《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

主に少女漫画と小説の感想ブログです

恋と 線路はつづくよどこまでも。あと高速道路も。この夏だけでバイクで2往復。

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桃森 ミヨシ(とうもり みよし)
ハツカレ
第10巻評価:★★★★(8点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

ハシモトくんが、バイクでかけつけてくれた。突然のことに、びっくりするチロ。うれしいけど、妙に緊張してしまう。おまけに、なぜかイブシまで一緒で!? 迷ってばかりのラブ白書、ついに完結!
【収録作品】ハツカレC・C/ストレートチョコレート

簡潔完結感想文

  • 突然ハシモトが目の前に現れた⁉ ついでにイブシも。久しぶりに4人の時間が流れる。
  • 夏休みはチロから会いに行くはずが高熱でダウン。下着姿で自宅にいたら彼がいて…。
  • 携帯電話は 写真は 想いは一瞬にして人を繋ぐ。今日も聞こえるあの人の声、おはよう。


あの日 動き出した恋の始発列車は今日も元気に運行中。うんこ やないで、の最終10巻。

今夜は月が綺麗だ、と自分の中に湧き上がった思いを伝えようと電話をかけた翌朝、遠距離にいるはずのハシモトがチロの待つ いつものホームに現れた⁉
その後ろからはなんとイブシまで現れて驚きと同時に安堵する自分の気持ちを知ったチロだった…。

これはもしかしたらハシモトが逆・夏目漱石ばりに「月がまんまるやから…」と電話したチロの言葉を「I LOVE YOU」または「I MISS YOU」と意訳したのかもかもしれませんね。

このハシモトの突然の行動によって時間(約6時間!)さえかければ、独力でチロに会いに行けることが判明。
もしかして、この展開を見越してのバイク免許とバイク取得だったりするのかな。
でも長時間運転で眠気や疲れで朦朧として事故を起こしてチロを悲しませるとかやめて下さいね。

ハシモトとイブシは平日に学校さぼって来た様子。
イブシとハシモトも約二か月ぶりの再会の翌日らしい。案外、キョリ感がありますね、この二人。


そしてイブシは髪型を整えてからますますイケメン化しています。


イブシは眠っている(ふりの)ハシモトに断ってチロの手を取って歩き出す。
チロと幼稚園以来再開した駅のホームで恋の決着を付ける。
ハシモトのように素直な気持ちを ちひろに伝えていれば未来は変わったのか、という if の確認。

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イブシはチロを連れて駅に向かう
これはちょっと意外な展開、というか いまいち腑に落ちない展開です。
修学旅行では叶わなくても遠くから好きでい続けると言っていたのに、なんで言いに来たんでしょうか。

2ヵ月経って、関われなくなって好意そのものにも距離を置くことが出来たのから?
ちゃこちゃんに言った通り、人を好きになるのが、はじめてやから「やめられんて思いこんでるだけ」だったと思い至ったから?
それとも、ちゃこちゃんの番外編のためにイブシには決着がついているという伏線?

会う機会を失ってみると、私ですら4人で写真撮影をしたのが遠い思い出みたいに感じます。
ただ昔を振り返るだけでなく、それぞれに「つぎ」を約束して別れる。


だが、その「つぎ」と決めた日程の2日前からチロが高熱を出してしまい、着替えようと自宅で下着姿のままうろついていたら、何とリビングにハシモトの姿が⁉
ハシモト、二度目のバイク旅です。一度目はこのための前振りかもしれませんね、
チロの母親がチロの携帯電話を拝借してハシモトに事情を説明したら飛んできたらしい。

そしてチロの両親と初対面。
チロ父は見た目は若いし、「ちろちゃん」呼びで娘を何気に溺愛している。
ハシモトとの会話が本来の意図以上に彼を圧迫してしまう様子からみると何気に不器用で、そして実は趣味も性格もハシモトに似ているのかもしれません。
チロは、お父さんに似た人を好きになったのかも。

少女漫画で親と対面するのは結婚の伏線や了承ですかね。
成人以降のご挨拶の本番が描けないので代わりに先に対面させておき匂わせる。


そういえば身なりが汚いと(笑)、入浴を進められて浴室で服を脱ぐハシモトに着替えを渡すチロは意外にも平然としてますね。
海やプールに行った描写がないのでハシモトが服を脱いでいるのは初めてだと思うのですが。
これは、その前にチロが半裸を見られているから おあいこということなのか、それとも次(肉体関係)の展開の伏線なのか。

浴室は使ったもののハシモトは遠慮して浴槽を使わない、そしてそれに気づくチロ、本当にこういう細かい描写に各々の性格を出しているのが良いですね。たまりません
っていうか、浴槽に入らない気遣いという発想が私にはないかもしれない…。

バイクの免許取得から1年待ったのに、今後も二人乗りをしない、というのは彼女を危険から回避する意味もあるだろうけど、もしかしたら前後に並んでスピードを出して移動することよりも、チロとは並んでゆっくりと歩いていきたいというハシモトの大きな願いなのかもしれませんね。
いつまでも仲睦まじいチロの両親の姿がそう思わせた。親が離婚しているハシモトにとっては新鮮で感銘を受ける光景だったのでしょうね。


ハシモトが帰るまでの間、近所を散策するチロとハシモトは早くも熟年夫婦みたい。
そして、散策の途中でたどり着いたハシモトの住んでいた家。
なぜか水道が通ったままで、転んでしまったチロの傷の手当てに水道水をわが家のように使いだすハシモト。
誰が料金を払うんですかね…?
作者のミスを色々指摘してくれるという「同居人S」、このミスは…?

ただ、これは伏線とも読める。
水が出れば身を清められるのだ。夏だし、たとえガスは使えなくても それほど問題ではない。
直接的な描写は全くありませんが、私はこの場面、二人が結ばれたと思っています。

チロ側にはこの1か月余り身体を見られる前提の覚悟があったし、ハシモトも前日、チロ宅でお風呂を借りてキレイな体だし。
夕焼けで時間経過も示しているような気がするし。
赤面してるし、正直者のハシモトが父の「どこいって何してたんやっ」という問いに答えられなかったし。

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二人で手を繋いでの帰り道、と その後。
ただ、後日、ハシモトの元マンションに近づいた際に、特別な回想がなかったのが気になる。
もし、致していたら、「あたしたち この前ここで…」と、もっと赤面するような気がします。


ハシモトに続いて今度はイブシが襲来。
イブシのカメラがデジカメになってますね。
デジカメじゃ人の心までは撮れへん、とか言いそうなのに。

恋というテーマの課題をクリアする為にチロの表情を撮りたという。
そして、この町のどこかにハシモトもいるらしいという情報をイブシから得て、思い出散歩をするチロ。

もちろん、居る場所はいつものところ。
原点に返って、二人の間で変わったところを描くのはベタですが効果的な手法。
確かに1話の時はそうだったなぁ、と懐かしく思います。

イブシの写真は洒落てますね。
これぞ企業ポスターに使えそうなアイデア
将来は写真家よりも広告代理店とかどうですかね。


本書は作者の独自の視点を感じられて好ましい。
少女漫画が好きな作家さんはそのテンプレートに飲み込まれるというか、引き出しが似通っちゃうところを、独自の切り口を用いて、さらに1話ごとにテーマを設定することで、小気味のいい物語になっている。
少女漫画のゴールでもある両想いや交際から始まった本書を描き切ったこと、テンプレに頼らない負の感情のない作品に作家性を感じました。
本書で王道を見事に描き切ってしまったので次回作がどうなのか今から楽しみ。


「ストレートチョコレート」…
ちゃこちゃんの短編。
最初からお金持ち設定ではありましたが、成金の成り上がりとは。
しかも親は元ヤクザの下っ端でパチンコチェーンを展開中。
みかじめ料とか取られてませんかね、と心配になるけど。
本書の立役者の一人だから ちゃこちゃんが報われるのはもちろん嬉しいけど、ちょっと駆け足の結論で本編との整合性に疑問を感じる。
本書としてはイブシには独り身を通してほしかったところ。進路変更が少し早すぎる。