《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

大相撲 青春風早場所。大一番は風早山による理性と衝動の独り相撲です。

君に届け リマスター版 17 (マーガレットコミックスDIGITAL)
椎名 軽穂(しいな かるほ)
君に届け(きみにとどけ)
第17巻評価:★★★★(8点)
   総合評価:★★★★(8点)
 

プレゼント交換の時に部屋を飛び出した千鶴と、その後を追う龍。一方、ケントは茂木と偶然出会いあやねのことを聞く。そしてすれ違いが続く爽子と風早は2人きりの帰り道で!? 6人の想いが大きく動くクリスマスパーティー開始!!

簡潔完結感想文

  • クラスのクリスマスパーティー。パーティーを抜け出してからが本番。
  • 自分の好きな人に渡すプレゼント。込めた心まで君に届くだろうか…。
  • 第二部完。最終回候補ですね。我慢した割には衝動的なキスでした☆


いい最終回だったパート2。恋愛編としては本当にピークかなと思う17巻。

1巻分でたった数時間の出来事です。
いつでも今日が、いちばん楽しい日©『よつばと!』ってか。

この3巻分ぐらいずっとこの日のために仕込みをし続けており、やっと今巻で3人分の幸せレシピを同時に完成させた感じがする。
まぁ、ここのところ不幸も幸せも3人横並びってのが気になりますが…。
私としては爽子だけでいいし、他二人まで無理に同時に幸せにしなくていい。
特に矢野ちん。
彼氏を作ることが目的になっており、今回の恋も矢野の欲しかった答えとは思えない。


と、辛辣な言葉から始まりましたが、爽子・風早パートは大満足です。
この2人が何かを乗り越える時は、一度不幸にならなきゃいけないのが気になりますが。
両想いの前のすれ違い然り、幸せオーラを下げないと上げられないんですかね。
あっ、また不平不満が…。


本当に爽子と風早の立場が入れ替わってますよね。
一人で何かと戦っている風早に爽子は再び手を伸ばす。
そして覚悟を決めて5秒、目を閉じるのだが…。
初出は『5巻』の「(風早を)つかんで5秒 目をつぶれ」というピンのアドバイスが、こんな風に使われるとは思いませんでした。
健人も『15巻』で同じようなこと言ってましたね。

再び理性で感情を押し殺す風早に対し、爽子は感情の奔流に身を任せ、風早に言いたい事を全部吐き出す。
この関係性の対比が素晴らしいですね。

そして嫌われてもいいから自分から行動し、自分の言葉で伝えようとするのが、あの爽子だという事実にまた泣ける。
爽子もまた別れを覚悟しての最後の手段なのだ。
爽子の涙には感情が揺さぶられました。

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傷つけまいとして 誰よりも爽子を傷つけた風早
結局、言葉より先に行動する風早くん。
これまで土俵際で踏ん張ってきた理性を強引に寄り切って衝動的にキスをする、まだまだ青い風早くん。
結果的にハッピーエンドだが、もしかしたら風早にとっては自分の手痛い失敗と言動の不一致を思い出させる初めてのキスだったかもしれませんね。


今巻で最終回にしてもいいぐらいだけれど、この時の風早の心境はぜひ聞きたいのでもう少しは続けて欲しい。
あと1、2話で終わっても私に文句はありません。
ただ、並走させた話もあるのでまだまだ巻数は必要みたいですね。

もし矢野や吉田に話を広げてなければ最終回に出来たかな。
もう年が明けたら受験生として始動する時期。
ピンとの会話にもそんな話が出てきたが、爽子は進学するみたい。

今後は恋愛要素が入る隙がどんどん無くなるだろうから、ここで幕を閉じても、恋愛少女漫画としては良かったかもしれない。
もしくは結婚の前後編・子育て編と女性一代記として描き続けていって欲しい。
作者自身の体験も踏まえたコメディエッセイにしちゃってさ。


龍と千鶴は問題なさそうですね。
意外に押せ押せの龍と、龍の一挙手一投足に赤面する側の千鶴の関係が意外ですね。
徹頭徹尾、千鶴を女性扱いしているのが勝因でしょうか。

あとは千鶴の慣れですかね。
龍を一人の男性として扱う、心が整うまで待つといった感じでしょうか。
にしても龍は千鶴へのプレゼントはどうやって選んだんですかね。
ポーカーフェイス? 仏顔? それとも赤面して? 考えるだけでも楽しいですね。
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君は薔薇より美しい。君は変わらず美しい。
そして矢野ちんの方は、いつもニヤケ顔の健人が感情を露わにする事態が勃発して、2人の関係に変化が訪れる。
その発端はもう二度と顔を見ることはないだろうと思っていた茂木くん再登場。
口が災いして矢野が離れて言ったにもかかわらず、またもやその軽い口で自分と矢野の価値を下げるバカ男。
本書の「不」人気キャラ投票をしたら風早好きの過激派女子と並んでワースト候補だろうなぁ。
イケメン顔に描かれているだけに落胆が大きい人だ。


しかし、あやねと健人のカップルって関係性がとても同級生には見えませんね。
この2人には女教師と男子生徒の方がしっくりくるかも。

猛烈アプローチをしてくる学校の人気者・健人は、生徒たちを決して贔屓しないで平等に扱う、いつも冷静な矢野先生に段々と惹かれていく。
けれど「あたしは生徒とは恋をしない」「すきって気持ちが分からないんだ」と健人をすげなくかわす矢野先生。
だがある日、矢野先生の悪口を言った生徒と揉め事を起こした健人に「馬鹿だね!」と涙ぐみながら矢野先生は抱きついてしまう。
そうして少しずつ健人に心を開いていく矢野先生だった…。

私の中で矢野先生のスーツ姿が鮮明にイメージできるのは、もしかしたら河原和音さんの『青空エール』の顧問の先生と、顔分別の棚の同じ引き出しに入れてるからかもしれません…。


薄々感じてはいましたが、ちょっとピンが神様過ぎて、作為的すぎて悪目立ちしてきましたね。
現実には生徒一人一人に目をかけて、いい教師には違いないんでしょうけど、ここまで万能だと嫌だ。
普段のだらしない描写をマイナス要因にしてるのだろうけど、何もかも見透かしちゃう感じが段々不自然で歪んできている。
ピン神様のさじ加減で恋模様に変化が起きたりしないことを祈るばかりだ。