の特権なのかもしれません。
堤はもちろん、ナカたちにも呼応する作品。

今後、ここからの堤のサクセスストーリと、
美羽との別れの場面が出てきたりするのでしょうか。
天才カメラマンになるまでが異様に短いよね。

幼なじみ設定の板倉くんが再度 登場。
これが本当の最後の出番でしょうか。