《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

にょにょっ記 (文春文庫)

にょにょっ記 (文春文庫)

退屈な日常をくしゅっとまるめたいあなたへ。なぜこのひとの毎日はちょっとだけヘンなんだろう…? くすくす笑って、時に爆笑。『短歌の友人』の著者の不思議でファニーな日常。


『にょっ記』に続くヘンな日記シリーズ。今後もシリーズが続けば題名は、にょにょにょにょにょ…!? 読書中、段々と頬が弛んできて、その内、箸が転がっても面白い状態になる。そうなった時点でもう負け。笑いを堪えられない。
今回は本当に日常系の日記。物事の始まりはいつも生活の中。テレビを見ていて、ネットで知って、街でモヤモヤに出会って、友人との会話の中で、書籍の中で穂村さんは多くの「?」に出会う。そして、その考察をバカバカしく深める。
採り上げられている物事を大まかに分類すると、「モヤモヤ」「日常のズレ」「言語感覚」「オシャレへの道」「古書シリーズ」、そして「妄想系」だろうか。前作から続く「古書シリーズ」は笑いと共に、昔の人の、または時代そのものの(見当外れの)エネルギーに圧倒された。悩みや質問を解決する本も(現在から見ると)、そのアプローチがおかしい。物理的解決より精神的解決ばかりを優先し、相談者を鼓舞するかのように文章のテンションも異様に高い。実はその本に込められた編集者の熱い魂が数十年の時代を経れた要因なのかもしれない…。
本に溢れた現代社会。数十年後の未来にはどの本が読まれるのだろうか。間違っても「東スポ」の嘘記事などが未来世界には残ってない事を祈る。しかし未来人にとってみれば現在のどの書籍・雑誌も見当外れの情報だと映る可能性は多いにある。「うわっ、紙の本だよ! 古っ!!」と書籍そ存在自体に驚くかもしれないし、「人工子宮がまだないんだー」と女性たちは目を丸くするかもしれない。地球外惑星で読んだ未来人は「地球はもう…」と目に涙を浮かべたりするのかも。
今回好きだったのは2日連続モノ。「その2」がある回。「流行」「電話」「像」「関西弁」「柔道」「留守番」「ユミコちゃん」などなど。並べると見事に意味不明なラインナップ(笑) でも、本書はこんな感じ。個人的には「流行」で、木村カエラちゃんの名前が出た事に驚いた。『あのひとかあのひとがカエラ』ぐらいの認識だが穂村さんの頭にはその名が、オシャレの代表者として刻まれているのだ。凄いなカエラちゃん。あとは街の光景に同化して通り過ぎているけど考えてみればモヤモヤする「店の張り紙シリーズ」も好き。妙なコピーには妙な説得力がある。
フジモトマサルさんの挿画が今回も素敵。『にょっ記』はこうじゃなくっちゃ!

にょにょっ記にょにょっき   読了日:2009年10月11日