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少女漫画と小説の感想ブログです

第一問 ライオンにおしっこをかけられる少女漫画は? 第二問 ゴリラにう〇こを投げられた少女漫画は?

俺物語!! 7 (マーガレットコミックスDIGITAL)
作画/アルコ 原作/河原 和音(かわはら かずね)
俺物語!!(おれものがたり)
第7巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★★☆(9点)
 

砂川に毎年届いていた、差出人不明のチョコ…。その届け主・天海悠紀華から10年来の砂川へのディープな恋心を聞かされた猛男は、悠紀華の応援をすることに! 猛男に手伝ってもらい、勇気を出して声をかけにいった悠紀華だけど…。砂川はその気持ちに、どう応えるの!?

簡潔完結感想文

  • 1巻丸ごと片想い巻。砂川物語だが「俺」っぽさ薄れる。
  • 動物園デート。どんな時も人を助ける、それが知識である。
  • 猛男はまた学習しましたね。ギリギリ人類が人類へ進化中。


人を好きになる素晴らしさを描いている本書だけれど、こういう形もあるよね、の7巻。

7巻は砂川巻。
それは間違いないのですが、砂川がメインに動くのではない。
砂川に10年以上に亘って好意を抱いている同級生・天海悠紀華(あまみゆきか)ちゃんがメインに据えられている。

彼女は10年間ずっと砂川を遠くから見つめていた。
ただ1年に1回バレンタインの日に匿名で手紙とチョコを渡し続けていた。
そんな彼女はまるで砂川という太陽をまわる彗星のようである。

今回はそんな彼女が自らの意思で砂川の重力に徐々に引っ張られていく巻です。
そしてネタバレすると大気圏突入で燃えつきちゃいます。
でも今回は燃えつきる事が大事で、燃えつきるまでの過程を描いたのが本書。
何事もそうですが燃えつきるって自分の限界を超えないとできません。

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悠紀華ちゃんの砂川は本当の砂川なのだろうか。
砂川を想う悠紀華ちゃんはなかなか重い人である。
幼稚園以来10年間ずっと同じ学校生活を送りながらも砂川と一言も喋っていない。
ただただ後ろを付け回すし砂川の隣人になったら一緒にお風呂に入りたいし、その写真も撮りたい、現実に写真は盗撮しまくっている。

けれど一途だし読書家だし猛男に対しての悪口もない。
砂川の態度も決して悪くはない。
こうなってくると砂川の恋人として相応しいのでないかとも思えてくる。
ただ砂川には「一生誰ともつきあわないでほしい」という悠紀華の言葉は読者の言葉でもある。
読者としては悠紀華に警戒心を持ちながら彼女を品定めをしていく。ルックスだけではない砂川の良さを知る彼女への連帯感はあるが、同時に敵対心もある。
彼女は砂川と世界がつながる人なのだから。

なかなかに片想いをこじらせているが、そこに現れるのは人類が生んだ珍しい超人・猛男。
いつも物陰に隠れて砂川をストークしているが、人知を超えた猛男の能力はそれを察知する。
悠紀華を探知する時、チョウチンアンコウみたいなレーダーが頭から生えてますが、何か。

男子と話すのが苦手な悠紀華も猛男には自分の恋心を話せる。
砂川だけじゃなく猛男も相談相手としていいですね。
率直に物を言ってくれるし、ポジティブだし。猛男には恋人・大和という存在もいるし。

全編通してそうなんですけど、猛男には悪口や偏見というものが存在しない。
悠紀華を見て地味とか、砂川に釣り合わないとか、時に発言が失礼とか、私が思ったようなことは絶対に思わない。

だから悠紀華が猿に似ていると言ってもそれはポジティブな誉め言葉なのである。
また大和も人に寄り添えるいい人間である。
特に女性との人間関係の構築が上手ですよね。
大抵の人と仲良くなっている。


恋の顛末としてはかなり残酷だ。
悠紀華は砂川の彼女にはなれなかった。
だがそれ以上に悠紀華を打ちのめしたのは、砂川の本心に気づいた時だろう。
手痛くフラれたのなら、相手を憎むことも出来る。
だけど砂川はどこまでもスマートで、彼女を傷つけたりしなかった。
だけど自分は今後も砂川には決して好かれはしない、と分かった彼女を襲った絶望たるや想像を絶する。
砂川と繋がったように見えた世界で、砂川の心には触れられなかったのだ。ここまでくると砂川びいきの私でも砂川の人でなし感、無感情人間を恨んでしまいそうだ。

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砂川研究家の悠紀華が出した砂川と自分の結論
ただどこまでいっても砂川は砂川で、しっかり告白の返答も告げる。
悠紀華の10年分の想いをきっちりと受け止め、そして10年間告げられなかったバレンタインチョコのお礼も込めて、そして悠紀華を好きにはなれない自分を謝罪する。

この一連の流れがあったからこそ悠紀華は燃えつきることが出来たのだと思う。
どんな形であれ、それでも恋は恋。
悠紀華も言っている通り、猛男に相談してから大和に会い、砂川と行動を共にすることが出来たからこそ、気持ちは昇華していったのだ。
多分、一連の流れがなかったら悠紀華はますます砂川を追い続けていただろう。
彼女にはそんな粘着力の高さがあるように思われる…。