- 作者: 道尾秀介
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/07/29
- メディア: 文庫
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夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。
2007年最初の読了本。数十ページ読んで思ったのは、なんでこの本を年始に読む事にしちゃったんだろう、です。お正月気分を一気に暗いものにしてくれた暗鬱な展開の連続…。ただし、ミステリとしては破壊力抜群でかなり楽しめた。
死んだはずのS君が××に生まれ変わった事を前提としたミステリ。この世界ではそういう「ルール」みたい。なので、S君の口から自分の死が殺人である事、そして犯人の名さえも明かされる。最初は死んだS君の遺体を発見する事が目的。殺人事件なのだが最大の謎は犯人ではなく死体消失の謎。 ここまでは探し物は別として、友達・妹との夏休みの冒険といった感じ。だが、事件を追う毎に周囲の人物の隠された性質が明らかになり、遂にはS君の発言も怪しくなり…。真実を探ろうとすればするほど、袋小路に入ってしまう出口のない展開に引き込まれる。
中盤以降どんどんスライドする目的と誰もが怪しく思える雰囲気、そして真相の破壊力が凄まじいミステリ。最後の数十ページの逆転に次ぐ逆転は頭が変になりそうでした。 ただ、破壊力と説得力のある真実が次々に明かされる終盤は面白いのですが、考えてみると前半がフェアではないようにも思えてくる。再読すれば補完される部分が多いのだろうけど、再読する気になれない内容…。展開・真相(手法)が「乙一」さんっぽいかなと思いました。またもや暗黒ジュブナイル…。
にしても「物語を終わらせる」という台詞が出てきた時には、一瞬、あのオチなのかと思いました。ミチオ=××なのかと…。生みの苦しみ故の台詞かな…。
(ネタバレ反転→)ミチオの周囲、「世界」を先に異常で固める事によって、ミチオを正常に見せかける手法が上手い。まず「お母さん」を妹だけを溺愛する異常者にする事によってミチオを不憫な子供に仕立て上げる。そしてS君も作文やその発言(?)で「心の闇」を持つ子供だと演出、岩村先生に関しては偶然の要素が強すぎる感もあるが容疑者候補として中盤まで不気味な存在を現している。中〜終盤、次々に目下の問題がスライドするのは、ミチオの現実逃避の為の逃げ道が真相を避け続け蛇行した結果なのか…、と改めて考えると上手さが見えてくる。(←)