《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

猛男の一番長い日 待望の兄弟 ≒ 待望の大本命チョコ 兄ちゃんは待ってっからな!

俺物語!! 6 (マーガレットコミックスDIGITAL)
作画/アルコ 原作/河原 和音(かわはら かずね)
俺物語!!(おれものがたり)
第6巻評価:★★★★☆(9点)
  総合評価:★★★★☆(9点)
 

付き合い始めて半年余り。ようやく初キスも済ませ、ラブラブなお付き合いが進行中の猛男と大和のふたり。妊娠中で、しかも臨月を迎えていながら元気いっぱい家事をこなす母を見て、猛男は心配でハラハラな毎日。そんな猛男を頼りなく見ていた母が何と出産のときに思いがけず猛男の成長を実感する出来事が!? 猛男の男気、全開!! そして今回は、何と砂川にも恋の予感が!?

簡潔完結感想文

  • まさに誕生回。安産間違いなしと思っていた母に思わぬ出来事が…。
  • 猛男に兄弟が誕生。君の兄は気が優しくて力持ち、人に誇れる人だよ。
  • バレンタイン回。女の子から貰えば、それはチョコ以上の何かである。

やっぱりこの漫画は凄いなと打ちのめされた6巻。

砂川の「お陰」で無事に大和との初キスを終えたというニヤニヤする冒頭からは想像もできない、感動的な人の誕生のお話である。

読書中、目に涙を浮かべた回数は本当に数えきれない。
今回は猛男の母の言動で何度も目頭が熱くなった。
幾つになっても息子を思う母、新しい命を思う母、そして他人を気遣える優しい母。
ギリギリまで自分は我慢してしまう母の性分も泣ける。
多分、猛男母ほど心身が健康でなくても、母という人は自分よりも優先すべきものがあって、自分を二の次にしてしまうのだ。

赤ちゃんの誕生を待っている周りの人たちの優しさでも泣ける。
安産のお守りを渡す心根の優しい大和を再発見したり、猛男や猛男父、砂川の男たちの気遣いもいい。
特に砂川の顔に出る表情以上に砂川が赤ちゃんの誕生を楽しみにしている様子が読者には伝わるし、生まれてから目を細める様子にキュンとする。
赤ちゃんはこうやって周囲から祝福されて産まれてくるんだ、って幸福感でまた涙が流れてくる。


困っている人を見ると脊髄反射で人助けをしてしまう猛男母子。
ただ今回はそれが発端で風邪一つ引かなかった猛男母に一大事が訪れる。

この非常事態に対して母を支えようとする家族や砂川の描写が本当にいいですね。
ここにあるのは紛れもなく愛である。
初めて弱った母の姿を見て焦った猛男が、砂川を振り返って見せる無力感が漂う顔が秀逸。
あんなに強い大きい猛男がこんなに弱弱しくみえるなんて。
けれど砂川に猛男がいるように、猛男には砂川がいる。
それは『2巻』での砂川父の入院の時と逆の構図でこのような、切羽詰まった場面ほどその事を再認識させられる。
猛男父が帰宅するまで猛男と一緒にいてあげる砂川、本当にスマートだ。

その日を今か今かと待ちわびる砂川 その1(右) その2(左)
そしてダンディーが極まっている猛男父も今回は真面目な話をしている。
両親の結婚話なんてこんな機会でしか聞けないだろう。
父が母を見染めた話は有無を言わさず恋に落ちるのはこういう場面を見た時なんだろうな、砂川もこういう思いにとらわれたら恋が分かるのにと思った。

場面は少ないけど重要な両親だけの場面も、夫婦というもの子供というものをしみじみと感じさせる。
とにかく2ページに1回は胸を打たれる場面や言葉があるのだ。
命を巡る物語だけに息をつめ、手に汗を握りながら読者もまた応援する側にいるのだ。


そうやって緊張感が最高潮に高まってからの1ページの中で笑いをかっさらう手法に脱帽。
笑いは緊張と緩和っていいますもんね。
見事に体現してます。
吹き出した笑いと共に張っていた気も抜けちゃいます。

そしてこの子の誕生によって猛男は母にとって、一人っ子の弱虫な息子じゃなくて、名実ともに立派なお兄ちゃんになったんだなぁ。
生まれたばかりの赤ちゃんを抱ける大和と、恐れる男たち。
ここら辺は母になるものとなれないものの性差でしょうか。
そして皆さん読了後、親に母親に感謝の思いが湧き上がるでしょう。いい話だ。


続くはバレンタイン回。
猛男の学校の男子どもは本当にモテませんね。
しかも猛男を頼ってるし。でも大和の女子側も猛男の男子側もバレンタインデーの非日常感や高揚感が伝わってくる。

猛男にとって初めての絶対にチョコを貰えるバレンタインデー。浮かれる自分を制御できない。

猛男にしても人生初の大本命チョコを楽しみにして隠し切れない。
失望も大きかったみたいだけど。西城さんも再登場。本当にいい子ですね。
ホワイトデーでのお返しは猛男と砂川の男子キッチン。お返しを作りながら、大和を想い、感謝し、尊敬する猛男。
作った甲斐がありましたね。

砂川の「好き」がよく分からないから女性と付き合いたいという想いが湧かないという言葉は飾らず等身大で、恋人がいること=幸せ・青春という価値観には準じない砂川らしい意見だと思う。
が、これを砂川以外の人が呟いた時、負け犬の遠吠えと捉えられる可能性も高い。
見た目で誤解される猛男に対し、砂川は見た目で許されることが多すぎる。
内面も良い男なんだけどね。