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国境の南、太陽の西 (講談社文庫)

国境の南、太陽の西 (講談社文庫)

今の僕という存在に何らかの意味を見いだそうとするなら、僕は力の及ぶかぎりその作業を続けていかなくてはならないだろう―たぶん。「ジャズを流す上品なバー」を経営する、絵に描いたように幸せな僕の前にかつて好きだった女性が現われて…。日常に潜む不安をみずみずしく描く話題作。


日常のような非日常のような。共感できるようなできないような。身勝手な男だなと、あきれたり。こんな展開ないよ、男に都合よすぎるんじゃない?なんて思ったりしたのに、好きな作品。やっぱり腕のある作家さん。見直しました村上春樹
「今日の自分と明日の自分が99%同じだとしても、一週間後や一ヵ月後にはすごい違いになっている」(うろ覚え‥)というセリフがこの物語最大の印象です。哲学的なのに、なんて共感できるんだろう。そう、誰も言ってくれなかったけど、こういう不安はいつも、どこでも感じる。自分の身体に内包される不安。駅でも家でも誰かといても、現在の自分の存在が自分から乖離する。客観的に見る瞬間。自分への不確かさ。普通の人より、こういった恵まれた人間が、このような不安に悩むことによって逆にリアリティがあるんでしょうね。主人公の男の行動は共感というより、不可思議ですが。これが村上ワールドなんでしょうか。作家と作品は別なんでしょうが、村上さんの顔を見たらこんなロマンティックなことをいわれても…ってひいてしまった。失礼かしら…作家自身と作品は別物と考えないと。
今回ページ制作のために、ヤフーで検索したとき「国境の西〜」と間違えて入力したのに何十件かヒットして、同じ間違えをする人がいるんだな、と嬉しかった。

国境の南、太陽の西こっきょうのみなみ、たいようのにし   読了日:2003年02月22日