《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

スージィこと内野智佳は、某国立大学工学部化学工学科の秘書。彼女の勤める大学周辺で暴行傷害事件が多発する。智佳の周辺でも不気味な出来事が続き、友人のルナも被害に遭ってしまうが…。大学の工学部を舞台に、それぞれに秘密を抱えた6人の視点で連続殺人事件を追う、ちょっとフーガでホラーな新感覚ミステリィ。解説はコジマケン(描き下ろしマンガ)。


見事に騙された。ミステリ的に考えてみればオーソドックスの域とも言えるのに、上手いこと作者に踊らされた。ただ視点がコロコロ変わるのでちょっと思考の切り替えが難しかったですね。まぁ視点が変わらないとこの驚きは得られないですけど。一章が短いのは飽きっぽい私には嬉しい限りだったんです。一長一短かもしれません。一人一人の登場キャラクタの思考がよく分かるのは最大の利点。コジマケンさんのイラストは可愛く、最初、ちょっぴり甘いこの作品にピッタリだと思いました。しかしイラストに騙されていましたが、この作品よくよく考えれば怖い作品。色んな人の情念が隠れている。一度見つけてしまうと目を背けられないほど登場人物は情念のままに動いていて怖い。中盤の容疑者たちの思考は誰が犯人でもおかしくないほど利己的な考え方。ネットワークに繋がっていない完璧に内包された世界。
ポエティカルな部分は私にはちょっと分からない部分も。6人の視点で全てが語られてもよかったような。ラストにあるアンコールは今までに無いもので新鮮。疑われた人・犯人・殺されかけた人などの「その後」が分かるなんて嬉しい限り。飄々とした人たちのあっさりコメント。好きです。この大学には萌絵と犀川はいるのだろうか、と思わずにいられませんでした。

奥様はネットワーカおくさまはネットワーカ   読了日:2003年03月04日