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ショート・トリップ (集英社文庫)

ショート・トリップ (集英社文庫)

どこまで行ける? どこまでも行こう! 森絵都がおくる「旅」をめぐる超短編集。旅、一生をかける旅、お忍びの旅、時空も主人公もまったく異なる旅のショートショート40話。ファンタジックでユーモアいっぱい毎日中学生新聞に「Further sight 旅のかけら」として連載したものの中から40編を選び、加筆する。


「トリップ=(短い)旅」という単語で思い出すのは、引退したサッカーの中田選手の言葉『人生とは旅であり、旅とは人生である』だろうか。私はそこにもう一言付け加えたい「読書とは旅である」と。本書の中の1編「日曜日の朝は……」の「ぼく」ではないけれど、想像力を使えばベッドの上から一歩も動かなくても大きな川を下る冒険をする事だってできる。想像力という翼で飛び立てば、世界を冒険する人にも、時空を飛び越える人にも、夢の国の住人にだってなれるのだ。その想像力の燃料となるのは森絵都さんの想像力から生まれた文章である。ここには40の話の40の旅、40の人の40の人生がある。人生という旅は一度きりだけど、読書という旅ならば何度でも、そしてどこにでも行ける。それが読書の楽しさ。
ほんの短い、本の旅で終わるのが惜しい旅がたくさんあった。出会うのは王様や女王様、トラック野郎にバイク乗りなどなど。その土地の変わった文化・風習に驚いて、少し皮肉な結末に苦笑する。そして時々、再登場する人物に再会の喜びを感じたり、再び別れる事を残念に思ったり。一期一会の旅だから。
一番の問題作は「ファンタジア」。ブラックだなぁ…。禁断の地に足を踏み込んでしまった感覚です。これには「かの王国」からはクレームが来なかったのだろうか? 中学生よりも大人の方がゾクゾクする話だろう。「ミステリー・トレイン」はアリバイ崩しのお話。結構ミステリを読んでいる私ですが、見事に騙されました。頭固すぎですね…。「ミッシング・ブライド」は「ミステリー・トレイン」と同じ警部と警部補が解決する花嫁失踪の謎。関係者の性格を踏まえた見事な推理が冴え渡る…!? でも普通に考えたら、愛想を尽かして家に帰ったと思うよね…。

ショート・トリップ   読了日:2006年11月18日