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少女漫画と小説の感想ブログです

今はもうない (講談社文庫)

今はもうない (講談社文庫)

避暑地にある別荘で、美人姉妹が隣り合わせた部屋で1人ずつ死体となって発見された。2つの部屋は、映写室と鑑賞室で、いずれも密室状態。遺体が発見されたときスクリーンには、まだ映画が……。おりしも嵐が襲い、電話さえ通じなくなる。S&Mシリーズナンバーワンに挙げる声も多い清冽な森ミステリィ


犀川先生はどうした〜!! 犀川先生は〜!!」
これが読書中の全読者の共通した心の声だと思います! 確実に。
ネタバレ無しには感想の書けない作品。どう書いても、この作品のトリックの衝撃度はきっと伝わらないでしょう。是非、ここまで読んでください。起こる事件なんて単なる付属品に過ぎません。はっきり言って無駄・無意味です。今回は事件の真相とは別の動機でページを捲るのが止められない本。話全体的には地味なんですがとっても好きな話かも。あらすじのシリーズ№1の声も納得。全く意味のないプロローグから邪魔なエピローグまで、全てが愛しいお話です。作中で起こる事件自体は、ホント地味。新本格のつまらない、盛り上がりのない文章という印象。今回の原動力は別ですから、いいんです。未読の方は読めば分かりますから。どうして森さんは力まずサラッと書けるんだろ〜、不思議です。
今回は作品順序という点においても最高の作品。例えば、『すべF』においての、儀同世津子の犀川との関係における役割は、登場があと2,3作遅れていればもっと重要度を増すものであっただろう。トリックにおける重要度は同値だけれども。読者である私たちが、仮想空間である小説世界をより隅々まで認知できているという条件の上で初めて、その相互作用が生じるのであろう。以上、森博嗣風感想でした。森さんの本を読むとどうも、出来もしない思考を試そうとしちゃいますね。犀川までにはまだ遠く…。文庫版解説はツチケンこと、「土屋賢二」さん。相変わらず回りくどい文章。けど好き。国公立大学の先生方がこんなんでいいのかと心配になります。お二人とも印税の副収入の方が、多そうですけど。最近、ツチケン&森博嗣さんの「共著」が出たとか。

今はもうないいまはもうない   読了日:2000年11月05日