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スカイ・クロラ (中公文庫)

スカイ・クロラ (中公文庫)

僕は戦闘機のパイロット。飛行機に乗るのが日常、人を殺すのが仕事。二人の人間を殺した手でボウリングもすれば、ハンバーガも食べる。戦争がショーとして成立する世界に生み出された大人にならない子供―戦争を仕事に永遠を生きる子供たちの寓話。


近未来、戦時下、特殊な"僕"が見つめる「生」。単行本の装丁は素晴らしく、表紙の文もゾクゾクした。しかし意味が分からない。セリフで読ませる箇所はあるのだけれども、設定・結末がよく分からない。森さんの作品で設定をうまく利用している傑作『女王の百年密室』があるけれど今回はミステリではないのでその設定がおざなりになったまま終わってしまう。一応、説明はされているのですが、一部であってどういう世界がこの小説を内包しているのかが分からない。なんとなく読んで、なんとなく終わる、そんな印象でした。しかし最近、この作品の続編が出版に。少しずつ世界の謎が分かるのならそれもアリかな、とも思っています。
この作品が発表された頃は森博嗣熱が冷めてきた一冊。短編を除いて森さんに絶対的信頼を寄せていたのですが、裏切られた感じです。しかも分からない人には読んでも分からない、といった雰囲気も感じ取れる(被害妄想?)。なんというか読者に説明する気がないように思われる。読者に媚びてもダメだが、期待を裏切ってはいけない。しっかりしたプロットで、読者を興奮の渦に連れていくそういった小説を期待します。

スカイ・クロラ   読了日:2001年11月29日