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亡国のイージス 下(講談社文庫)

亡国のイージス 下(講談社文庫)

「現在、本艦の全ミサイルの照準は東京首都圏内に設定されている。その弾頭は通常に非ず」ついに始まった戦後日本最大の悪夢。戦争を忘れた国家がなす術もなく立ちつくす時、運命の男たちが立ち上がる。自らの誇りと信念を守るために。すべての日本人に覚醒を促す魂の航路、圧倒的クライマックスへ。

文庫版上巻で広げた風呂敷がどのような結末をもって畳まれていくのか、気になって仕方がなかった下巻。しかし風呂敷はなかなか畳まれません。双方死闘を繰り広げます。(「死闘」という言葉が軽い比喩などではないところがこの小説の重さ)。特に「いそかぜ」を巡るの作戦の緊迫感はスゴイです。刻々と作戦が進む描写で、本を読んでいるという感覚が薄れ、ふと気がつくと何十ページもページが進んでいたり。軍事力に対して問題を人情で解決する部分も多々あるんですが、情に突き動かされていくのが人なんだ、とも思い、それが小説としての面白さに繋がった。終章はどの人物のエピソードをとっても切なくなります。
主人公が行だと思い込んでので、途中から仙石さんに乗っ取られた釈然としなさはありましたね…。仙石さんが嫌いなわけではありませんが、行を深く知りたかった。また、福井さんは相変わらず、武器・ヘリの名称などの過剰な部分はミリタリーマニアで、目で会話する様はニュータイプのそれだし、タイミングの良い偶然が多すぎる、とも思いました。けれども、この事態を構想し、書き切った作品のパワーや、まとめ上げる構成力に魅了されました。感性や好みでの“お薦め”ではないんですが一読の価値は必ずある小説ということでのお薦めタグ付きです。

亡国のイージス   読了日:2004年06月25日