- 作者: アガサクリスティー,Agatha Christie,清水俊二
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2003/10/01
- メディア: 文庫
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さまざまな職業、年齢、経歴の十人がU・N・オーエンと名乗る富豪からインディアン島に招待された。しかし、肝心の招待主は姿を見せず、客たちが立派な食卓についたとき、どこからともなく客たちの過去の犯罪を告発してゆく声が響いてきた。そして童謡のとおりに、一人また一人と…ミステリの女王の最高傑作。
ミステリの大傑作と名高い作品を今更ながら読みました。まず驚いたのが息もつかせない展開である。登場人物が一堂に会されたと思ったら、死者が次々に出る。名探偵の登場もないし、推理を披露する描写も少ない。どちらかというとミステリよりもサスペンスの風味の方が強い感じがした。好みにもよるだろうけれど、このスピード感と緊張感は薀蓄や推理を並び立てる推理小説より面白く、そして怖く感じられた。どうしても途中でだらけてしまう推理小説より最低限の描写で、最高の驚きを手に入れられるのなら読者にはありがたい事だ。
けれど真相に関しては、一応色々なミステリを読んできたので驚きはしなかった。ちゃんとした推論は考えなかったが、こういう展開だろうという結末だった。意外な真相に慣れすぎた私が驚きを阻害した感がある。ミステリ読みの弊害でした。
実は今回、読む順番のせいで十分楽しめなかった箇所がありました。この作品のパロディ(?)・オマージュ的な後世の日本の作品を先に読んでしまっていたので、そちらに比べればこの本はミステリとしてのインパクトは薄い。本書→「某作品」の順番で読むのが正しい(?)らしい…。基本の名作は早めに読まないといけませんね。最後の最後なんてまんま同じである。「某作品」のラストにかなり哀愁を感じたのに、それもパクり(リスペクト)によるものだと知って、かなりガッカリ。過去の偉大な作品はどのようにアレンジして使われるか分からないので、早めに読んでおいた方がいいかもしれない。これが今回の読書の教訓かな…?
邦題がいいですね。物語の途中で本当に「誰もいなくなっ」てしまうんですから。原題よりも訳題の方がいい珍しい例ですね。ミステリアスで好きな題名です。