《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

先生、先生が本当に大人になったら結婚してあげてもいいわ。せいぜい成長してね。

近キョリ恋愛(5) (別冊フレンドコミックス)
みきもと 凜(みきもと りん)
近キョリ恋愛(きんきょりれんあい)
第5巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★(6点)
 

ゆにだけを想い転校してきた、人気モデルの小南あずさ。(←2人は幼なじみで結婚の約束をした過去アリ!)でも、ゆにの櫻井への恋心を知った小南は、あの手この手で自分に振り向かせようとするのです。そして、そのとき櫻井は──。いつだって波瀾万丈、禁断(?)恋愛コメディー第5巻!!

簡潔完結感想文

  • 転校生・コナン君はモデルでゆにの幼なじみ。結婚も約束してた⁉ 婚約者が二人!
  • ゆにの秘密の恋、櫻井先生の秘密の血筋を知ったコナン君。脇役は基本イジワルです。
  • 前巻は ゆにからお別れ宣言で、今度は先生から。攻守交替の同レベルの報復合戦。


未来の、夫婦喧嘩は犬も食わぬ状態。『前巻』と鏡写しの構造のリピート再生の5巻。


今巻は海外から、小南あずさ、17歳、男性がゆにのクラスに転入してくることで一騒動起きる。
人気急上昇中のモデルであり、そしてゆにの初めてできた友達・幼なじみという設定。
更にゆにとコナン君は「結婚の約束を少々」しており、櫻井先生一筋のゆにはともかく、コナン君はゆにを追ってこの学校に転入してきたから大変だ。
櫻井先生と一緒にいるゆにの表情で恋心を察知したコナン君は、櫻井先生にライバル宣言をし、櫻井先生も売り言葉に買い言葉で…。

ゆにの幼なじみで人気モデルのコナン君との再会。
『前巻』がゆにのライバル、櫻井先生の元カノ・美麗先生の登場でしたが、今回はその逆。
構造的には合わせ鏡となっております。
今回はゆにを奪われそうになる櫻井先生の反応が楽しめる回になるはずだったのです、…が、まさかその後の展開まで『前巻』と同じだとは思いませんでした。


見られたくない場面ほど目撃してしまうという少女漫画のお約束は守られつつ、ドキドキハラハラと緊張感をはらむ展開が連続する。
しかし最終的にまた「お別れ」を宣言される。
本書における「お別れ」は相手に最適な人物は自分ではなく他の人だという、決して相手を嫌いになったわけではない身を引くお別れではあるのですが、こう何度も水戸黄門の印籠を出されると、読者だってひれ伏さなくなります。
「お別れ」を出す度に物語が一層チープになりますよ。


『前巻』の騒動を乗り越えたゆに自身は「(先生との)絆は確実に深まっています」と自己申告しているが、読者にはそれがあまり伝わらない。
櫻井先生や作者お得意の手法である、ゆにの気持ちを下げてから上げているだけで、決して絆が描かれてはいるわけではない。
絆があるのだったら、今回の騒動も別の対処法があるだろう。


物語全体を客観的にみると、ゆにが可哀想になりますね。
周囲のエゴに巻き込まれ、そして本来、その中でも先生という灯台が道しるべにならなければならないのに、先生自身が灯りを落とし、ゆにの目の前から消えてしまうからまた問題が増える。
唯一の例外は『前巻』の美麗先生の時で、自分の嫉妬の炎でその身を焦がしていましたが。


何と言っても櫻井先生は自分のキャパを超えるとすぐ投げ出す。

ガキだから。

先生は見た目こそ麗しく描かれていますが、中身は本当にヤンキーですよね。
論理に詰まるとキレて、生徒を壁に押し付けたり、ゆにに説得が通じないと怒りを含ませて立ち去ったり、そして一方的に別れを宣言したり。
人を大事にするということがまるで分っていない人なのです。

本当に見た目以上なものは何もない男ですよね。
女子高生の心理状態を一顧だにせず、自分の言いたい事を言って立ち去るその所業。まさに下衆の極み。
読者として先生に恋しないと、ちょっとキツイ物語です。

繰り返しになりますが別れるって簡単にいう度に、この恋の信用度が落ちます。
どんなリスクも、たとえゆにの将来を限定しても、2人の未来を築くのが誠実な姿勢だと思う。
それを、雲行き怪しくなったら別れると言い出す。
ゆに側と先生側の違いはあるもののその選択、2巻分で2回目ですよ。
ゆにが手中にある時だけ夢みたいな甘い言葉を囁くなら、その言葉に責任持ちなさい。教師だろ?

そして次の巻での問題が解決する場面も簡単に想像できるのが、また悲しい。
誤解が解けた時にゆには先生の腕の中でデレてるに違いない。
自分が他者のわがままに巻き込まれただけとも考えもせず、絆とか言い出しちゃうんです。


関係性は不安定な状態の二人だが、二人が別れたからと言って、誰か別の人が恋人になる想像もできない。
結局、別れても好きな人という結末が見えている。
それが読書中の安心感でもあり、そして読了後の虚しさでもある。

恒例の卒業宣言。直後の「うそやでー ハルカちゃん恋人やめへんでー」までが一連の儀式。
本書の私の評価は永遠に6点かもしれない。
初読はかなり楽しく読める。色々な設定、そしてギャグが盛り込まれてるし、展開も目を離させないように出来ている。
ただ全巻再読して感想を書こうとすると、持ち味である物語の勢いは再読の際には効果を発揮せず、ゆにを周囲がそのエゴによって傷つけている構成ばかりが目立ってくるのだ。
何よりも先生の幼稚さが悪目立ちする。
先生、最後には少しは成長してたっけ…?


お騒がせ転入生のモデルのコナン君、クラスメイトの咲くんに激似です。
特に髪型を変えて以降、はっきり言って見分けが付きません。
作者や制作サイドも、2人の類似を気にしてかコナン君の登場と共に咲くんの出番は着実に減っていったように思えます。
体形とか髪型とか、芸能人との差が描けないことには、コナン君が引き立ちません。
更にコナン君の髪色を黒にしてしまえば、櫻井先生と見分けがつかなくなること必至。
アクションシーンといい、作者のキャパを超えた描写が多いなぁ…。