《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

丸井だろうと女だろうと、自分たちの間に割って入る者には容赦なく威嚇する天然男・滝くん。

360°マテリアル 5 (マーガレットコミックスDIGITAL)
南 塔子(みなみ とうこ)
360°マテリアル(さんびゃくろくじゅうどまてりある)
第5巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★☆(7点)

抑えられない恋と認めたくない気持ち。はじけるのはどっち? 美桜たちと同じ高校に入学してきた茜。部活紹介での丸井の姿に目を奪われ…。一方、波多野さんにモヤモヤの美桜ですが、ついに滝くんが!! 波乱続出の第5巻です。

簡潔完結感想文

  • 主人公天気予報。代わり映えのしない曇りのち晴れが半年ほど。
  • 周辺天気予報。恋の嵐が発生中。やはり少女漫画はこっちが映える。
  • (ある意味)丸井の初恋、茜の初恋。物語の構造と人気を支えてる。


『4巻』から続く、クラスメイト波多野さんと滝くんの怪しげな雰囲気に美桜は心を痛め中。

波多野さんはついに滝くんにも直接、心を揺さぶる言葉を投げかける。
それに対するは壁ドンならぬ、滝くんの「机ドン」。

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余裕がないので心理攻撃に過敏です。
…うん、怖いね。
波多野さん威嚇だけじゃなく、美桜とのすれ違いや丸井への恨みつらみをこめたドン!
こりゃあ胸がキュンではなく、顔がサーッと青ざめる感じだ。
鬱屈をためてためて爆発させるタイプですね。
これは最終巻まで続く彼の気質。


1巻丸ごと遠まわりしていよいよ滝くんに直接不安を訴える美桜。
先ほど波多野さんの含意を浴びた滝くんなので即座に理解し、そしてハグをする。
すると美桜は不安が溶けていくのを感じる。

…って、それの展開は前も読んだわ。
10の悪いことも、1の良いことで水に流してると、男で苦労するよ、美桜さん。

しかし波多野さんの完全に恋心なしのテストのための精神攻撃ってのも斬新な設定だ。
彼女には最終盤、滝くんに発破かけて欲しかったな。
いいキャラなのに残念。
でも『7巻』で余計な一言いってます。


全8巻の物語の後半の5巻ですが、この辺りになると読者の興味は完全に丸井と茜、それぞれの恋の行方に移っているだろう。
なんせ主人公カップルは再放送状態ですから…。

滝くんのハグに続き、丸井も、美桜の逆壁ドンからのハグを敢行。
これは一進一退のトライアングラーな三角関係。
丸井、大丈夫だ、美桜と滝くんのアドバンテージなど砂上の楼閣(ヒドい)。
安心感のある滝くんのハグよりも、丸井の方が胸キュン度高め。
そして丸井には言葉という武器もある。
甘く優しく誠実で、射抜かれる言葉の数々。

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なぜか丸井と多発するラブハプニング
しかし5巻の終盤ではそんな丸井が茜に酷薄な言葉を投げかける。
やっと向き合った自分の恋心をズタズタに引き裂かれる茜。
うん、茜主人公の少女漫画としては完璧な展開じゃないか。
無色透明な主人公たちのお陰で、周囲が際立つ不思議な効果が出ている。
多分、作者の予期せぬところで(笑)


丸井との展開上の理由だろうが、学校に遅刻する美桜、ないわー。
「ねグセついちゃって… 直してたら こんな時間に」って、アンタ…。
巻末には身だしなみや美容に気をつけている描写の番外編が載ってるけど、美桜は能天気だなぁ(端的に言えば頭が空っぽ)。

数学が大の苦手なのは逃れられないの設定だけど、友人二人や丸井が部活やバイトの中で学校生活を送っているのに、理由もないただの遅刻はないわー。
っていうか、次の電車までマックに寄る選択肢が出るのも不思議だ。
それだけ電車の間隔がある路線にも思えないし、それなら ねグセ なんかよりも電車の優先度が高いはずだ。


そして滝くんは中間考査、学年総合5位。
あれっ、数学専門バカ設定はいづこに…。
運動部の丸井と互角の勝負を繰り広げる滝くんの身体能力、そして頭脳。
ハイスペック男子も少女漫画の典型だけれど、滝くんは違うんだよなー。
対女性読心術が赤点なのと、もう一つぐらい抜けたところが欲しかった。


『5巻』の中で登場する美桜の友人「しーちゃん」に意味あり気な視線を送るクラスメイト。
これを見て私は「出ました、長期連載の行き詰まりからの物語を横に広げるための、数か月続くあんまり興味持てない友人の恋物語パターン」と早合点。
しかし結果的に主題として扱われることはなく、曖昧に収束していきます。
一安心、そして一疑問。
ここに手を出す意味あった?
もう少しエピソードの取捨選択をすると、読み返した時にも美しい構成になるのになぁ。