- 作者: 横山秀夫
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/09/15
- メディア: 文庫
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「妻を殺しました」。現職警察官・梶聡一郎が、アルツハイマーを患う妻を殺害し自首してきた。動機も経過も素直に明かす梶だが、殺害から自首までの二日間の行動だけは頑として語ろうとしない。梶が完全に“落ち”ないのはなぜなのか、その胸に秘めている想いとは―。日本中が震えた、ベストセラー作家の代表作。
「感涙」との前評判はマイナスに働くこともあるんですね。私は「あぁ、泣くんだ」というスタンスから入ってしまったので、泣かずに読み終わったとき「裏切られた」と思ってしまいました。結末まで達し、重要な問題である空白の2日間の行動が明かされたときも、そもそも黙っていることか?とまで思ってしまった。なんとなく予想していたのと違う。その予想の土台はやっぱり「泣ける」ということである。期待値が高すぎた。
横山秀夫作品は初めてでしたが、どの作品もこの感じなんだろうな、と思います。男くさい、不器用な優しさ、組織と個人の自分の葛藤などなど。それが暑苦しくない温度で語られているので、読むのは楽しかった。
本作は6つの章に分かれていて、それぞれの立場(警察官・弁護士・新聞記者など)に視点を移しながら進んでいきます。それぞれ客観的な視点から妻を殺した警察官の内面に迫っていこうとします。その手法はすごい。決して長くない文章の間に、6人の男の立場を描き、同時にその男から見た「梶」という男を描ききっています。泣けなくても、いい作品には間違いがありません。