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すべてがFになる (講談社文庫)

すべてがFになる (講談社文庫)

 

孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑む。新しい形の本格ミステリィ登場。


私のお気に入り作家・森博嗣さんの第1作目。

衝撃。ミステリを読み始めて間もない時に出会ったので、こんなミステリがあるのか!とショックを受けたのを鮮明に覚えています。ミステリといえば密室・かんぬき・針と糸という古典的知識しかなかったのでこんな密室が存在するなんて思ってもいなかった。もちろん、古典的知識を得ていたとしても驚く前代未聞のトリックだろう。時代の先を行く新たなミステリです。サブタイトルもいいですよね。「THE PERFECT INSIDER」こんな美しいサブタイトルだけでノックアウトされてしまう。新世紀ミステリとは(出版されたのは20世紀ですが)こういうものだ!と思いました。これを最初に読んでしまったので、90年代初期の新本格ミステリはどうも堅苦しさを感じてしまうようになってしまった。

既に出来上がったキャラクタ、会話、構成どれをとっても文句なしです。西之園萌絵犀川創平、そして真賀田四季というキャラクタを読むというだけでも一読の価値あり。トリックに関して感心したことは、人間の防御機能として、最悪の、自分の精神にショックを与えるかもしれない事実を、本能的に回避するようにできているんだな、と思いました。そう思いたくない、考えたくないというものから避けるんですね。そこから脱却するのは、アトランダムな思考を持つ萌絵さんと、類まれな客観性を持つ犀川先生なんでしょう。是非、一読!


余談ですが、私、冒頭の「オブジェクト指向システム分析設計入門」の一文が大好きです。知的で難解、この作品の冒頭として相応しい文章だと思います。

すべてがFになる   読了日:2000年10月13日