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世界音痴〔文庫〕 (小学館文庫)

世界音痴〔文庫〕 (小学館文庫)

 

歌人穂村弘は三十九歳。バブルのただなかに青春を過ごし、気がつくと独身、総務課長代理だ。母親が部屋の前に置いた菓子パンをベッドでむさぼり食い、自己啓発本とビタミンを青汁とともに服用し、十五年間窓を開けていない部屋で漫画とエロ本に囲まれつつ、インターネットで昔の恋人の名前を検索する日々。「自分かわいさ」をひたすら突き詰めて生きてきた僕たちは、今、回転寿司屋のカウンターで、永遠に回る寿司の輪廻をひとり見つめている。人生って、これでぜんぶなのか、すばらしいことって、いったい何だったのか。「世界」に憧れつつも「世界」に入っていけない「青春ゾンビ」の日常と心情を赤裸々に綴る、爆笑そして落涙の告白的エッセイ。


今まで読んだどの本よりも衝撃を受けた(かもしれない)。というのも、こんなにも私の感覚を代弁してくれる作家さんがいるのかと驚いたから。クローンではないけど、多分、遺伝子が99.89%ぐらい一致していると思う。そう思うほど読んでいる最中、深く頷いていた。私も思う事、だけど私には書けない事、それをさらりと文章にしてくれている。こんなにも私にありがたい作家さんはいません。


大きな共通点は「自分自身が一番好きな所」と「世界音痴」であることだろう。勿論、ある部分では私は穂村さんほど「世界音痴」ではないし、ある部分では穂村さんに勝るほどの「世界音痴」である。そもそも「世界音痴」とは何か、と聞かれると私にも上手く説明できないのだが、他の人には「自然に」振舞えることを、自分でやると「不自然に」なってしまう「自然さ」を奪われた人、といった感じでしょうか。この感覚に「世界音痴」という命名をした穂村さんは素晴らしい。このタイトル大好きです。

 

好きなエッセイの一例としては、まず何といっても人生の経験値。これは悲しい共感で「新しいものや出来事を怖がる性格で」「私の日常には変化というものが極端に少ない」、そして同じ事を繰り返す。だから「思い出がない」という状態になる。まさに私のことだ。また性格の一致というでは電車でも店でも席を立つときは、何が一体そんなに大事なのかはよく分からないけれど絶対に振り返って確認するという「忘れ物エンジェル」がある。置き忘れで痛い目にあった過去なんて全く無いのにしてしまうこの行動に深く共感。他には、突然に世界の見方が変わる「切り替えスイッチ」も好き。世界は常時きらきらと光っているのに、私たちは心が曇天に覆われて、それが晴れる過程でしかその明るさを認識しないのである。


今後もし、私という人物を知りたいという変人が現れたなら黙ってこの本を差し出せばいい、そう思うような一冊でした。運命の一冊かもしれない。
最後に私も短歌を。

装えど 皆の外側 世界音痴 「自然」の中に 潜む「不自然」
best_lilium

 

世界音痴せかいおんち   読了日:2006年02月21日