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春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

小鳩君と小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校一年生。きょうも二人は手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。それなのに、二人の前には頻繁に謎が現れる。名探偵面などして目立ちたくないのに、なぜか謎を解く必要に駆られてしまう小鳩君は、果たしてあの小市民の星をつかみとることができるのか? 新鋭が放つライトな探偵物語、文庫書き下ろし。


タイトルからし東京創元社にマッチしない。なんて乙女チックなタイトルなんだ。すごく美味しそうだけど…。世間ではこの本はライトノベルと扱いされているので期待していなくって、最初の2,3篇は「まぁこんなモノかな…」なんて思ってましたが、「おいしいココアの作り方」の謎のシンプルさ、そしてラストへの伏線に驚かされた。東京創元社はやっぱりミステリ界の王様だった訳です。小鳩くんと小佐内さんの二人の小市民のダブルキャスト。最初は、その「小市民」という設定が飲み込めず探偵なら胸を張って推理を披露なさい!とか思ってたんですが、何となく二人の関係と目指すべきものが分かってくると同じ小市民気質の持ち主として共感を覚えてくるのだ。この二人、意志とは別に結局、事件に介入してしまう。しかし卓越した推理力と攻撃力を持つ頭脳をもってすれば、いつか皆の目を欺いて小市民の皮が剥がれない探偵になれるかもしれない。ところで、この本1冊で2月ぐらいしか経っていない。1学期すら終わっていない。夏休み・2学期編が出版されたら嬉しいな、と小市民の私は心の中で東京創元社のある方向に祈るのでした。

  • 「プロローグ」…夢から始まる物語。小鳩くんの過去を暗示していると思われる。
  • 「羊の着ぐるみ」…体育の授業中に教室から消失したポシェットを探す事になった小鳩くん。自ら科した戒めと闘いながらの推理…。小市民を目指す二人の互角の頭脳による推理がいい。探偵の引き立てで周りがお間抜けというのは嫌いです。
  • 「For your eyes only」…元・美術部の卒業生が残した2枚の絵。彼は取りに来ると言っていたが一向に現れない。そして盗まれる小佐内さんの自転車とタルト…。これはちょっと…相談者の人も結構気にしているのなら、気づくだろうに…。
  • 「おいしいココアの作り方」…ある決まった作り方のココアを作るのに必要だと思われる道具を使わないで作るにはどうしたらいいか?タイトルそのまんま!これは日常ミステリの到達点だ、と思った作品。謎解きもキレイで感心してしまった。
  • 「はらふくるるわざ」…テスト中に教室の後ろの棚から落ちたガラス瓶の謎と小佐内さんの盗まれた自転車に乗る男…。20ページ余りの軽い謎。先の美術部の謎と共に数合わせとも考えられる。しかし生物のテストってこんなに難しかった?
  • 「孤狼の心」…小佐内さんの自転車が先には何も無い道路の途中で発見される。犯人はなぜ、そこで乗り捨てたのか?その推理がたどり着く先は…。収束していく物語。推理の順序や考えられる他の可能性の排除など本格ミステリ真っ青な出来栄え。二人の過去が微妙に明かされる。小鳩くんの高校生らしさがいいな。
  • 「エピローグ」…後日談。若気の至りに悩む高校生二人(笑) いちごタルトを巡る事件の全体像がキレイに見えて爽快。人生は甘くないって事かな?

春期限定いちごタルト事件しゅんきげんていいちごタルトじけん   読了日:2005年04月29日